2025/07/29
【NEW】CZ Shadow 2 ターゲット ハイエンドセンターファイアターゲットピストル【動画あり】
High-end Centerfire Target Pistol
Text & Photos by Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Shadow 2でIPSCやUSPSAプロダクション部門のトップポジションを獲得したCZは、同じShadow 2をベースに精密射撃用ピストルを完成させた。標的のセンターを正確に撃ち抜く静的射撃の分野でもトップを獲るために。
Shadow 2 誕生から9年
CZ Shadow 2が誕生したのは2016年。来年で登場から10年を迎えることになるが、依然としてIPSC等のプロダクションガンとして、高い人気を誇っている。デビューと同時に世界中から注文が殺到し、しばらくの間、CZの生産ラインは“Shadow 2対応専用工場”と化した。銃器業界の間では“Out of stock(在庫切れ)”というニックネームが広がったほどだ。
この銃の人気の理由は単純だ。競技で勝てる──その一点に尽きる。
Shadow 2は、1975年に登場した名銃CZ75の設計哲学を継ぎながら、現代のスポーツシューティングの要求に応えるために、ゼロから練り直された製品だ。その操作性、命中精度、反動制御性、そしてトリガーの繊細さ。そのすべてにおいて“撃てばわかる”と思わせる完成度を持っており、Shadow 2はたちまち世界中の競技シューターを虜にした。
Shadow 2 ファミリーの拡張と多様化
その成功を受けて、CZはShadow 2プラットフォームをベースに複数の派生モデルを展開してきた。各モデルは、単なる外装違いではない。シューターの射撃スタイルに合った製品を供給しようとしているCZの姿勢を明確に表している。それぞれのモデルについて、簡単におさらいしてみよう。

SP-01 Shadowの発展型として、CZUB設立から80周年の2016年にIWAアウトドアクラシックで発表された。DA/SAオートでデコッキング機能なしというCZ75の伝統を継承しつつ、競技用ピストルの方向に大きく振った製品だ。CZ75の名を冠していない。この使用目的に特化する方針は大成功につながった。
DAとSAのトリガープルは、ノーマルのCZ75から大幅に改善されている。グリップ&フレームも形状を変更、これによってマズルライズが低減し、エイミングリカバリーも速い。Shadow 2にはオプティックレディ仕様もあり、こちらはShadow 2 ORと呼ばれている。

Shadow 2のDA機能をオミットし、SAオンリーとしたモデルだ。コック&ロックで使用する。SAのプルは15N(約1.5㎏)で、数値的には他のモデルと同じだが、実際に引いてみるとその感触は大きく違う。トリガーの形状はSAでの引きやすさを重視し、ストレートタイプとなっていることもそう感じる理由だろう。

ベースモデルShadow 2の登場から約3年後、工場出荷時にチューンナップが施された上級仕様としてShadow 2 Orange ORがリリースされた。
マッチグレードバレル、1911スタイルバレルブッシング、フレームとスライドのハンドフィッティング、軽量ハンマー、ファクトリーチューントリガーなどが特徴で、作動フィーリングはノーマルのShadow 2とは段違いだ。トリガーリリースはさらに軽く、引き始めからブレイクまで一切の“遊び”を感じさせない。
プロユース前提のコンペティションモデルとして確かな地位を構築、スライドのプレートを変更することで、Trijicon RMRやLeupold DeltaPoint Proなど主要なダットサイトを装着でき、キャリーオプティックスやプロダクションオプティックス部門に対応している。

Shadow 2のカラーバリエーションでFDEとグレーをブレンドした独特のフレームカラーが特徴だ。銃としての機能はShadow 2と同じ。

2023年8月21日に追加された新バリエーション。Shadow 2の基本構造を維持しながら、バレル長を4インチへ短縮し、フレームのアルミ化による軽量化で携帯性と操作性を両立させた。名称にORは無いが、オプティックレディ対応となっている。その形式はShadow 2 ORと同様のプレート方式だ
IPSCのプロダクションオプティックス部門などに対応すると同時に、通常のCCW(コンシールドキャリー)用も視野にいれた製品だ。

今年4月24日に発表され、7月号でご紹介したエブリディキャリー(EDC)モデル。Shadow 2 Compactをさらに進化させ、オートマチックファイアリングピンブロックセイフティとデコッカーを追加した。これにより、CCWとしての需要に完全に振り切っている。これもオプティックレディだが、コンパクトなフットプリントのShield RMScを直に装着し、コウィットネスも可能だ。Shadow 2=競技用という固定観念を打破する一挺となっている。
そして“静の王”――Shadow 2 Target
このようにShadow 2は、さまざまな用途へと広がりを見せている。そして2024年11月1日、シリーズ初となる“精密射撃(Target shooting)”に特化したバリエーションが加わった。それが今回紹介するShadow 2 Targetだ。
Shadow 2は本来、IPSCやUSPSAなどのAction Shooting Match(動的射撃競技)に適応するよう設計されたハンドガンだ。構えたまま動き、移動しながらターゲットを撃つスタイルにおいて、重量バランスやトリガーレスポンス、リコイルコントロール性が最大の武器だった。
だが、Shadow 2 Targetはその真逆を行く。
このモデルは、オフハンド(立った状態から両手で銃を構え、何にも依託しない状態)で、時間をかけて一発一発を正確に撃つ競技(いわゆるブルズアイや静的ターゲット競技)に特化した設計となっている。連射性や複数のターゲットを撃ち切るスピードではなく、0.1mm単位の正確性をどう実現するかに重きを置くものだ。

かつては6インチのロングスライドモデルが数多く存在したが、近年はほとんど見掛けることは無くなった。長めのスライドを装備するモデルはあっても、6インチより短い場合がほとんどだ。スピードシューティングにおいては、マイナスのファクターとなる6インチ ロングスライドだが、ブルズアイなら何も問題にはならない。
あまり知られていないと思うが、ヨーロッパではIPSCなどとは対極を成す静的射撃競技が行なわれている。.22LRを用いた競技もあるが、センターファイア弾を使う競技もある。SIG SAUERのハイエンドモデルであるP210はそういった用途に向いたモデルだし、往年のS&Wモデル52もこのカテゴリーの銃だ。もう作られていないがモデル52の発展型としてパフォーマンスセンターのモデル952というモデルもあった。

スタンダードのShadow 2とほぼ同じバレル長(スペックデータではTarget 5”が1mm長い)だが、より大型のアジャスタブルサイトを装備し、精密射撃用ピストルに相応しい完成度を持っている。