2026/01/01
Milipol Paris 2025 “電子戦の時代”における銃の居場所

技術革新で国土防衛、治安維持の形は大きく変化した。銃を含めた従来型兵器だけで戦う時代は過去のものとなっている。それでも銃は、テロと戦う最後の砦として存在価値はあるのだ。2025年のMILIPOLはそれを改めて感じさせてくれるイベントであった。
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ガンプロフェッショナルズにおける拙稿は、今回が最後になる。思えば2012年5月号(当時は諸般の事情で別のペンネームを使用した)以来なので、ほぼ14年弱という長きに亘って続いたわけだ。
締めくくりのテーマに選んだのは、パリで隔年開催される治安・内部防衛の総合見本市“Milipol Paris 2025”だ。
ここ数年取材を続けてきた欧州の防衛・治安系イベントの中でも、Milipol は小火器愛好者にとって少し特殊な立ち位置にある。
このショーは、“軍事”ではなく、“homeland security:ホームランドセキュリティ:国土安全保障(国内治安維持を含む)”のイベントなのだ。
主催はフランス内務省系の GIE Milipol。会場のパリ・ノール・ヴィルパントには、世界各国の警察・憲兵・国境警備隊、刑務・入管当局、対テロ部隊、さらには通信・サイバー・重要インフラ防護のベンダーまでが一堂に会する。
同じ会場で隔年開催される Eurosatory(ユーロサトリ) が、戦車・自走砲・IFV・ヘリコプターといった“陸空軍の総合防衛見本市”だとすれば、Milipol はあくまで国家内部の安全保障を扱うショーだ。
小火器の分野で言えば、Eurosatory が歩兵分隊から旅団レベルの“軍用アサルトライフル/マシンガン”を軸にしているのに対し、Milipol は警察系カービン、ドアブリーチ用ショットガン、レスリーサル(弱致死性)系ウエポン、刑務所用の防護装備など、軍用とは少し異なるツールが主役となっている。
AI と国内治安
2025 年の Milipol の公式テーマは“Homeland Security and Artificial Intelligence”(国内治安と人口知能)だ。
カンファレンスでは、顔認識と群衆解析、過去犯罪情報、OSINT(Open Source Intelligence:オープンソース インテリジェンス) とデータレイク(多様なデータの一元管理)を組み合わせた犯罪予測、AI を使ったサイバー防衛などが延々と語られていた。ブースを歩いていても、銃などの道具より前に“アルゴリズム”(特定の問題を解決するための手順やルール)が目に入るショーだった。すなわち、治安維持に銃などの武器を用いるのは最終手段であり、それ以前にやるべきことがあるということだ。
そう書くと、銃器愛好家的にはあまり食指が動かないかもしれないが、今年の Milipol にはひとつ、どうしても外せないキーワードがあった。
それが“ドローン”と“アンチドローン”、もう少し専門的に言えば C-UAS(Counter-Unmanned Aerial Systems)だ。C-UASとは、不審なドローン(UAV:無人航空機を含む)の脅威を検知、追跡、識別し、無力化、無効化、制御不能化するための技術・装置・手順を意味する。
ドローンが書き換えた歩兵レベルの戦術
ウクライナ以降の戦場映像をご覧になっておられる読者なら、FPV(First Person View:一人称視点)ドローンが前線の様相を一変させたことをよくご存じのはずだ。
数百万円~数千万円クラスの ATGM(Anti-Tank Guided Missile:対戦車誘導ミサイル) と違い、数万円レベルの市販FPVドローンが、手榴弾や迫撃砲弾を抱えて塹壕の真上にホバリングし、歩兵分隊を一つずつ潰していく。あるいは、低空で突っ込んでくる自爆 FPVドローン。これらはいずれも YouTube で日常的に流れてくる光景になってしまった。
こうした脅威に対して、陸軍レベルではレーダーや EO/IR(電気光学:Electro-Opticalと赤外線:Infrared)、RF (無線周波数)センサーを組み合わせた検知システムとジャマー(通信妨害装置)が、外側の防衛レイヤーを構成している。だが、実戦報告によれば、どうしてもそれを抜けてくる個体が存在することもまた事実だ。
その“最後の50m”でどうやってドローンの攻撃を止めるか、Milipol 2025 のフロアで見えてきた答えのひとつが、12ゲージショットガンの再評価だった。
このテーマについてはあとで写真と共に解説したい。
まずは今回のMilipolに展示された小火器を紹介させて頂こう。

フランスの警察系特殊部隊がセミオートスナイパーライフルとして運用する 7.62×51mm HK417。これはHK416 と同じ操作系を維持したまま、大口径化されたプラットフォームだ。基本的なメカニズムはHK416と全く同じとなっている。
写真の個体は HKeyハンドガード、HK 製伸縮ストック、20連ポリマーマガジンを備えた最新仕様で、シュミット&ベンダーの1-8×24mmスコープを装着した典型的な DMR(Designated Marksman Rifle) 構成だ。
都市型対テロ作戦で求められる即応性と貫通力を両立させる目的で配備され、Milipol の展示でも LE(Law Enforcement)向けの大口径セミオートの代表的モデルとして扱われていた。
フランス国家憲兵隊の対テロ部隊 GIGN をはじめとする、警察特殊部隊が近接戦闘用に運用する HK MP7。4.6×30mm 専用弾により高い貫通性能と低反動を両立した PDW で、アサルトライフルとハンドガンの中間領域を埋める存在として配備が進む。
写真の個体は最新ロットに準じた MP7A2 仕様で、短いトップレイル上にマイクロダットサイトACRO P-2を装着し、20連のショートマガジン、ショートサウンドサプレッサーを装着しての展示だ。ボディアーマーを着用した犯罪者に対する制圧力と携行性が評価され、GIGN の室内戦・航空機内など閉所環境での主力 PDW として定着している。
HK がDMRとして展開する7.62×51mm MR308 A6 / G210(16.75インチ)。HK417 系統の設計をベースにしながら、精密射撃用途に振ったセミオートプラットフォームで、強固なレシーバー、フリーフロート M-LOK ハンドガード、精密バレルを組み合わせた構成が特徴。ドイツ連邦軍がDMRとして採用している。
展示個体はサウンドサプレッサーに加え、Schmidt & Bender 5-20×50PMII ウルトラショートスコープとBT ATRASバイポッドを搭載し、DMRセミオート狙撃銃としての運用を意識したセットアップだ。信頼性の高いショートストロークガスピストンシステムを踏襲しつつ、軍用417との差別化として射撃精度を優先した、HK 製 7.62mm 精密セミオートライフルの最新形態と言える。
HK が次世代アサルトライフルとして開発した HK433 の 9インチ PDW バレル仕様。HK416 とは別の設計思想による 5.56×45mm プラットフォームで、作動メカニズムは G36の流れを踏襲しながらも、操作系はHK416に近い。
9 インチバレルのPDW 仕様は、市街地・車両・CQB での携行性を優先した最短モデルで、M-LOK ハンドガード、テレスコピックストック、アンビデクストラスコントロールを標準化し、展示個体は Aimpoint Duty RDSダットサイトを搭載している。HK416 より軽量かつコンパクトな“次世代 5.56mm PDW”として、欧州各国の特殊部隊向けに展開を図っているモデルだ。
日本の自衛隊が採用したフルサイズ SFP9 と同一シリーズながら、別のプラットフォームとなっている。2025年1月にHK USAが発表したCC9とは、スペック的に極めて近い。9×19mm 弾用ストライカーファイア方式のポリマーフレーム製マイクロコンパクトで、1.5 列スタック構造のマガジンによりグリップ周りを細く抑えつつ、 10/12 発装填を可能にしている。ファイアコントロールユニットによるシャシー構造もCC9と同じ。
SFP9とVP9の違いはほぼ名称の違いだけだったが、ドイツのHeckler & Koch GmbHが展開するSFP9 CCと、アメリカのHK USAが展開するCC9は別デザインとなった。Heckler &Koch GmbHとHK USAはマイクロコンパクトのあるべきデザインにおいて、双方の主張が折り合わなかったのだろう。アメリカのCC9はドイツではなく、アメリカで製造している。

ワルサーがコンシールドキャリー分野に向けて2007年に投入したシングルスタック 9mmオートが PPS(Police Pistol Slim)だ。グリップ厚を極限まで抑えた薄型設計が特徴で、携行性を重視する LE(法執行機関)向けバックアップガンとして評価が高い。後期型の PPS M2 系にみられるエルゴノミックなグリップテクスチャと改良トリガーを備え、マガジンは長さの異なる 6/7/8 発の 3 種類。スリムな形状ながら実用射程でのコントロール性が良好で、ワルサーの現行キャリーラインの基礎を築いた代表的コンパクトモデルだ。
但し、近年はスリムながらもマガジンキャパシティを増やしたモデルが次々と現れている。ワルサーもPPSにアップデートを図るべきタイミングだろう。

ワルサーが最新プラットフォームとして展開する PDP(Performance Duty Pistol)。ストライカー・ファイア方式の 9×19mm ポリマーフレームピストルで、光学サイト搭載を前提にした“オプティクスレディ”設計と、スライドに深く刻まれたSuperTerrain セレーションを特徴とする。またワルサーはシューターがグリップフレームを握った時の感触を最大限に重視し、PDPはこれをPerformance Duty Gripと称している。
PDPの場合、コンパクトとフルサイズの定義はグリップフレームの長さで決められており、写真はどちらもコンパクトに相当する製品だ。
ワルサーは長い間、ピストル市場で低迷していた。ドイツ連邦軍サービスピストルの座をHKに奪われ、警察用ピストルの分野でも目立った動きはなかった。しかし、PDPの登場で、その状態から抜けだしつつある。
PDPはドイツ軍特殊部隊(KSK, KSM)、及び軍警察特殊部隊にP14(フルサイズ)、P14K(コンパクトサイズ)として採用されており、これが今後、一般部隊にも拡大していくのではないかと思われていたが、2025年12月19日のCZUBの発表によると、ドイツ連邦軍の一般部隊がP13として採用したのは、CZ P-10 Cであった。このことは12月20日のGun Pro Webで速報としてお知らせした通りだ。
結果として、一般部隊P13(CZ P-10 C)、特殊部隊P14/P14K(Walther PDP)という図式になった。これはおそらく、PDPの納入価格が高過ぎて、ドイツ連邦軍全体での展開が難しかったからだと推測する。
ワルサーの親会社であるUMAREX(ウマレックス)はこれまでエアガン/エアソフトガン分野で広く知られてきたが、それらとは全く異なる、高圧エアを用いる実戦的な暴動鎮圧用プラットフォームとしてこのUMX 18mmレスリーサルランチャーシステムを公開した。
写真のモデルUMX 414は、訓練弾・刺激弾(ペッパー)・洗浄可能なマーキング弾などの発射に対応するモジュラーモデルで、最大有効射程は 55m。STANREC 4744 (飛翔物体の運動エネルギーに対するNATOの評価基準)に基づく“非致死エネルギー 30J 以下”での運用を前提にしている。
構造強度を高めた専用ボディとマガジン式給弾機構により、従来の単発型ランチャーより高い連射性を持つもので、エア圧駆動というウマレックスの得意領域を、そのまま LE 向けレスリーサルウエポンへ転用した最新のアプローチだ。


