2025/07/12
American Sniper Rifles 高機能ストックを装着した現代のライフル三選
Text & Photos by Hiro Soga
Gun Professionals 2015年5月号に掲載
ここ何年かの間に、スナイパーライフルは長足の進歩を遂げている。ボルトアクションハンティングライフルのアップグレードバージョンであったスナイパーライフルは、よりスナイピングに特化した機能や性能を盛り込まれたモデルが目白押しとなっているのだ。既に完成された感のある機関部は別として、魅力的なカスタムストックを装着したスナイパーライフル3種を今回ご紹介したい。
*それぞれの画像をクリックするとその画像だけを全画面表示に切り替えることができます。画面からはみ出して全体を見ることができない場合に、この機能をご利用ください。

レシーバー:.Remington Model 700 Short Action
18”バレル装着、AI(Accuracy International)マガジン使用
U.S.Optics社製スコープ、シュアファイア・マズルブレーキ装着
2025年7月 GP Web Editor補足
J. Allen Enterpreisesは2019年7月にその事業を停止しました。しかし同社のJAEストックはカナダのMDTが継承し、現在はJAE-G5 Chassis Systemに発展する形で販売が継続しています。



カスタムストック
ロングディスタンス(長距離)射撃用ライフルが注目を浴びている。元々アメリカはハンティングが盛んであり、人口の少ない地方に行くと、それこそ一家に1挺、スコープ付のボルトアクションライフルが壁にかかっていたりする。
「いやー、コヨーテやマウンテンライオンが、家畜を襲ったりするんだ。今度、ナイトビジョンというのかい?あれを買おうかと思っている。コヨーテが来るのは夜中だからな」
彼らにとってライフルは、身近な存在なのだ。小振りの牧場のオーナーが、ハンティングの達人であっても何も不思議ではなく、それゆえに性能の良いライフルに対する一般の関心も高いのである。
ここにきて、それらごく普通の一般市民の間でライフル熱が高まっているようだ。その原因は、やはり中東における戦争の影響が大きい。戦争当事国であるアメリカでは、ライフルやハンドガンといった個人用ウェポンに対する意識が必然的に高まっている。身内が派兵されている人も結構いるし、その手のニュースに触れることも多い。ウェポンがより身近な存在なのだ。
そんな一般のライフルマンにとって、気になる存在といえばやはりミリタリースナイパーであろう。想像を超える長距離でのスナイピングに成功したというニュースが流れれば、どの口径でどんなライフルを使ったのか、それこそ興味津々で思わず自分のライフルを握り締めてしまうのではなかろうか。
これまでスナイパーというと、大きな部隊にひとりか2人、特殊な訓練を受けた兵士がいて、スポッター(スナイパーの補佐役)との2人チームで隠密行動し、ターゲットを撃滅する、という重要ではありながらも比較的地味な役割を担っていたといえよう。ところがイラク戦争など、市街地での戦闘が激化してくると、友軍をRPG(肩撃ちの無反動砲)やIED(簡易手製爆弾)の被害から守るために、部隊とは別行動をしているスナイパーチームの有用性が、大幅にクローズアップされてきたのだ。当初チームは2人から4人だったが、ミッションが複雑化するにつれ、スナイパーが2人いる合計6人から8人のチームへと増強され、そのタクティクスも変化してきた。
勿論、スナイパーライフルも徐々にではあるが、改良されている。たとえばアメリカ海兵隊(USMC)を例にとって見ると、ボルトアクションライフルM40が制式となったのは、1966年のことで、なんとベトナム戦争時なのだ。当時のM40は、木製ストックのレミントンM700.308口径そのままで、レッドフィールド社の3-9×スコープがマウントされていた。これが1970年代前半になると、M40A1となり、傷みの激しかった木製ストックはマクミラン社製のファイバーグラスストックに換装され、スコープも10倍固定のUnertl社製にグレードアップされた。

アクション:Remington Model 700 Short Action 24” バレル装着





このM40A1は長い間改良されることなく使われ続ける。ようやくリニューされることになったのは、1996年のことだ。そして採用されたM40A3のストックは、同じマクミラン社製ながら、長さがアジャストできるタクティカルA4モデルとなり、スコープもシュミッド&ベンダー社製3-12×50mmが搭載された。このM40A3は、2001年10月7日に開始されたアフガニスタンでの軍事行動“ 不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom)”で実戦に投入され、同じく制式化されていたMk11Mod0(SR25セミオート7.62×51mm)やM82(.50BMG)と共に、バトルプルーブを受けていく。
2009年になると、M40A3は必然ともいえる改良を受ける。それまで固定弾倉だったフィーディングシステムは、デタッチャブル(着脱式)マガジンとなり、シュアファイア社製のマズルブレーキが付いたバレルには、サウンドサプレッサーが装着できるようになった。これが今、USMC現役となるM40A5モデルである。
ところがここにきて、レミントン社から重大な発表があった。2014年暮れ、あのレミントンのMSR(モジュラースナイパーライフル)のライフルストックがUSMCに制式採用されたのだ。
このあたり、お好きな方はご存知だろうが、レミントンMSRはUSアーミーに.300ウィンチェスターマグナム口径で、M2010として制式採用が決まっている。これは、2011年まで現役であったM24を完全にリプレース(置換)するという、莫大な予算をかけた大事業でもある。
それをUSMCにおける制式採用はストックのみで、機関部やバレルはそのまま現行の.308口径のものをチューンナップして使うというのである。要は、現行のレミントン機関部は信頼性が高く、まだ十分使用に耐えるので、精度を生かすことができて、使い勝手の良いMSRストックを採用しようということなのだろう。
2025年7月 GP Web Editor補足:
これが書かれた10年前はそうだったのですが、レミントンMSRはMK21として一旦は採用されたものの、US SOCOMの要求仕様を満足していないと判断され、最終的にBarrett MRADがMK 22として採用されました。
USMCはMK22 ASR(Advanced Sniper Rifle)を既存のM40A6、およびMk13 Mod7との更新を2024年11月に完了しています。
陸軍はまだ完全にMK22への更新を完了していませんが、レミントンのスナイパーライフルは完全に過去のものになりつつあるのです。
そうなのだ。最新のスナイパーライフルは魅力的ではある。ストックは折れて全長を短くできるし、レールはあちこちについていて、あらゆるアクセサリーを載せることが出来る。あちこちアジャストできて撃ちやすいし、精度は最高ときている。しかし、要はボルトアクションライフルなのだ。バトルプルーフされたレミントンアクションさえ持っていれば、あとは市場にあふれている良質なカスタムストックを組み合わせることで、極上のパーソナルライフルを作り上げることが出来てしまうのだ。
今回は、このスーパー魅力的なカスタムストック達を思う存分に見ていただいた。これらはストックだけでも結構なお値段となる。

アクション: M1A





Text & Photos By Hiro Soga
Gun Professionals 2015年5月号に掲載
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございます。