2025/08/15
十四年式の逆襲 AGAIN
Gun Professionals 2014年10月号に掲載
前回の“十四年式の逆襲”では、マガジンポーチについて間違ったことを書いてしまった。その訂正をさせていただくのに併せて、“Turkの十四年式が不調なだけなのではないか?”という読者から寄せられたご意見に対する見解を述べたいと思う。
予備マガジンと作動不良 Turk Takano
ホルスター内の予備マガジン
2014年8月号で十四年式拳銃をリポートした。その内容にミスがあったので訂正+加筆させて頂きたい。日本軍拳銃のエキスパート杉浦氏からご指摘を頂いたのは、十四年式のホルスター内には予備マガジン1個分のスペース/空間があるということだ。確認したところ、確かに予備のマガジンが入るスペースがあった(下の写真ご参照)。30年以上、このホルスターを所持していながら気がつかなかった。これは筆者の目が節穴だったことを物語っている。撃つ事に専念、付属品に注意を怠ったということか…、弁解のしようがない。これは筆者のミスだ。
“予備のマガジンを持たずの運用なら、6連発リボルバーで良かったはずだ”と述べたが、陸軍十四年式は、マガジン交換による継続射撃を想定していたわけだ。この件については訂正させて頂きたい。
先回のリポートではランヤードなしだったので、それがホルスターからの引抜きを困難にしていた。ガバメントと比較してもさしたる意味はなかったのかもしれない。ランヤードは十四年式のバランスの取れた位置に結んであり、これを引っ張れば十四年式はストレートにホルスターから引き出すことができる。
もちろんランヤードを使ってのサイドアーム携帯は長所、短所が同居している。式典なら格好良くとも、ジャングルで小枝や植物に引っかかるとか、塹壕戦での敵との接近戦など、ランヤードの存在はマイナス面も考えなければならないからだ。
マガジンをホルスターから取り出す場合、もしマガジンに紐がついていたら楽だと思った。実際、この深い位置に予備のマガジンを入れていても、取出しには難儀する。独立したボルトストップがないことから見て、こんな場所に予備マガジンを入れていたとしても、本気でマガジン交換による射撃継続を考慮していたとは考え難い。


十四年式は作動不良が多発する銃ではない?
「十四年式は快調に作動する銃だ。Turkが所有する十四年式がダメなのであって、それだけで十四年式を作動不良が多発する銃だと決めつけるのはおかしい」
という意見が数多くあるらしい。確かにYouTubeなどの動画を観ても、スムーズな回転を見せている十四年式は存在する。
以前のリポートでも述べたが、第二次大戦後、8mm南部弾が米国で製造供給された。またRCBSが8mm南部のリローディングダイを市販した。戦争中に鹵獲した、あるいは武装解除で入手した日本軍の拳銃を持ち帰った将兵が、それらを撃ってみようとした結果だ。
ダイは他にもあったと聞くが詳細は不明だ。8mm南部専用ケースが発売される以前、またはその後の品不足を狙い、RCBSから.38スペシャル、.30レミントンのケースをベースとして8mm南部ケースに改造するための特殊ダイ、リーマーなどが発売された。ミッドウェイ社は更に一歩踏み込み、カートリッジだけでなくリローディング関係品のコンポーネントを発売した。
それまでは鉛ベースのキャスティング・ブレットだったが、ジャケッテッド・ブレットが発売されるなどして、8mm南部のリローディングにのめり込んだ者も少なくなかった。1970年代には、十四年式を射撃するシューターを時折レンジで見かけた。そしてまた射撃中、フィーディングトラブルを起こす様子も数多く見た。トラブルが起これば興味本位の体験射撃はそれで終了だ。作動不良を頻発させる銃を撃っても面白くいないからだ。中には、何とかうまく作動させようと努力する者も現れるが、入手できるツールで結果が出なければ、皆、興味を失う。
8mm南部弾の射撃が急速に下火になった理由はこれだった。多くの所有者が上手く作動させることができず、諦めたのだ。筆者の十四年式だけが作動不良を起こすわけではない。
陸軍十四年式の場合、製造時、調整された付属マガジンならまずは快調に回転するという話もある。P08などは値段にもよるが、シリアルナンバーがマッチングしたマガジンが装着されて販売されているものがある。しかし、十四年式でボディとマガジンのシリアルナンバーがマッチングした状態で販売されているものにはお目にかかったことがない。
筆者が思うに、十四年式拳銃はたとえ作動が99%確実であってもサイドアームとして満たされていない箇所がいくつかあった。特に軍用なら確実に作動するのが当然だ。作動したからといってそれだけで優れたミリタリーサイドアームとはならない。先のリポートでも触れたが、十四年式の問題点は作動の安定性以外にも以下のようなものがある。
- 銃を握った手で操作不能な180°回転のセイフティ
- 独立したボルトストップが無い。マガジンの引き出しが困難。引き出せばボルトはクローズしマガジン交換後、再びボルトを引かねばならない。
- トリガープルが軍用としては超軽すぎる。
- マガジンセイフティがある(これは賛否両論で、必ずしも問題点とはいえないだろう)
第二次大戦時までに各国が制式化したモデルの一部は、ここにあげた問題点をクリアするスペックを備えていた。したがって時代考証が合わない無理な話をしているわけではない。これまでも述べたが当時、市販されていたコルト、ブラウニング、マウザー製品を参考にも出来た。にもかかわらず、あの時代に十四年式を制式化したことはお粗末だ。とはいえすべて過ぎ去ったことだ。十四年式も今じゃ立派なコレクターズアイテムとなっている。
十四年式については、この後、松尾副編集長からもカバーしてもらうことにする。
Turk Takano