2025/05/18
SALIENT STYLE SALIENT ARMS INTERNATIONAL Part1
SALIENT STYLE
SALIENT ARMS INTERNATIONAL
Text & Photos by Hiro Soga
Gun Professionals 2015年8月号に掲載
ラディカルな外観のグロックで、一躍有名になった感のあるセイリエントアームズ社。
ネヴァダ州ラスベガスに移転し、ガン製造会社として生まれ変わった。新生セイリエントが創り出す製品をご覧いただきたい。
2025年5月 GP Web Editor追記:このレポートはセイリエントアームズ(SAI)が急成長を遂げていた2010年代半ばに掲載されたものです。その後、SAIのカスタムガンに対する評価は必ずしも芳しいものばかりではなくなり、2017年にはSAIが倒産したという話が広がりました。しかし、これは誤報で、実際に倒産したのはかつてSAIの母体であったSalient Security Service Inc.で、この時点ではSAIは別会社となっていました。とはいえ、その後のSAIはかつての勢いが消え、ほとんど忘れられた存在になってしまったのです。ところが最近、Dynamic Innovations GroupがSAIを買収、ガンマニュファクチャーとしてSAIの名で再始動するという兆しが出ています。
セイリエントアームズ
何かと話題の多い会社である。
まずは、2012年頃、あのカリスマインストラクターであるクリス・コスタ(Chris Costa)氏が、マイクロダットサイトをスライドに直載せしたセイリエントのグロックを訓練に使い、大いに話題を呼んだ。2015年現在もクリスは、グロックとショットガンに関しては、セイリエント製を使っており、大きな影響を与え続けている。
当初、スライドに開けられた軽量化の穴が話題になり、タクティカル派のシューターから、「強度を下げ、異物の混入を招く穴を開けるなど、冗談じゃない!」と喧々諤々とやり合っていたのが昔話のような気がする。特別、穴を開けなければならないわけでもないので、お嫌いな方は違うモデルを選ぶだけの話ではなかろうか。
SALIENT 2011 Caliber:9mm

ライブファイアテスト 2011
このダブルカラアムモデルは、現時点ではバースト社製のフレームを使っているが、これも近々SAIブランドに統一される。口径は、セイリエント社長エイドリアン・チャヴェス(Adrian Chavez)のコンセプトで、スタンダードが9mm口径となる。 「今時の高性能弾頭を使えるのだから、147grのホローポイントで21連発。これで決まりだろう。まあ、リクエストがあれば他の口径も作るが、かなり待ってもらうことになるだろうね」このガンの撃ち心地は、まさに夢のようだった。マイルドかつシルキーなのだ。 これら1911プラットフォームのカスタムは、セイリエントのメインガンスミスであるロブが大得意とするところなので、全く問題ない。特筆できるのは、グリップまわりのリシェイプで、トリガーガード下部が大きくえぐられ、グリップセイフティ周りも極限まで薄くされている点だ。これは良い。 |




どうしてああいうガンが出来たのか、そのあたりをセイリエントの社長である、エイドリアン・チャヴェス(Adrian Chavez)氏にインタビューしてみた。
「そうだね。私がセイリエントガンのアイディアを持ち始めたのは、4年ほど前の話になる。当時、私はVIPセキュリティーの会社を持っていたんだ。事業はうまくいっていたし、大きなクライアント(依頼主)もたくさん付いていた。私自身も、あのミック・ジャガーのボディガードとして、日本に行ったことがあるんだよ。
ともあれ、我々はマーシャルアートに精通している必要もあったし、クライアントのためにシューターとして一定以上の技術とタクティクスを持っている必要があった。私がキャリーしていたのは、グロック19だったのだが、そのリライアビリティー(信頼性)には満足していたが、どうしてもしっくりとこないところがあった。それが、トリガープルとリセット、そしてもっとリカバリーショットを速く撃つことが出来ないか、という点だったんだ。
そこで、何かアフターマーケットの良いパーツがないか、もしくはグロックをカスタムしてくれるガンスミスがいないか探し始めた。うまくはいかなかったね。皆、グロックはツールだから、あれでいいと言うんだな。それで仕方なく、じゃあ自分でやろうと思ったんだ。初めは自分達だけのために、いい仕事をするために、クオリティの高いツールが必要だった。だから、セキュリティ会社の一部として、工作機械が使えるマシーニスト(作業者)を雇い、まずはトリガープル/リセットのカスタムから始めたんだ。
そして次はマイクロダットサイトをスライドに直付けするのをやってみた。私のライフルには、常にエイムポイントを載せていて、光の状況に関係なく大きな効果があることがわかっていた。ところが、誰もがそんなことをしても、サイトが壊れるだけで利用価値はないというんだ。確かに当時まともなマイクロダットサイトは“ドクターサイト”と呼ばれるものがあったぐらいで、確かにスライドに載せてしばらくすると内部の接点がおかしくなる。周りは、それ見たことかと笑っていたが、私はエンジニアに、新品のドクターの内部を、振動しないようにエポキシで固めてしまうよう頼んでみたんだ。これで、最低でも数万発のショックに耐えられるというのがわかった。
また、リカバリーショットをより速くするには、スライドを軽量化すると効果があることがわかってきた。リコイルがきつくなるというシューターもいるが、きつくなるのではなく、種類が変わるんだ。ちゃんとしたホールドをして、ダットサイトの動きを見ていると判る。軽くしたスライドでは、発射時の後退スピードが速くなるので、リコイルはシャープになる。だがダットを良くみていると、ターゲットへの戻りが明らかに速くなるんだ。つまり2発目以降を正確に、より速く撃てるということになる。
シューティングの世界は、頭の固い人が多いからね。新しいモノや仕組みにはついてこようとしない人がたくさんいるんだね。
トリガープルに関しては、それほど難しくはなかったな。私の目標は、出来るだけ1911のトリガープルに近づけること。それだけだった。トリガーのシステムをよく理解すれば何とかなる次元の話なんだ。足りないものは作る、その意識が必要なだけだった」
これで、エイドリアンが理想とするグロック19が出来上がった。フロントのセレーションも入れた。自分の会社のワーカーのためにこのカスタムグロックを作り始めると、周りの友人やら、知り合いという人達から、あのグロックを作って欲しいというリクエストがたくさん入り始めたのだ。
「一番大きな影響があったのは、やはりあのクリス・コスタが、我々のグロックを気に入って使い始めたことだろうね。それで、次のカリフォルニアでのクラスがあったときに、私も会いにいったんだ。3年ほど前のことだね。クリスは私が持っていったグロックと、ベネリのショットガンも気に入ったようだった。以来彼との良い関係は今も続いているよ」
SALIENT 1911 Caliber:.45ACP

ライブファイアテスト 1911
今回試射することができたのは、コマンダースライドにフルサイズのフレームを組み合わせた.45オートモデルである。フレームにはセイリエントのロゴが入り、シリアルナンバーもSAIで始まる独自のものだ。このマグファンネルを見る限り、製造会社はわかるが、それはたいした問題ではなく、むしろ歓迎するべきであろう。第一印象は、そのカスタムフィーリングである。スライドプルはあくまでもスムーズだし、バレルのガタも全くない。精度チェックはしなかったが、する必要もないフィールである。スライドのショルダーは、「これでもか!」とばかりに削り落とされており、これまた軽量化に貢献している。出来のいいフルカスタムコマンダーに仕上がっている。 |



