2025/08/26
KELTEC KSG

Gun Professionals 2014年5月号に掲載
ブルパップデザインにこだわるKEL TECが市場に送り出したショットガンはデュアルマガジン・セレクトフィード機能を持つポンプアクションモデルだ。装弾数の限界に挑戦しながらコンパクトにまとめたKSGだが、このモデルには公的機関向けとして、さらにコンパクトにしたショートバレル仕様がある。


ロックお勧めのKSG
2014年3月号のコルトM45A1特集でお世話になった映画TV業界における銃器スペシャリスト、ロック・ガロッティから記事の題材として勧められたのがKSGだった。
「次はケルテックのKSGなんて面白いぞ! リストリクテッドモデルも含めて4挺あるんだ」という話だった。リストリクテッドモデルとは、簡単にいえば一般市販できないモデルのことだ。
通常のKSGは法的に市販可能なギリギリまでサイズまで小型化してはいるが普通に購入可能なものだ。ところが18インチ銃身以下、全長26インチ以下の短いモデルとなってくるとNFA(ナショナル・ファイアームズ・アクト)の定めるSBS(ショート・バレルド・ショットガン)に該当するため、ATFに許可を申請し、200ドルの税金を納めるなど、所持までの道のりは険しくなり、特に規制の厳しいカリフォルニア州の場合は特別な理由が無ければ所持できないと考えていい。
エンタメ業界のアーモラー、ウェポン・スペシャリスト、テクニカル・アドバイザーとして数々の仕事をこなすロックのような立場でないとそういったモデルの所持は難しいが、ロックが付き添ってくれるのならば取材が可能になる。
SBSに該当する小型のKSGは、ケルテックも公的機関を対象に販売リストに載せているだけで公然と売っているわけではなく、ロックの場合はケルテックと親しい間柄であることから容易に入手できたという。
SBSという呼び方もいいけど、やっぱりソードオフ・ショットガン(Sawed-off shotgun)の方がカッコイイなあ~とか、どうでもいい事を感じつつ、今回の取材が始まった。
ケルテック
1991年、フロリダ州ココアにケルテック(Kel-Tec CNC Industries. Inc.)が設立された。創設者であるジョージ・ケルグレンはスウェーデン人の技師で、ケルテック設立以前にも母国で銃器設計に携わっており、イントラテック社のテック9(Tec-9)やグレンデルP-10の設計者としても知られている。
ケルテックは当初、CNCによる金属加工を業務としていたが、銃器製造に乗り出したのは1995年からであった。
低価格のモデルの製造・販売で業績を伸ばし工場の規模を拡大し、広大な敷地に加工、組み立て、修理部門(100ヤードの室内試射場を完備)を持ち、少し前に資材倉庫も拡張するほどケルテックは成長していった。
現在ハンドガンの販売実績では全米トップ5に入る規模を誇るメーカーにまで成長したと豪語している。
同社の第1号製品がグレンデルP-10(口径380ACP)のデザインの流れを汲むP-11(9mm×19)で、金属製ハウジング内にトリガーメカを内蔵しポリマーフレームと組み合わせたモデルであった。低価格を強みに安定した人気を誇り現在も製造が続くベストセラーの一つだ。
それ以降も.32ACPでブローニング・タイプのショートリコイル方式を採用したP-32、.380ACP のP-3AT、.40S&WのP-40(製造中止)、シングルスタックマガジンを採用した薄型のPF-9(9mm×19)などセンターファイア弾のハンドガンを充実させた。どれも製造しやすい設計とポリマーフレームを活かして希望小売り価格を300ドル台に抑えているのが特徴だ。
リムファイアでは22WMRで30連マガジンを組み合わせたPMR-30やカービンをピストル化したPLR-22も発売している(5.56mm×45版のPLR-16もある)。
そしてライフルでも独自の発想で様々なモデルを設計し、ケルテックが持つユニークさをアピールすることに成功している。90年代に銃身を上方に回転させて折り畳みが可能なSUB-9を設計し、その主要パーツをポリマー化したSUB-2000へと発展させて現在に至っている。
その折り畳み式のアイデアを引継ぎながら5.56mm×45へと発展させてガス作動方式を取り入れたSU-16シリーズを開発。AR15系マガジンがそのまま使用可能なことも人気の理由となり数種のバリエーションを現在も発売中だ。のちに22LR化したSU-22も追加した。
独自のことをやってのけ、それでいて一定の評価を得てしまうチャレンジャーなケルテックのファンも少なくない。オリジナリティの追求は成功を得る早道だがリスクは高い。アイデアに溺れないところは社長でありエンジニアでもある経営者のバランス感覚が優れているからだろう。
ケルテックは低価格製品で成功を勝ち取ったメーカーではあったが、そこから脱皮しよう挑戦したのが2007年に開発発表したRFBだ。RFBはRifle, Forward-ejection, Bullpupの略で、フォワード・エジェクション…つまりFN F2000のように空ケースが銃身の上にあるチューブを伝って前方にエジェクトされるという、これまたケルテックが好きそうな奇抜な発想のライフルであった。
RFBがケルテックのブルパップ・デザインへの探究心を加速したといえる。実際にRFBの開発母体となったモデルは90年代から研究が進められていたが数々の理由で計画は中断され、構想から製品化に至るまでかなりの時間を要した。
機関部を後方のストック内におさめることで長い銃身長を維持しながら全長を大幅に短縮できるブルパップには可能性が大いにある。ケースレス弾が主流になるであろう…相当先の未来世界ではブルパップだらけだろう。
ブルパップの最大の弱点はエジェクション方向を瞬時に切り替えられないため、右利きに設定(右側から飛び出す)にすると何らかの理由で左手で持ち替えた場合、安全に射撃が出来ないところにある。
FN P90のように特殊構造のマガジンを上方に配置して空ケースを下にエジェクトさせる方法も一つの解決法だが問題も同居している。RFBはFN F2000が先に製品化に成功した前方にエジェクトさせるという発想を独自の設計で形にしたものだ。
ケルテックとしてはFN F2000のスポーター版のFS2000が既に発売されていた状況で同じようなものを売り込む気はなかったが、勝算はあった。FS2000の口径は5.56mm NATOしかないので7.62mm×51のRFBはF2000とはバッティングしない。
RFBはその辺にゴロゴロしているFALのマガジンが使用可能でエジェクション方式以外は実に堅実にデザインを煮詰めている。操作系はアンビ(両面)でオペレーティングハンドルはどちら側にも取り付け可能という仕様でアイデアはよく練られていたものの、製品化にはかなりの時間がかかった。
そしてケルテックのブルパップへの探究心は次のステージへと進んだ。


