2025/08/30
【NEW】New Model インプレッション KSC PMXサブマシンガン
KSCのフルオートガスブローバックPMXは、ベレッタが2017年に発表した新世代サブマシンガンをモデルアップしたものだ。細部に至るまで、実銃の形状と操作性、さらには雰囲気までもが入念に再現されている。これはPMX初のトイガン化であり、とても新鮮だ。
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KSCは日本のトイガンメーカーとして、これまでにも数多くのサブマシンガンを製品化してきた。列挙すると、ガスブローバックとしてMP7A1(HK), MP9およびTP9(B&T)、M11A1(Ingram)、Vz61(CZ Skorpion)、TMPおよびSPP(Steyr)、Vector(Kriss Vector)、 電動ガンとしてオリジナルデザインのQRF mod.1、STRAC ERG、STRAC TEGなどだ。ピストルをベースとしたグロック18C、26C等や、ピストルに準ずるM93R系などは含めていない。
2025年、7月18日、これに新たなサブマシンガンPMXが加わった。
この製品について、KSCのサイトにはオフィシャルライセンスモデルと表示され、本体レシーバー側面やパッケージにも“BERETTA”の文字があるが、製品名として、ベレッタPMXとは謳っていない。したがって、トイガンの製品紹介においては、あくまでも“PMX”と表記させて頂くことにする。
まずは実銃のBeretta PMXについて、簡単に解説したい。
その原型は、2015年のEnforce Tac 2015でスイスのB&Tが展示したP26だ。この銃はB&Tがセミオートカービン、ならびにラージフォーマットピストルとして販売することを想定していたものだった(実際にごく少数がB&Tから販売された)が、その後、どのような経緯かは不明だが、製造販売権がベレッタに移った。
そしてベレッタはこのP26に手を加えて、PMX D7と呼ばれる試作サブマシンガンを作り、これに対するフィールドテストをカラビニエリ(Carabinieri:イタリア国家治安警察隊)がおこなった。そのフィードバックを受けて、改良改善を加えたモデルがベレッタPMXであり、2017年11月にパリで開催されたMilipolで製品版が初公開、その後に販売開始となっている。
2018年1月には、早くもカラビニエリがPMXの製品版を発注したことが報じられた。当初その数は1,000挺であったが、その後にもまとまった数が追加オーダーされたようだ。その他、Esercito Italiano(エゼルチト・イタリアーノ:イタリア陸軍)、Guardia di Finanza(グアルディア・ディ・フィナンツァ:財務警察)、Polizia di Stato(ポリツィア・ディ・スタート:国家警察)などイタリアの軍、警察組織がPMXを採用している。
国外ではサウジアラビア、マレーシアなどがPMXを導入した事例があるようだが、それ以外の採用事例についての情報は知られていない。
この銃の全長は418mm/640mm、バレル長が175mm、重量は非装填時で2.4㎏だ。口径は9×19mm、マガジン装弾数は30発で、そのマガジンはAPC9やMP9などのB&T製9mmサブマシンガンの多くと互換性がある。これはPMXの原型がB&T P26だからだ。そしてB&TのサブマシンガンのルーツはシュタイヤーTMPに辿り着く。よってTMPともマガジンの互換性がある。
ロアレシーバーはポリマー樹脂製で、アッパーレシーバーもポリマー樹脂で覆われているが、これはスチール製アッパーにポリマーコーティングを施したしたものだ(実銃の場合)。
セミフルセレクティブファイアで、回転速度は900発/分、作動方式はクローズドボルトのストレートブローバックとなっている。ボルトハンドルは左右切り替えが可能で、レシプロケイトタイプ、すなわちボルトの前後動に連動してボルトハンドルが前後に動く。
セイフティセレクターレバー、マガジンキャッチは、両側に配置されており、左右どちらの手でも同様に操作ができる。ボルトハンドルは左、または右の希望する側に配置可能だ(デフォルトは左らしい。切り替えには分解が必要)。但し、ボルトリリースレバーはレシーバーの左側面のみとなっている。したがって完全なアンビデクストラウスではない。
ストックは右側面へ折り畳むことができる。長さ(LOP)調整機能はない。またチークピースの高さ調整機能も無い。
ピカティニーレイルはアッパーレシーバーの上面先端部から後端部までフルレングスでの配置と、アッパーレシーバーハンドガードの左右面、そしてロアレシーバーのハンドガード部下面に装備されている。
PMXは最新型のサブマシンガンであり、スペック的にも現代のサブマシンガンに相応しい機能をほぼすべて備えたものだ。
それでいながら、ややノスタルジックなサブマシンガンのテイストも併せて持っているようにも感じる。それは円筒形レシーバーから来る印象だ。最近開発されたサブマシンガンやピストルキャリバーカービン(PCC)の多くが角形レシーバーだからだろう。比較的最近のサブマシンガンやPCCとは、SIG SAUER MPX、B&T APC9、CZスコーピオンEVO3、グランドパワーSTRIBOG SP9、その他数々のARプラットフォームを元にしたPCCなどで、それらはどれもレシーバーの側面がフラットか、それに近い形状となっている。
それに対して、PMXは往年に名機に通じる円筒形レシーバーでデザインされているのだ。ここでいう往年の名機とは、MP-40、ステン、スターリングL2A3、カールグスタフM45などを指す。HK MP5も円筒形レシーバーに含まれるだろう。その他にも名機とは言い難いが、S&W モデル76やKG9も円筒形レシーバーだ。20世紀のサブマシンガンは、UZIとイングラム等を除くと、ほとんどが円筒形レシーバーだったといえる。
ベレッタPMXは久々に登場した円筒形レシーバーサブマシンガンであり、それゆえノスタルジックなテイストだと感じるわけだ。誤解しないで頂きたいが、これは悪い意味ではない。むしろサブマシンガンらしくて好感が持てる。
正直な話、現在の銃器市場は似たような銃がとても多い。機能性能を突き詰めれば、同じような形に辿り着き、その結果として、どれも似た格好の銃になる。そのことをはっきりと認識した上でもなお、個性的な銃に魅力を感じるのだ。その意味で、PMXが登場した時、ちょっと個性的な銃が出てきたと感じて嬉しかった。
以上が実銃のベレッタPMXに関する情報だ。
ではKSCのPMXをじっくりと見てみよう。