2025年4月号

2025/02/27

タナカ U.S.M9ピストル エボリューション2 HW モデルガン

タナカは92SB-Fハリウッドバージョンに続き、軍用M9をエボリューション2 HW仕様でモデルガン化する。今回のアップグレードに伴い、細部を徹底的にリファイン、リアルな軍用M9刻印を再現するなど、かなりのこだわりをこの製品に詰め込んだ。

 

 1978年頃、アメリカ空軍が新型ハンドガンの採用を検討開始した。それがJSSAP(Joint Service Small Arms Program:連合制式小火器開発プログラム)となり、その後にアメリカ全軍のサービスピストル更新計画XM9トライアルに発展する。紆余曲折の末、これが決着してベレッタ92SB-FがM9に選定されたのが1985年1月14日だ。この足掛け8年に及ぶ選定において、ベレッタはずっと優位なポジションをキープし続ける。最後の1年、新たに登場したSIG SAUER P226に追い上げられ、土壇場で逆転されそうになりながらも、踏みとどまって栄冠を勝ち取ったことは、その後のベレッタ、そしてグループであるベレッタホールディングの発展に大きく寄与した。
 しかし1987年9月、創設されたばかりのアメリカ海軍特殊戦コマンド(United States Naval Special Warfare Command)で、M9のスライドの破断事件が発生、これがその後も続き、さらに陸軍のテストラボでもスライドの亀裂が見つかったことで、M9の信頼性は大きく揺らいでいく。最終的にこのトラブルは強装弾が継続的に使用されたことと、スライド製造過程の熱処理が不適切であったことなどが複合的に重なり合って起こったという結論に達した。その後の1988年に実施されたXM10トライアルでもM9が最高得点を獲得、継続使用が決まったことで、M9の時代は続いた。
 だがこのスライド破断事故は、ベレッタ92FおよびM9に対する信頼性に大きな影を落としたことは否定できない。1989年にベレッタは92Fを小改良し、万一スライドが破断しても、スライド後部が後方に吹き飛ばないようにした92FSを発表、アメリカ軍のM9にもこの改良が施された。また1994年にはスライドの脆弱部分だといわれたロッキングリセス部を補強したBrigadier(ブリガディア)を市場投入している。既存の92FSはそのまま販売を継続し、アメリカ軍のM9もそのままであったので、ブリガディアスライドの採用はmustではなく、より強化された92を求めるユーザーに向けた選択肢ではあったが、当時は92系のスライドが破損しやすいという印象が広く知れ渡っていたことを裏付けるものだといえるだろう。
 自分の手元に、31年前の1994年にイタリアのベレッタが発行した50ページ程の民間市場向け総合カタログ“Beretta Around the World”がある。当時、アメリカに出張した際、カリフォルニアのガンショップに立ち寄って、そこで貰ってきたものだ。イタリアで製作されたカタログなので、アメリカ市場には無い9×21mm IMI仕様の98や、.41AE仕様の8000クーガーなどが載っていて非常に興味深い。カタログの半分以上はベレッタショットガンが占めていて、ベレッタというメーカーは本来ショットガンを主軸にしてきたメーカーであることがわかる。
 その中に2ページ見開きで、92FSについて語る部分がある。それを要約すると、
“ベレッタのセミオートマチックピストルは、アメリカ全軍、イタリア軍、フランス軍、さらにラテンアメリカや中東の軍や治安部隊で採用され、さらに北米だけでも1,600を超える法執行機関が採用している。アメリカ軍のテストでは1挺のピストルから30,000発が発射され、トラブルは発生しなかった。近年のテストではランダムに選択された数挺のピストルから合計168,000発を発射し、ここでもトラブルを起こしていない。92Fは歴史上もっともテストされた個人防衛用兵器であることは疑いようがない。そこで培った信頼性はベレッタピストルのすべてに反映されている”
 これは、ベレッタとして自社製品の信頼性を強調し、悪いイメージを払拭しようとしているわけだ。

これがその1994年のカタログ。表紙と当該ページ。イタリア本国で製作されたカタログで、ベレッタといえば、ショットガンという認識が世界的に強かったので、表紙はハンティングのイメージだ。現在でもベレッタの世界市場における主力製品はショットガンであることに変わりはない。


 その努力の結果、 M9は2017年1月17日にSIG SAUER P320が後継のM17, M18として選定されるまでの32年間、アメリカ軍のサービスピストルの座を守り切った。初期段階における不具合もその後の改良で克服、1990年代以降は大きなトラブルを起こしていない上に、湾岸戦争とアフガニスタンとイラクでの対テロ戦争でも使われ続けた。これによりM9と92FSはハンドガン史に大きな足跡を残したマスターピースのひとつに数えられている。
 タナカは92SB-Fハリウッドバージョンに続き、軍用M9をEvolution 2 HWとしてモデルガン化する。Evolution 2アップグレードに伴う旧モデルからの主な改良箇所は、以下の通り。
・衝撃吸収バッファーパーツの追加
・プレス部品に対する防錆・潤滑処理
・グリップスクリュー位置修正
・グリップウエイトの追加
・リアサイト金属別体化
・エキストラクター形状変更
・グリップ、バレルにもヘビーウエイト樹脂採用
 その他、微細な変更を含めるとトータルで約20カ所に及ぶ大幅なアップグレードが施されている。スライドの刻印は1989年以降のアメリカ製を再現した。
そんな改良を施したタナカM9 Evolution 2 HWは、92系として最高のモデルガンに進化したといえるだろう。

 

左:ハンマーにある9346463  65490はパーツナンバーとCAGEコードだ。CAGE (Commercial And Government Entity:商用および政府機関) コードとはアメリカ政府が企業に与える番号で、D-U-N-Sナンバー登録後に割り与えられる。D-U-N-S(ダンズ)ナンバーは、The Data Universal Numbering Systemの略で9桁の企業識別コードだ。全世界の企業を統一基準でコード化し、現在、世界の5億件超の企業にDUNSナンバーが付与されている。これによって企業の識別や実在性の確認が容易になり、世界各国の政府・国際機関や事業会社が運営する様々なプログラムで活用されている。
右:問題となったロッキングリセス部。このスライドが薄くなった部分に亀裂が入った。最終的に熱処理を適切におこなうことで、強度的な問題はないという結論に至っている。

 

それでも万一のスライド破断に対処すべく、ベレッタは対策を講じた。中央に見えるパーツが新設のラージハンマーピンヘッドで、これがスライドに設けられた細い溝に噛み合っている。スライドが破断してロッキングリセス部から後ろの部分が後方に飛び出しそうになった時、このラージハンマーピンがスライドを強制的に脱線させ、スライドの後方への動きを止めてくれるというわけだ。

 

軍用M9の刻印。65490はベレッタUSAのCAGEコードだ。その後にある楕円で囲ったPBマークは、市販型92FSにも打刻されているが、もう少しデザイン性がある。一方、軍用はシンプルだ。フレームにあるシリアルナンバーはシンプルな7桁で、民間市場向けM9は、シリアルナンバーの前に“M9-”の文字が加えられている。

 

スライド右側面のアセンブリーナンバー9346487-85490の横に打たれた“PM”刻印は、高圧なプルーフカートリッジによる耐久性テストとMagnetic Particle Inspection (磁性粒子検査MPI)と呼ばれる磁場を用いたパーツの非破壊検査に合格したことを示すものだ。

 

 

タナカ U.S.M9ピストル エボリューション2 HW


全長:216mm
重量:約850g(カートなし)
装弾数:15発
主要材質:HW樹脂+亜鉛ダイキャスト
仕様:5mmキャップ火薬使用発火式モデルガン
9mm快音Evolution 2発火カートリッジ 5発付属
価格:¥50,380(税込)
付属品 9mm快音Evolution.2発火カートリッジ 5発付
3月中旬発売予定
お問い合わせ先:タナカ

 

※記事中の価格表記は掲載時点でのものであり、特に記載のない限り税込みです。また、物価や製造コストの上昇、為替レートの変動により記事中に記載の仕様、価格は予告なく変更される場合があります。あらかじめご了承ください。

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

 

RELATED ARTICLE 関連記事