2025/06/29
【NEW】WATCHTOWER Firearms PewView Apache
Text by Terry Yano, Photos by Terry & Yoshi Yano
Special thanks to Chris Ecclesine
老舗の銃器メーカーが有名プロシューターとコラボし、特別仕様を発売することは珍しいことではなかった。インターネットやSNSがテレビや雑誌といった媒体に取って代わりつつある近年、SNSで銃器関連の情報を発信している著名インフルエンサーの意見を反映させてデザインしたハンドガンが、新興銃器メーカーから誕生している。
ウォッチタワーファイアアームズ
年季の入った銃器ファンであったとしても、ウォッチタワーファイアアームズ(WATCHTOWER Firearms)という会社名は聞いたこともないという方もおられるだろう。かくいう私も、比較的最近まで、同社のことを知らなかった。しかし、近年は知る人ぞ知る存在となっており、SHOT SHOW 2025で新製品をアピールしている様子はYouTube動画でも確認できる。Gun Pro WebでもHiro Sogaさんが「ワッチタワー ファイアアームズ」の名で紹介していた。
秋田さんと松尾Web Editorのチームも同社ブースを取材したそうだが、Sogaさんのレポートとだぶってしまうため、記事には含めなかったとのこと。以下の写真3点とキャプションは、松尾Web Editorが補足として用意してくださったものだ。
GP Web Editor 補足 “SHOT SHOW 2025でのウォッチタワーファイアアームズ”
▲SHOT SHOW 2025でのWATCHTOWER Firearmsブース全景。最終日なのであまり来場者は写っていないが、同社のブースは注目を集めていて、3日目まではかなりにぎわっていたらしい。
今年、ウォッチタワーファイアアームズはダブルスタック1911、M4 & AR-10系ライフルに他、Bridgerと呼ばれる新しいボルトアクションライフルを展示していた。これは複雑な形状に削り出されたステンレススティールのバレルコアに、チタン合金のスリーブを被せた、まったく新しいLRA Precision Ti-Strikeバレルを採用したものだ。
▲写真はウォッチタワーファイアアームズのDemolitia。このダブルスタック1911は、2011年から2025年まで活動し、約1,100万人もの登録者数を誇ったYouTubeチャンネル“Demolition Ranch”(デモリッションランチ)とのコラボレーションによる製品だ。同チェンネルを運営してきたYou Tuber のMatt Carriker(マット・キャリカー)は、今年1月28日に引退を発表している。
Demolitia(デモリシア)とは、Demolition Ranchのコミュニティの名称だ。
ウォッチタワーファイアアームズのDemolitiaは、この記事で紹介している、アパッチと同じ同社のダブルスタック191バリエーションで、フルレングス ポーテッドバレルを特徴としている。
口径:9×19mm
全長:221mm
バレル長:5インチ
重量:1,179g
マガジン装弾数:10/17/20
Photos by Yasunari Akita
以上 “SHOT SHOW 2025のウォッチタワーファイアアームズ” by GP Web editor 。
残念ながら、私が取材に行くNRA年次展示会にはウォッチタワーは出展していなかった。その製品はアベレージな銃砲店で陳列されるほど流通しておらず、庶民が買えないような価格ということもあって、一般ユーザーが製品を手にすることはもちろん、目にする機会すら恵まれないであろう。そのため、積極的に情報収集をしていないとその存在に気が付かないかもしれない。とはいえ、銃器ライターであれば言い逃れはできないので、ただただ申し訳なく思う。
閑話休題、テキサス州スプリング(Spring)に本社をもつウォッチタワーファイアアームズは、2022年にジェイソン・コロスキー氏によって設立された。彼は米海兵隊の武装偵察部隊員としての経験に加え、国家保安に関係する大学の学位をもち、国防産業であるレイセオン(Raytheon)ではシニアエグゼクティブとして勤務した経歴をもつ。
英語の“watchtower”は望楼(ぼうろう、遠くを見渡すためのやぐら)を意味するが、この会社名の由来となったのは第二次世界大戦中における対日反攻作戦の名称で、米軍統合参謀本部が1942年7月2日に発令した“Operation Watchtower”(オペレーョン ウォッチタワー)だ。ソロモン諸島の制空権を拡張すべく、ガタルカナル島で建設が進められていた日本軍の飛行場は、8月5日には滑走路の第1期工事が完了したが、8月7日早朝に同島に上陸した米海兵隊によって奪取された。ガタルカナル島を巡る日米両軍の戦いは1943年2月まで続けられたが、そこで戦った米兵たちを称えて“Watchtower”という言葉を社名に採用したとのこと。
ウォッチタワーファイアアームズは2023年にF1(エフワン)ファイアアームズを買収するなど規模を拡大していったが、2024年に業績が悪化し、2025年2月に米国連邦破産法の第11条(チャプターイレブン)による再建型の倒産手続きを申請するにいたった。
現在も事業は続けられているようで、同社のウェブサイトにはARスタイルの5.56mmライフルであるスペックオプス タイプ15系と7.62mmライフルのタイプ10系、9mmラージフォーマットピストルのタイプ5M、そして本記事で紹介するようなダブルスタックの1911系ハンドガンが製品ラインナップとして紹介されている。また、近日登場というフレーズと共に7mm PRCのハンティング用ボルトアクションライフルの“Bridger”や、チタン合金製で300ノーママグナムにまで対応した.30口径用サイレンサーである“Jedburgh”もリストアップされているが、再建中の同社にそういった新製品を発売できる余裕があるかどうかは気になるところだ。
インターネット上には、ウォッチタワーファイアアームズの従業員だという人物の投稿があり、内情の暴露ともいえる内容には驚かされたが、真偽の裏付けが取れないのでここで詳しく書くことは控えておこう。


ピュービューアパッチ
今日、ハンドガン市場の主流はポリマーフレームのストライカー撃発方式9mm自動拳銃で、多くのメーカーによる様々な製品であふれかえっているが、1911スタイルの拳銃も廃れておらず、特に9mmのダブルスタック1911の人気は再燃しているともいえる状況だ。手頃な価格の製品もあれば、何千ドルもする高価なものもあり、ウォッチタワーのアパッチは後者に該当する。

リアサイト付きのオプティックプレートを介してスライド後部上面に装着されている小型ダットサイトは、トリジコン社のRMR(Ruggedized Miniature Reflex Sight)だ。
口径は9×19mmでコンペンセイター付きの銃身長は4.6インチ、17連の標準マガジンを装着した状態の未装填重量(実測値)は1,178gで、トリガープル(デジタルゲージの5回平均)は2.2kgであった。

右:故障や電池切れでダットサイトが使用できなくなる可能性を考慮すれば、レンズ越しにアイアンサイトを使用できる(コウウイットネスできる)のは心強い。
メインスプリングハウジングは別部品だが、グリップモジュールと一体感のあるラインで構成されている。下端にはマグウェルが装着されているが、その全幅は控えめだ。


マガジンキャッチはそれなりに突き出しているが、競技用に見られるような大きなものではない。
コマンダーサイズのスライドは416Rステンレススティールからの削り出し、クラーク/パラオードナンススタイルのフィーディングランプをもつ4.6インチ銃身も416Rステンレススティールからの削り出しで、その先端に装着されたコンペンセイターはリターントゥゼロ(Return to Zero)というキャッチフレーズに恥じない効果を目指して開発された専用形状とのこと。
スティール製のパーツにはウォッチタワーが誇るPVD(Physical Vapor Deposition、物理蒸着成膜)コーティングが施されており、強固かつ滑らかな被膜によってスムーズな作動が約束されている。見た目もよく、スライド操作時の感触は感動すら覚えるほどの滑らかさであるが、一方で滑りやすいことも否めず、個人的にはコッキンググルーブの滑り止め効果が不十分に思えるほどであった。
ピュービューアパッチのカラーはグラファイトの本体にカッパーカラーのパーツを組み合わせたもの一択であったが、現行アパッチではそれに加えてグラファイトの本体にブラックのパーツを組み合わせたものの2種類が用意されている。
今回借用した銃には、既にトリジコンのRMRが装着されていたが、購入時にはリアサイトが備わっていたようだ。もちろん、小型ダットサイト装着用のオプティックプレート(トリジコンのRMRかSRO、ホロサン507Cのいずれか)も用意されている。