2025/09/07
ライフルマンズコーナー16 “当たらないライフル”は本当に当たらないのか

Text & Photos by Turk Takano
Gun Professionals 2014年5月号に掲載

先日、レイズガンショップに立ち寄ったら、テストしてもらいたいお客のライフルがあるという。そのお客は“この銃、100ヤードで撃って数インチに着弾がバラつく。どこがオカシイのかチェックしてくれ”というのだ。
これまでもこの種の“頼まれテスト”は何回もやっているので珍しくはない。そしてまたテスト手間賃を請求したことはない。要するに無料(ノーチャージ)サービスだ。筆者にとっては当たらないライフルの原因探求は“ゲームのようなもの”だと思っている。
今回、テストして貰いたいというモデルが有名カスタムメーカー製であったこともあり、筆者も俄然興味が湧いてきた。GAプレシジョンと聞けばご存知の読者も多いだろう。ジョージ・ガードナー社長はタクティカル/スナイパー界じゃ良く知られた存在だ。自身が元軍人で、その後、LEタクティカルシューターとして実績を積んだことで、彼の意見は業界では重みを持っている。
テストの打診を受けたとき、“製造元に送り返すのが一番じゃないか?”とレイズのガンスミス ロンに言ったら…、“同じ事を所持者本人に伝えたのだが”…ともかく何が理由かわからないが、一方的に銃を置いてったと言うのだ。
テスト用の弾はもちろんタダで供給するからテストしみてくれという。ついでもあったのでレポートすることにした。
典型的なこの種のテストがどういう結末を迎えるか…をお伝えしよう。
テスト準備
ロンはストックを外してベディングを確認、ボアをボアスコープで覗き、チェックしたが異常はないという。銃は撃ってなんぼの世界で、目視チェックでは判らないことが多い。とにかくレンジで撃ってみることだ。万が一に備え、信頼性の高い予備のスコープを持って行くのが絶対必要条件だ。
7.62mm(.308)で、しかもタクティカル系ならFederal 168gr BTHP、または175gr BTHP ファクトリーアモが相性ナンバーワンだ。これまでの経験で言えることは、これを撃ってだめなら、基本的にどこかに問題がある可能性がある。
GAプレシジョンのライフルは何回も競技会で見たことはあったが、これまで同メーカーのモデルをテストしたことはなかった。
テスト銃の大雑把なスペックを記して見よう

バレルの詳細については確認していない。現在、Model 7000はモデルチェンジされ、Templar(騎士団)というショートアクションベースのCrusader(十字軍)シリーズの中のバージョンの一つとなっている。
アクションの製造元はDefiance Machineで、社長がGlen Harrisonと聞けば思い当たる読者もいるに違いない。Nesika Bayの創設者/デザイナー/製造者だった人物だ。
テストモデルは少なくとも6~7年前のモデルではなかろうかと推察する。今回のテストモデルはGlen Harrisonにはつながらない。現在、バレルはBartline SS 5R 1-11.25”を採用している。このテスト銃が製造された当時、既にBartlineだったとは思えない。
予備のスコープとしてLeuplod 3.5-10×Mark4とマウントを準備した。
まずは装着されているシュミット&ベンダーをリングごと外した。予備スコープ取り付けのためにスコープリングをベースに装着、ラッピングする。スコープを取り付け、必要調整後、シュミット&ベンダーに戻しレンジに行った。
実射テスト
まずボアにパッチを通した。ボアサイティングをやる。見たところ、ちょっとずれていたが標的には少なくとも入るだろうと判断、スコープを最大の16倍にセット、Federal 168gr HPBT第一弾をチェンバーに送り込む。
インパクトは狙い点から12”高く、右に5”ずれていた。ウインデージ、エレベーションダイヤルを回し、狙い点とインパクトが合致するように修正する。確認のためさらに同じ場所を狙って数発撃った。ほぼ重なった。とりあえず3発でグループを撃ってみた。
写真Aは3発だが0.200”のグループ…、Wow!そして5発グループ写真Bでは0.500” となった。銃はOKだ。確認のためスコープをリングごとはずしLeupoldと交換する。ここでゼロインのやり直した。Federal 168grで更に5発グループを撃った。似たようなグループで多分にFederal 168grでのグルーピングは0.500MOA…この辺にあるのではないかと感じた。Nosler(ノズラ)の150gr ACCUBOND ハンティング用カートリッジでは、いずれも1インチ以下(写真C)だったが、Federal 168grHPBTとの差は明確だった。
“自分の銃が当たらない…”というとき、米国なら友達同士で“ジョンよ…、俺に撃たせてみろよ”なんて事が頻繁に行われている。筆者の銃を使い、ミニ競技をして所持者である筆者が負けた…(笑)…なんて事は良くある。日本の場合、法的規制でそれが出来ない。たとえ銃砲所持者であっても他人の銃を撃ってはいけないという決まりだからだ。
当たらなければガンショップに持っていくのだろうが…。裏庭にレンジがあるなんてことは米国でも珍しい。日本でもガンショップなら所持者でもなくとも撃てるはずだ。撃てないなら仕事にならない。もっと日本のガンショップは売るだけかもしれないが…レンジまで行ってテストするなんて難儀なものだと思う。
筆者の場合、近いクラブレンジなら家から車で20分だ。200ヤード以下という制限はあるもののハンドガン、ライフル、ショットガンが撃てる。500を撃つとなるとちょっと郊外にドライブしなければならないが…とにかく可能だ。
レンジからの帰り、銃をRay'sに返却した。今回のテストも筆者以外の者がテストしたらもっと良いグループになった可能性もある。筆者も所詮は人間だ…。
所持銃が当たらないという話は良く聞く。高価な銃ならグルーピングは良くなるはずという迷信みたいなものも存在する。
銃は所有者しか撃てないという日本の法規制…その理由はわからないでもないが、不便この上ない。銃砲所持許可証を持っている人同士なら、所有者の管理下(その場に同席というべきか)にある状態に限り、銃の貸し借りを認めても何ら差支えがないように思う。それで何か不都合な事でもあるのだろうか。
米国の場合、銃の中古市場には、“通称、当たらない銃”がいっぱいある。購入して思うように当たらなかったら売却してしまうシューターが多いからだ。射撃競技仲間が“これは当たらない”といっている銃を買い取り、その銃を使って全米で優勝したなんて嘘のような話も過去にあった。別に市場にある銃がすべてOKという話をしているわけではない。当たらない…ということには、いろんな要素が絡み合っていて簡単には結論が出せない。しかし、現実には所有者本人に射撃の技術がなく、その結果、“当たらない”というケースが圧倒的に多いということだ。ガンショップにしても実際に撃って見ないことには、“お客様、この銃は当たらないということはないですよ”と進言はできない。ここが難しいところでもある。筆者のような外部の臨時雇われシューターの存在感がここにあるということか…(笑)
Text & Photos by Turk Takano
Gun Professionals 2014年5月号に掲載
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