2025/10/17
FK BRNO 7.5 FK ロングレンジ対応ピストル

Gun Professionals 2019年11月号に掲載
FK BRNO 7.5FKというロングレンジ対応ピストルと7.5mm弾を本誌でご紹介したのは2015年のことだ。それ以降、ずっとその存在は気になっていた。素晴らしいコンセプトを掲げて試作品を発表したものの、製品化に至らずに消えた銃は少なくない。FK BRNOはその轍を踏むことなく、製品化に成功、LE機関からの評価も高いという。しかし、高価ゆえまだ普及していない。そんなFK BRNO 7.5FKを遂にテストする時がきた。

FK BRNO(エフケー ブルノ)の銃を初めて見たのは、2014年のIWAアウトドアクラシックスの会場でのことだ。最終日、撮りこぼしはないかと、会場をもう一度巡回していた時、小さな展示ケースの中でクルクルと回っているCZ75を大きくしたようなピストルを発見した。CZ75のコピーは東欧や東アジアの小さなメーカーがよくやっている事だし、会場クローズの時間も迫っていたので特に注目することなく、ちょっと撮影しただけで軽く流した。記事にもしていない。しかし、翌年のIWAでもその銃が展示されていた。それが100m先を狙うロングレンジ対応ピストルだという事が判り、急速に興味が沸いた。
単なるターゲットピストルではない。100m先でもじゅうぶんなパワーを維持し、ボディアーマーを貫通する性能を目指しているというのだ。既存のピストル弾では無理なので、FK 7.5mmという独自のアモを使用する。当然これは記事にした。2015年6月号の“ENFORCE TAC by IWA”のレポートだ。
撮影した時、残念なことにショーケースから実機を外に出してくれなかった。翌2016年も同様だった。相変わらず、銃はショーケースの中で、外に出しての撮影は頑なに拒まれた。2017年では記事にしていないが、2018年になってようやくケースから出した状態で展示されるようになった。しかし撮影や取材に対しては非常に慎重で、あれこれ質問する筆者に対しても、あまり好意的ではないように感じた。
この年、FK BRNO 7.5mmはアメリカのSHOT SHOWでも展示されたそうだ。その様子は2018年4月号で記事にもなっており、ようやく市販できる段階に来たのだろう。松尾副編集長によれば、FK BRNOはこの号の表紙候補で、ディストリビューターと交渉し、最終日に表紙撮影をする予定だったそうだ。ところがその後に新生オートマグを発見したため、表紙はオートマグに変更されたという。
今年のIWAでは、やっとFK BRNOを来場者も手に取ることができるようになっていた。話を聞こうとすると、ブースの奥からオーナーが登場し、「なんで写真を撮る?日本ではピストルを買えないのだろう?」と冷たいお言葉の洗礼を受けた。それでもこのピストルには美しさがあり、たとえ冷たくされても引き下がれない魅力を持っていた。松尾副編からは、この銃を取材できないかという強いオーダーも届いていたということもある。その松尾副編は2019年のSHOT SHOWでFK BRNOの実射も体験している。しかし数発撃っただけでは、なんとも評価のしようがないという事だった。この銃の実射レポートを実行しようとした場合、これはやはりメーカーを訪問しないとだめだろう。なにしろ高価なピストルだ。オーナーを見つけることは難しい。
FK BRNOの本社は、名前の通りチェコのブルノに存在する。CZ UBにも近く、MotoGPのチェコグランプリの開催されるブルノサーキットのある街だ。第二次大戦期の傑作ライトマシンガンといわれるZB vz.26は、Zbrojovka Brno(ゾブロヨフカ ブルノ)で設計製造されたため、ブルノマシンガンとも呼ばれる。




FK BRNOに訪問取材の申し入れをしたが返事はない。無視されたわけだ。しかし、2018年12月号でご紹介したプラハのエイリアンピストルを、アームズマガジンの記事のため再び訪問した際、そんなFK BRNOの話をしてみたらエイリアンピストルの生みの親であるヤンの友人がそこで働いているということで、連絡を取ってくれた。そうしたらなんと二つ返事で取材訪問を受け入れてくれた。やっぱり人脈は大事だ。後で知ることになるのだが、ヤン氏もFK BRNOに務めるその友人もスロバキア出身という事だそうだ。
そんなことでFK BRNO訪問が実現した。しかし、これまでIWAの会場では冷たい対応だったので、いつになく緊張しながらFK BRNOへと向かった。取材は受け付けてくれたものの、快く取材に応じてくれるという保証はない。
ブルノの中心街からちょっと離れたところの小さな工場が立ち並ぶエリアがあり、FK BRNO本社はそこにあった。迎えてくれたのはヤロスラフ氏。満面の笑顔だ。またIWAでも話しかけてきたマルティン氏もそこにいた。彼も今までのイメージを覆して、とても温かく筆者を迎え入れてくれた。あぁ~良かった。それまで緊張が一気に和らぐ。


