2025/05/06
UNITED STATES PROPERTY No.4 MODEL OF 1911 U.S. ARMY
Turk Takano
Gun Professionals 2014年12月号に掲載

米国人にとっての.45ガバメントは特別なピストルだ。
コルトSAA(コルトシングルアクションアーミー)にも同じようなことが言えないこともないが、そのスケールは大違いだ。.45ガバメントは1911年から1985年の長期間にわたり米5軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊)の制式サイドアームだった。1985年、M9に更新されたが、.45ガバメントはあっさり9mmに押しやられたわけではなかった。.45ガバメントはその後、改良モデルが部分的に再制式される形で蘇り、21世紀に入っても新たな進化を遂げている。
銃器が好きとか嫌いとかにかかわらず、兵隊経験者なら.45ガバメントにまつわる何らかの思い出があるにちがいない。特に戦場で携行したとなればなおさらだ。第二次大戦終了と共にUNITED STATES PROPERTY .45 ガバメントモデル(軍用モデル)の製造は終了した。そして中古市場でこれら正真正銘の米軍サイドアームは高値を呼んでいる。筆者も1945年コルト製を所持しているが、現在でも製造されているコマーシャル.45ガバメントとは一味も二味も違う渋さを感じる。米軍納入モデルはある種のクールさが漂うのだ。
MODEL OF 1911 U.S.ARMYのコレクションを始めるとどうしても第一次大戦前のモデルが気になる。価格は張るが信じられない程度良好モデルが時折、売りに出されている。
.45ガバメント登場初期である1911‐1913年の製品は別次元のものだといえる。シリアル#が一桁となると.45ガバメントファンにとってはまさに神器だ。初期の仕上げは古き時代のブルーイングだった。初期モデルのUNITED STATES PROPERTY のフォントも違っていたというが、資料で読んだぐらいで現物にお目にかかるチャンスはなかった。一桁モデルがいったいどこに現存するのか、それが明らかになっているものは少ない。しかし、以前のリポートでも述べた通り現在、新たな世代交代もあり信じられないモデルが骨董銃砲店に現れることがある。
今回ばかりは運がよかった。ジャクソンアーモリー近郊にドイツレストランがあると8月号のレポートで述べた。ランチで足を伸ばし、ついでなのでジャクソンアーモリーに寄った。そこで見たのはなんと米政府納入の正真正銘.45ガバメントNo.4だった。
話は24年前に遡るが、筆者もこの目で.45ガバメントのNo.1はコネチカット州ハートフォードの博物館でみた。“コルトのすべて”で写真も撮った。スライドストップの内側のフレームにNo.1と打たれており、組み上げた時、シリアルナンバーは見えない。この時、量産モデルの第一号だと…コルト研究者の博物館管理責任者が語っていた。
かなり後になって知ったのだが、このモデルは最終プロトタイプ限定シリアルナンバー1ということだ。これはジャクション・アーモリーのコルト銃器に詳しいランディも言っていた。別冊“コルトのすべて”のNo.1モデルにUNITED STATES PROPERTYの文字は入っていない。

“ターク見てみるかい”ランディから手渡されたのは.45ガバメントNo.4だった。仕上げが当時のコマーシャルモデルと同じでグレードが高い。確かにフォントも異なっていた。
値段は? ランデイいわく“3万ドルだよ。しかしもう買い手がついて支払われたんで…、残念だったな!”筆者には高嶺の花であることは彼は百も承知だ。言葉にはしなかったが「花を持たせてくれて、ありがとう」だ。少なくとも周囲の受けはいい…(苦笑)
「残念も何も拝ませてもらうだけで十分、恐れ多くて所持できない…」
これが言葉として出た返答だった。手にとって見れる機会など再びあるだろか?その場にいた人達は皆、目の保養をさせてもらったわけだ。骨董品の価格はあってないようなものである。ブルーブック(骨董銃/中古銃の価格査定本)の価格も根拠不明のところがある。100年前のもの…、一桁の4番、程度良好となれば3万ドルは安い買い物だ。
「何を根拠に…安いといえるのか?」
そういわれると返答に窮するが…、なんとなく納得いく値段…、5万ドルでも同じお客が買ったはずだ。3万ドルで購入したということはこのモデルの道しるべを作ったようなもの。骨董品でもこのクラスになれば価格は売り手がつけるものだ。相手が値切ってきたら…“他の誰かが買いますから”と断れば良い。いずれ買い手が現れる。これが骨董の世界だ。
購入者は.45ガバメント大好きのシニアだったが投資として考えても悪くない。証券会社にマネーを預けても5‐6%の年利が安全圏内のトップ、8%となるとかなりのリスクが伴う。.45ガバメントのこのクラスなら年利は間違いなく5%以上、.45ガバメントを見て楽しみながら利子が稼げるなんてこんな良い話はないではないか?例え3万ドルで売っても所持した楽しみは永遠に残る。1916年製シリアルナンバー13万台ぐらいになると、この写真のモデルで1万5000ドルである。しかしだ、10年先なら間違いなく2万ドルを超えるはずだ。フォントや仕上げは初期のNo.4と比較するとかなりの違いがある。
筆者がNo.4を見るのは筆者にとってこれが最初で最後になるだろう。所有者が売却のためにジャクションアーモリーに持ち込むことはあっても、即売となり筆者の目に触れることはまずないからだ。もっとも将来、別の一桁モデルを目にする可能性があるかもしれない。しかしきわめてスリムなチャンスといえそうだ。ジャクソンアーモリーも“一桁は初めてだった”ということだ。お客で混み合っていた関係もあり三脚が使えず、自然光でしかも増感、手持ち撮影だったのでこんな写真になってしまった。もっときれいに撮りたかったが御勘弁願いたい。
Turk

Text & Photos by Turk Takano
Gun Professionals 2014年12月号に掲載
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