2025/05/17
オハイオ オードナンスワークス H.C.A.R. 現代版BAR
OHIO ORDNANCE WORKS
H.C.A.R.
Heavy Counter Assault Rifle
Text & Photos by Tomonari SAKURAI
Gun Professionals 2016年1月号に掲載
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1917年にアメリカで開発され、第一次大戦末期に戦場に投入されたフルオートマチックライフルBAR。分隊と共に移動しながら撃てる機関銃であったため、ウォーキング・ファイアとも呼ばれた。あれから97年が経過している。旧式化して50年以上前に戦場を去ったこのBARを、オハイオ・オーディナンスワークスは現在でも活躍できる武器にアレンジした。それがヘヴィー・カウンター・アサルト・ライフルH. C. A. R.(エィッチ・カー)だ。

その昔(私が小学生の頃だ)、学校が終わって家に帰るとすぐにテレビをつけた。夕方前のテレビは再放送が中心で、往年の名作ドラマである『コンバット!』や、『ラットパトロール』なども時々放送されていた記憶がある。その『コンバット! 』の劇中、、苦戦する小隊をカービー二等兵が登場して一気に蹴散らしてくれるシーンを楽しみにしていた。そのカービー二等兵が手にしていたのがブラウニング オートマチックライフルM1918、通称BARだ。
他の兵士が持つM1ガーランドより一回り大きな銃で、射撃するとあたりは砂塵が舞い上がり、見るからに破壊力があって、一気に敵を制圧してくれる。一度このシーンを見てから、サンダース軍曹の小隊がピンチになると、カービー二等兵の登場を心待ちにしたものだ。実際にはそんなシーンはあまり多くなかったようだが、小学生の自分に、かなり強烈な印象を残した。
第一次大戦では、いくつかの軽量機関銃が登場した。それまでの重機関銃は、通常三脚に固定して使用するため機動性が低く、拠点防衛用の火器として使われた。航空機や車両、戦車に載せることでやっと攻撃用兵器となる。新たに登場した軽量機関
銃も、それを抱えて走り回れるほど軽量化されていたわけではない。ほぼ唯一、機動性を持った軽機関銃はフランスのショーシャ( Chauchat)mle.1915だった。
1917年4月6日、第一次大戦に遅れて参戦したアメリカは、急遽フランスのショーシャ(Chauchat) mle.1915軽機関銃を購入、さらにこれを.30 - 06に改造したmle.1918を導入した。しかし、、ショーシャの作動は不安定で、過酷な戦場ではトラブルが多く、信頼できる武器ではなかった。
アメリカはこの戦争に参戦する前、ブラウニングデザインの新型フルオートマチックライフルの採用を決定していた。それがBAR(Browning Automatic Rifle)だ。
量産体制を整えたBARは戦争が終結する1918年に戦場に投入された。
BARは20発のボックスマガジンしか使用できないのはいささか心許ないが、ショーャだって20発だった。アメリカ軍は一人で運用できるという点を重視したのだろう。現在使用されているMINIMIにつながる分隊支援火器の流れは、このBARから始まったといえる。
.30 - 06というフルロードのライフル弾を、通常のライフルのような形の銃からフルオートでぶっ放すのだ。.308(7.62×51mm)を撃つのとはだいぶ違う。.30 - 06クラスのライフル弾をフルオートで撃つというとドイツ軍、降下猟兵が使用していたFG42を思い浮かべる。パラシュートで降下しながら撃つことを想定したFG42は4.5kgと軽量だ。こんな軽い銃から強力な7.92×57m m弾をフルオートで撃つとなると、その反動はすさまじく、FG42は筆者のフルオートの体験の中で最も手を焼いた銃の一つだ。
しかしBARはFG42の倍近い8.8kgもの重量があるため、ずっと撃ちやすいはずだ。

H.C.A.R
口径:.30-06スプリングフィールド
全長:718mm
バレル長:16インチ
重量:5,330g
ライフリング:4条右
装弾数:20 / 30発
作動方式:ロングストロークガスオペレーション、クローズドボルト、セミオートマチック
このM1918BARをベースに、使用する.30 - 06弾もそのまま、現代の運用に適合するよう再設計されたモデルが今回紹介するHCAR(Heavy Counter Assault Rifle)だ。これを開発したのがオハイオ・オードナンス・ワークスというメーカーで、過去の軍用銃から現行の軍用銃までそのサポートサービスをおこなっている。
過去の軍用銃に対しては、そのメンテナンスやパーツ供給がメインの業務だ。入手困難なパーツについては製造もおこなう。1996年にはBAR M1918A3を発売した。M1918A2とそっくりだが、クローズボルトのセミオートモデルに変更、通常のセミオートライフルとして一般販売も可能とした。それを元に、2013年、BARを近代化モデルとして蘇らせたものがHCARなのだ。