2025/04/17
CARACAL F
CARACAL F
Photo & Report by Tomonari Sakurai
Gun Professionals 2013年6月号に掲載
登場当初、UAE製であったカラカルは、何度もリコールを繰り返し、改善が加えられてきた。
ドイツ製となった2013年現在のカラカルをパリからお届けする。
アラブからの刺客、グロックを超えるか?

ドイツ製のアラブの銃
ドイツの名門銃器メーカー、メルケルはベルリンの南側に位置する工業地帯ズール(Suhl)に今でも存在する。この町はその昔、銃器メーカーが軒を連ねていた。現在のSIG ザウアーの前身であるザウアー&ゾーンも、このズールを拠点にしていたが、ドイツが第二次大戦で敗れるとソ連が来る前に一目散でその場から逃げ、西側占領地域に拠点を移した。しかしメルケルは、ずっとズールに残り、東ドイツ時代は国営企業として高級なスポーツ用、およびハンティング用銃器を作り続けた。ドイツの再統一後は民間企業として復活、高級銃器メーカーとして事業を継続させた。
今年のIWAではメルケルのブースがあるのだが、そこにMerkelの名が見当たらない。普段メーカー名が掲げられているところにはアラブの文字が大きく書かれていた。TAWAZUN。アラブ首長国連邦(United Arab Emirates:UAE)の投資会社がメルケルの株を100%取得し、完全に買収されたのだ。TAWAZUNは、今回紹介するカラカル(CARACAL)のピストルのほかライフルなど小火器から、金属の精密加工を利用した航空宇宙科学分野まで、幅広く展開する2007年に設立された企業だ。ヨーロッパの市場でTAWAZUNグループの製品を展開しやすくするための足がかりとして、ドイツのメルケルを傘下にしたというわけだ。現在ヨーロッパで見かけるカラカルには、Made in Germanyの刻印とドイツでのプルーフマークが打たれている。2011年にカラカルがフランスに上陸してきた時、それはまだUAEの刻印があったモノだった。それが現在はドイツ製となって市場に出てきている。それでいて価格も抑えられていて、UAE製だった頃と変わらない。

口径:9×19mm
全長:178mm
バレル長:104mm
重量:750g
装弾数:18発
トリガーシステム:プレコックストライカー

カラカルはグロックを強く意識して作られているのがよくわかる。トルコや東欧などがグロックをモチーフとして作った銃はこれまで何種類も見てきたが、どれも二流品の印象を受けた。どうもあか抜けないのだ。しかし、このカラカルはその外観のデザインがとってもスッキリしていて、スマートな印象を受けた。野暮ったさが無く、好感の持てるデザインである。このカラカルが、どのような実力を持っているのか、今回はそれをご紹介しよう。ピストルの製造経験が無い新しい会社のピストルだ。その実力の程をそのお手本となったグロックと比べてみることにする。語り尽くされたグロックだが、今回ちょっとおもしろいオプションを手に入れたので、それと併せて紹介していこう。







CARACAL F
カラカルのシステムは、グロックと同じストライカーを使用したピストルだ。トリガーセイフティもグロックのそれと同じでマニュアルセイフティは省かれている。装弾数はグロック17がスタンダードで17発であるのに対してカラカルは18発。スライドの高さが低く、サイトとバレルの位置が非常に近い。スライド上部の曲面も相まって更に薄く見える。CZ75のようなフレームがスライドを噛むようなピストルと同じくらいしかスライドの高さ方向の厚みが無い。側面の前後にはセレーションがあるので、操作性は抜群で申し分ない。
そしてグリップした手の親指と人差し指が納まるくびれが高い位置にあることで、マズルジャンプを極力抑えられるようになっている。グリップのデザインもよくできており、18発のキャパシティを持ちながらグロックより若干薄く、手の小さい人もグリップしやすい。大げさなチェッカリングがグリップ側面に無いにもかかわらず、射撃時に銃が踊らないのも、このグリップとフレームの形状が有効に働いているからだろう。
グロックよりも安全面での配慮が感じられるのがコッキングインジケーターだ。スライド後端にコッキングしたときに現れるインジケーターが備えられているので、視覚でも現在銃がどういう状態にあるのかが判る。
スライドストップも小型ながら位置と形状が良く考えられていて使いやすい。マグリリースボタンはアンビデクストラウスになっている。 グロックと比べてのアドバンテージはもう一つある。価格だ。グロック17と比べるとやや安い設定になっている。
ただし、新興メーカーということもあるせいなのか、早々にリコールが出ている。堅い地面に落下させると暴発する事が判り、最初のリコールが出た。その後にもカラカルのショートモデルで、グロック19にあたるCARACAL Cはファイアリングピンが破損するトラブルでリコールが出た。おそらくそのあたりをクリアーにした設計変更をおこない、ドイツで製造され始めているようだ。









