2025/09/09
ラドム VIS wz.1935 & wz.30ナガンリボルバー

Gun Professionals 2014年11月号に掲載
ポーランドのラドムVIS wz.1935は、1911をベースに独自の改良を加えたミリタリーピストルだ。シングルアクションでありながら、スライドにデコッキングレバーを配置している。そんなVIS wz.1935 を、wz.30リボルバーと共にハンガリー警察の武器保管庫から“発掘”した。
ラドムを探して
ハンガリーという国は、筆者にはとても魅力的な国となっている。探しているモノが見つかる場所だからだ。
この国は第二次大戦でソ連軍に占領され、戦後になってもその強い影響を受け続け、冷戦時代はソ連の衛星国となって社会主義の道を辿った。地理的には東欧ではなく、中欧に位置する。そのためか、東欧的なもの、西洋的なもの、その両方がこの国に入ったようだ。銃に関しては、フランスで見つけることが難しい銃でも、ガンコントロールが比較的緩いこの国では、容易に様々なものにアクセスでき、さらに自由に撃てたりもする。なかなか巡り合うことが難しい東欧の銃も、この国に来れば何とかなる場合が多い。もしハンガリーで見つからなければ隣国のスロバキアやオーストリアに行けば何とかなる可能性もある。
そんなわけでラドムを探してたどり着いたのは、やはりハンガリーだった。実は先月のTEKの撮影の時にラドムwz.1935が見つかったのだが、個人の持ち物で、その人はあまり協力的では無かったので撮影は出来なかった。
そして今回、別のルートでラドムを見つけた。なんとそれは1970年代に犯罪に使用され、ハンガリー警察に押収されたものだった。それ以来、現在まで警察の保管庫に眠っていたのだ。それを発掘、今回の撮影となったのだが、なんとラドムのリボルバーまでオマケで付いてきた。
RADOM VIS wz. 1935
| 口径:9mmパラベラム 全長:211mm 重量:1,050g バレル長:115mm 装弾数:8+1発 |
ラドムVIS wz.1935
ラドムとはポーランドの都市の名前だ。この都市にFabryka Broni Łucznik、通称ラドム造兵廠があった。ポーランドという国は大国ドイツとロシアに挟まれていたため、何度も侵略を受けてきた歴史を持っている。第一次大戦後に独立を果たしたポーランドは、自国を守るため武器の国産化を図り、ピストルではVIS wz1935を生み出した。これはピオトール・ヴィルニエブツィックとヤン・スコルツィピンスキーの二人の技師によって開発され、wz1930を経てVIS wz.1935が完成した。
VISとは設計者2名の名前、ビィルニエブツィック(Wilniewczyc)とスコルツィピンスキー(Skrzypinski)の名前を組み合わせ、間に“&”を意味する“I”を置いて、WISという名前になるはずだった。しかしWの発音はVに近く、またVISとはラテン語のPowerを意味することから、このピストルはVISと呼ばれるようになった。wzは英語のmodelに相当する。
この銃はジョン・ブラウニングに影響を受け、1911を手本にしたことは一目でわかる。独自デザインを考える時間的猶予はなかったのだろう。そこで、手っ取り早く、1911を参考にした。まずは.45口径をヨーロッパで主流になりつつあった9mmパラベラムに置き換えている。
グリップセイフティなど、1911の持つ特徴をそのまま引き継いでいるが、大きく異なるのがスライドに設けられたレバーだ。セイフティかと思いきや、下に下ろした状態で固定されないし、指標も無い。これはデコッキング専用レバーなのだ。
シングルアクションセミオートマチックピストルのチェンバーに弾を装填して携帯する方法は、コンディション1と呼ばれるコック&ロックか、ハンマーをダウンさせるコンディション2のいずれかとなる。このハンマーダウンを安全に行なうにはある程度、慣れが必要だ。ハンマーを指で押さえながら、トリガーを引いてゆっくり前進させることになるが、その指が滑ったりすれば、暴発してしまう。そこでラドムVIS wz.1935は、トリガーを引くことなく、安全にハンマーを前進させるためのデコッキングレバーを搭載した。これは1929年に登場したワルサーPPに初めて備わったものだ。その機能をチャッカリ拝借している。
シングルアクションのセミオートマチックにデコッキングレバーを搭載したモデルは他にほとんど例がない。その意味で、このデコッキングレバーはラドムVIS wz.1935の最大の特徴だといえるだろう。
1911のマニュアルセイフティの位置にあるレバーは、セイフティではなく、分解時にいったんスライドを固定するためのディスアッセンブリーレバーだ。但し、当初の試作モデルでは、このレバーがマニュアルセイフティだった。しかし、デコッキングレバーを設けたことで、マニュアルセイフティは不要と判断され、その機能はなくなり、分解時のスライド固定ディスアッセンブリーレバーとなった。
メインスプリングハウジングの後方にはスリットがあり、ストックが取り付けられるようになっている。そのため、モーゼルC96やスチェッキンのようにホルスターにもなる木製のストックが存在する。但し、そのストックはごく少数が作られただけだった。
その後、ドイツに占領され、ドイツ軍はラドムwz.1935を生産させて自国軍用として生産した際、このストック装着機能は廃止されている。
分解
外見のチェックを終えて分解を試みる。1911と同じように分解できると思ったが、これが微妙に違う。分解にはスライドを途中まで後退させ、ノッチに合わせてスライドディスアッセンブリーレバーを押し上げ、スライドをロックする。この状態でスライド先端から飛び出ているロングリコイルスプリングガイドロッドを指で摘み、前に少し引っぱる。
するとリコイルスプリングのテンションが無くなり、スライドストップが容易に外れる。後はディスアッセンブリーレバーを解除して、スライドを前進させればフレームから外すことが出来る。
スライド内部を覗くと驚いたことにリコイルスプリングは二重でガイドに固定されている。現代銃のようだ。バレルには1911にあるようなリンクがない。フレームとかみ合わせてバレルをロックから解除するFNハイパワーと同様のデザインを取り入れている。


