2025/11/07
SMITH & WESSON モデル 4006 TSW

CHP官給オート
2018年の3月号で、矢野さんがS&Wのモデル4006TSWをリポートした。アレは羨ましかった。
彼は旧Gun誌時代にも同銃を扱っていて、それはCHP隊員からの借り物でのスクープだったのが、二回目は程度グンバツのCHP官給品を堂々ゲット(しかも新旧4006を一挺ずつ!)してのリポートだったからだ。
羨まし過ぎる。アレほどの極上品、どこから仕入れたんだ。もしかして、コネ?矢野さんに直で聞いてみなきゃとか思いつつも、自分は雑事に追われてすっかり忘却。
それが少し前、運良く自分も同型を手に入れてしまったのである。ミズーリ州のSummit Gun Brokerというショップのサイトで売っていたのだ。
きっかけはいつものARMSLISTだった。地元のローカル版で同銃の売りを発見。うゎあ〜イイじゃんと忘れかけていた興奮が戻りつつも写真で見るとどうも程度が悪い。そこで、もしかしてとネットを探したら、ミズーリにあったのだ。
予備マガジンが1個付きで385ドル。聞けば30挺くらい在庫があるという。写真を送ってもらって確認すると、状態はまあまあ。先方は「どれもこんなレベルだよ」という。州越えセールスだから消費税はなく、ディーラー売りのためFFL代もなし。加算されるのは送料の20ドルとこちら側のFFL代が25ドル。締めて430ドルだ。前述のARMSLIST物はホーグのラバーグリップがオマケに付くものの、予備マグなしで470ドル+税だから断然ミズーリが安い。
自分は、ネットの売り買いは極力ローカル版に限っている。顔が直接見える取り引きというヤツだ。遠隔地だと銃の状態が確認できないから敬遠気味。しかし、それでもコレは欲しい一挺。で、ミズーリに決断。
このショップは、4006TSWの放出が始まった2017年辺りから何度も買い付けているらしい。CHPは採用銃の入れ替えを段階的に行なっているため、放出も数回に分けられている模様。一回の買い付け分が売り切れても、しばらくするとまた入荷を繰り返しているという。
ともあれ、買った以上は大いに見せびらかしたい。矢野さんの記事を参考にしつつ、リポートです。
4006TSW
CHPとモデル4006との関係は1990年にさかのぼる。
この年CHPは、開発されたばかりの新型カートリッジ.40S&Wと、これまた完成直後の新型銃モデル4006をセットで採用した。
当時は9mmがLEの主流。猫も杓子もベレッタ、でなきゃグロック、あるいはSIGの時代だ。4006はそこそこタイムプルーフされたS&W第三世代オートがベースではあったが、新生.40S&W弾との相性はまだ未知数だったはず。銃も口径もできたてホヤホヤの導入は、かなり勇気ある決断だった。
ちなみに、業界初の.40S&W口径オートは、4006ではない。
.40S&W弾が市場にお目見えしたのは90年の1月だったが、肝心の4006本体の一般売りはそれに間に合わず、数か月の遅れが出た。恐らくCHPの注文をさばくのに必死だったのだろう。そしてその間に、なんとグロック22が先を越してしまったのだ。腰の重いグロックがこの時ばかりは素早く動いた。
加えて、グロックは15+1発の装弾数に対し、4006は11+1発と劣勢。お値段もグロックは500ドル台後半に押さえたが、4006は700ドル超えの高価でもあり、市場の流れはグロックに傾いた———といったドタバタが滑り出しにはありつつも、CHPの決断は多くのLE機関を刺激することとなり、一気に.40S&W弾をトレンドに押し上げたのだった。
それから10余年、CHP内で初代4006の老朽化が進み、また同モデルの生産終了でパーツの供給もままならない状況が出てきたことから、2006年に採用銃の入れ替えを行なった。それが今ご覧の新型4006TSWというワケだ。
TSWはTactical Smith&Wessonの略。初代4006との主な違いはダストカバーのレイルの追加と、デコッキングレバーのセイフティ機能のオミットの二点。フレームはほぼ新規設計という熱の入れようだった。CHPは大所帯のセレブLE機関だし、昔からS&Wとのパイプが太い。だからこーゆー手の込んだ特注品も造ってもらえたワケである。
ところで、筆者が.40S&W口径の銃を所持するのは今回が初めてだ。旧Gun誌時代にFNフォーティナインをリポートしたが、アレは借り物。入手するならシュタイアーM40、或いはS&W ショーティーフォーティ辺りかと考えつつも、なぜかそれほど熱を上げることはなかった。
正直言えば、個人的にこの口径はどうもシックリこないのだ。中途半端と言うかどっちつかずと言うかね。
確かに登場当時は騒がれた。10mmオート弾のケースを切り詰めて中型銃にもフィット可能にし、ストッピングパワーとリコイルのマネジメントのバランスを突き詰めたコンセプトは素晴らしかった。開発にFBIが関わったことで話題性もあった。銃器メーカー各社がこぞってバリエーションを展開し、前述のシュタイアーなど9mmより.40S&W版が先行で米国入りしたほど。おかげで.41AE口径辺りは廃れて、影も形もなくなる始末。それに今思えば、94年の多弾数マグ禁止令なども人気に拍車をかけた。同じ10発なら、より強力弾をという考え方だ。
しかし現在、この口径の人気は明らかに下降の一途をたどっている。
銃の売り買いの流れを観ても、どうもダブつき気味。少し前の弾不足の時期など、ショップの棚に売れ残っているのはいつも決まって.40S&Wだった。弾頭形状の研究が進んだ今では、9mmでも威力は充分だし、弾数が稼げてリコイルも緩いから有利。登場当時のフィーバーはとっくに冷め、あくまでもLE向けの“官給口径”の狭いイメージに押し込められつつあるのが現状だ。実際、言い出しっぺのFBIでさえも、2014年には9mm弾を再評価する声明を出し、今は確かGen5のグロック17やら19にHornadyのCritical Duty弾(135gr)を込めて使ってるしね。いったいあのフィーバーは何だったのだ、みたいな。逆に言えば、.40S&Wの銃を買うなら、今がたぶんお買い時ってことになるのかもしれないけど。
CHP2311
さてさて、ここからやっとTSWだ。入手しての第一印象は、とにかく重っ! S&Wの金属オートはアルミフレームの軽量イメージが強いから、そのギャップに先ず驚く。
グリップはラウンドバットが付いてきた。個人的には握り心地も視覚的にもストレートが好き。購入の際にリクエストしてみるべきだったか。その気になればebayで新同の中古を探せるから問題はないが。なお、この個体は右利きのオフィサーが使用したに違いない。グリップの右サイドに擦り傷が多いからね。本体に大きな傷や凹みはなし。まあそこそこ満足なコンディションだ。
いやしかし、新し目のS&Wオートを手にするのは久しぶりである。2015年にモデル4506の中古を買って以来だ。コレは何度も書くが、S&WのDAオートに関しては、自分はとにかくファーストジェネレーションで育った世代だ(と言っても基本的にはモデルガンですが)。セカンドも嫌いじゃなく(数挺所持)、サードも6904等のコンパクトモデルは今でも一応欲しい。が、さすがに刻印がレーザーになった辺りから次第に興味が薄れ出し、知識的にも網羅できていない。そしてさらに言えば、時代の変化に鈍感な自分でさえも、かなり早い時期からS&Wの金属DAオートに消えゆく運命みたいなものを感じ始めていた。ぶっちゃけ、2006年のTSWの採用を知った時も「まだ使う気かよ、S&WのDAオートを」みたいにやや辛辣な印象を持ったのも事実だ。


