2025/12/25
スプリングフィールドアーモリーエシュロン カスタム

2023年7月に発表されたエシュロンは、現在スプリングフィールドアーモリーが推している最先端ハンドガンだ。彼らはこの銃をUNPARALLEDED(アンパラレイルド:比類なき存在)だといっている。TTIがそんなエシュロンをカスタマイズしてみた。あくまでも試作品であり、このままの形で製品化されるかどうかは不明だが、いつでも市販できるだけの完成度を持っている。
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エシュロンが発売されるとすぐに手に入れ、テスト射撃を行なったタラン・バトラー(Taran Butler)は、そこにカスタムグロックに近いフィーリングと高いポテンシャルを見出し、将来TTIからカスタムパッケージとしてオファーすべきかを見極めるために、このモデルを実験的に組み上げた。従ってモデル名も明確に決まっていない(発表後もタランの気分により途中で名称が変わったりもするが)。
TTIの新製品のプロジェクトは複数進行中であり、現時点では今すぐに市販化する予定はない。しかし、ベースモデルのエシュロン自体が最新コンバットオートのトレンドをほぼ全て網羅し、完成度が高いことから、筆者はこれの製品化を大いに期待している。試作といってもグロックや2011で培ってきたコンバットマスターのデザインを受け継いでおり、もう製品版といっても差し支えないレベルに仕上がっている。
次世代型XDシリーズ
イリノイ州ジェネシオに本拠を置くスプリングフィールドアーモリー(Springfield Armory)は、ハンドガン市場において1911クローンを展開して成功を収め、それをダブルスタックマガジンの1911DS Prodigyシリーズにまで発展させている。
同社は1911系だけに留まらなかった。そこで法執行機関や軍用サイドアーム市場を視野に入れたポリマーフレームのXDシリーズを2003年に投入した。
このXDシリーズは、スプリングフィールドアーモリーの“ヘッドハンティング型”戦略によるもので、自社で設計・製造したものではない。クロアチアの銃器メーカーHS Produkt(エイチズ プラダクト)が90年代後半に開発を進め、HS2000として開発・販売していたモデルを、スプリングフィールドアーモリーブランドのもとで再出発させるライセンス契約を結ぶことで誕生した製品だ。
それから20年以上にわたり、両社の関係はきわめて良好に推移してきた。アメリカ市場におけるマーケティング展開において、スプリングフィールドアーモリーのブランド力はHS Produktにとって大きな追い風となり、同時にスプリングフィールドアーモリー側にとっても高品質なモデルを比較的抑えた価格で提供できたことから、価格競争の面でも優位性を発揮した。その結果、XDシリーズは安定した人気を獲得し、現在に至るまでその評価は安定している。
そして2008年にはエルゴノミクスを中心に改良を施したアップデートモデルとして、発展型のXDMシリーズを発表した。これはXDの設計面に残っていた旧世代的な要素を払拭したもので、当時のライバル製品と肩を並べる存在へと進化を遂げている。
2020年にはアンビスライドキャッチの採用など、さらなる改良を施したXDM Eliteシリーズへと置き換える形で競争力の維持が図られた。しかしその一方でスプリングフィールドアーモリーは、XD/XDMシリーズにはある種の限界があることも認識していたようだ。
次世代のコンバットオートとして見据えた場合、従来の設計をベースに小幅な改良に留めたままでは、市場での競争力を維持することは難しい。そこでスプリングフィールドアーモリーが次世代コンバットオートの指標として着目したのがモジュラーフレームというコンセプトだ。
その最大の魅力は、1つの仕様に縛られない高い拡張性と発展性にある。従来はポリマーフレームにモールドされた金属プレートにシリアルナンバーを刻印し、ポリマーフレーム全体が法的に1挺のハンドガンとして認識され登録されていた。しかし、このポリマーフレームを本体から“分離する”という発想を取り入れたのがモジュラーフレームだ。
グリップ全体を形成するポリマーフレームではなく、独立した金属製シャシー側にシリアルナンバーを刻印することで、グリップフレーム自体は法的には単なる部品に変貌する。これにより、ユーザーはグリップフレームを容易に交換し、サイズや材質などの仕様を自由に変更することが可能となった。さらにスライドアッセンブリーにも高い互換性を持たせることで、ユーザーは自在な組み合わせによって、オリジナリティのあるパーツ構成のハンドガンを組み上げることができる。
市場に目を向けると、すでに米軍によりM17/M18として採用されたSIG SAUER P320、そして同社のマイクロコンパクトモデルであるP365がモジュラーフレームのコンセプトによって大きな成功を収めていた。
こうした成功は、その高い拡張性に商機を見出したカスタムパーツメーカーを次々と呼び込み、メーカー単独の取り組みにとどまらず、市場全体を巻き込んで盛り上げる新たなビジネスモデルへと発展している。
現在はベレッタやIWIをはじめとする複数のメーカーが、このモジュラーフレーム構造を採用し始めている。近年ではルガーやH&Kもこの潮流に加わったが、その取り組みが本格的なものとなるかどうかは、いまだ未知数だ。
そうした中、2023年にこのモジュラーフレーム競争に颯爽とスプリングフィールドアーモリーが切り込んできた。XD/XDMシリーズで培ってきた設計思想をベースに、メカニズムを大胆に再構築し、モジュラーフレームの特性を最大限に引き出した新世代モデル、それがエシュロン(Echelon)シリーズとなっている。
すでにXD/XDMシリーズを通じてHS Produktの高い品質と信頼性は広く認知されており、その流れを汲むエシュロンには大きな注目が集まった。とりわけ設計面においては、さまざまな課題が指摘されてきたP320のコンセプトを丹念にブラッシュアップし、より完成度の高い形へと再構築している点も、高く評価される理由のひとつとなっている。
また、エシュロンの高い拡張性に着目し、カスタマイズ市場への参入に関心を示すメーカーも徐々に増えつつある。その動向は、今後のモジュラーフレーム市場の行方を占う上でも、注目に値すると言えるだろう。
今回は、映画『ジョン・ウィック』シリーズにおいて主人公ジョン・ウィックが使用していることで高い人気を獲得しているTTI(Taran Tactical Innovations)の手による、エシュロンのコンバットマスターモデルを紹介したい。
但し、これはあくまで試作であり、今後TTIが本格的にカスタムパッケージとして展開するかどうかは未定だ。しかし、これまでに目にしてきたエシュロンのカスタムモデルの中でも、ひときわクールなデザインを備えており、その存在感は群を抜いている。
ベースとなったのは、エシュロンのフルサイズ市販モデルだ。4.5インチバレルを備えるこのモデルは、アンビマニュアルセイフティレバーを備えたバリエーションだ。世界中の法執行機関や、米軍を含めたミリタリーサイドアームには、マニュアルセイフティレバーが求められるケースもある。一般市場でも外部セイフティ機構を望むユーザーも少なからずおり、設計段階からセイフティレバーの追加を前提とした設計は理にかなっている。
P320の場合はXM17 Modular Handgun System Competition参加の際に米陸軍の要求に従って後付けされ、市販モデルにもバリエーションとして加えられたが、続くP365では最初から設計にマニュアルセイフティレバーが取り込まれた。こういった機能は後付けより、最初から組み込んで設計したほうが、より良いものとなる。
口径:9mm×19
全長:203mm
銃身長:114mm
全長:156mm
重量:678g
メーカー希望小売価格:$649
G19とバッティングする4インチバレルと15連マガジンを組み合わせたコンパクトバージョン。上はデザートFDE、下がODグリーンで、どちらもセラコート仕上げだ。
スプリングフィールドアーモリーが推進するもう1つのバリエーションが、スライドとバレルをダイレクトにカットしたインテグラルコンペンセイターを備えるエシュロンコンプシリーズ。フロントサイト位置を若干後退させ、その前方を大きく切り開くことで発射ガスを上方へ噴出させ、マズルライズを大幅に軽減する設計となっている。
従来から存在するポーテッドバレルの一種だが、小径の穴を複数設ける方式ではなくチャンクポート(Chunk Port)と呼ばれる大型ポートを採用している点が特徴だ。
ザックリとスライド上面をカットしているので機能面だけでなく外観上のカスタム感も強く、同様の加工サービスは近年高い人気を集めている。
現在ではメーカー自らがこうした仕様をバリエーションとしてラインアップすることがトレンドとなっており、スプリングフィールドアーモリーもそれに倣う形で早期に導入した。
左が4.0C Comp、右が4.5F Compだ。


