2025/05/06
NORINCO M1911A1 Wyts Combat Custom
ノリンコ コンバットカスタム
NORINCO M1911A1
Wyts Combat Custom
Photo & Report:櫻井朋成
Gun Professionals 2014年12月号に掲載
今では世界中で製造されているM1911Aだが、中国ノリンコ製だと聞くと、ちょっと不安を覚える。事実、ノリンコM1911A1は粗雑な作りだ。しかしベルギー警察と国家憲兵隊のガンスミス、パトリック氏は、そんなノリンコ製M1911A1を現代的かつ高品質なカスタム45Autoに作り直した。
北方工業公司(China North Industries Group Corporation)、略してノリンコ(NORINCO)は装甲車両やミサイル、ロケットなどを製造する中国の兵器メーカーだ。小火器部門は独自開発品に加えて、AKをはじめとするロシア製火器のコピー、さらには西側の小火器のコピーも盛んにおこなっている。近年、テロリストがM4系の銃を使用しているのをニュース映像などでも見かけるようになったのは、ノリンコが供給元ではないかといわれている。
近年、ノリンコは西側諸国に対して強力に自社製品をアピールするようになった。ヨーロッパで行なわれるセキュリティーショーでも大きなブースを設置、積極的な売り込みが見られる上に、民間マーケットに向けての展開も行なわれている。ドイツのFrankonia(フランコニア)が1988年にディストリビューター契約を交わした。
今年(2014年)のIWAではこのフランコニアが本国ノリンコとは別の独自ブースを用意、一般市場に強くアピールした。筆者の住むフランスでも銃刀法が改正され、軍用銃が以前よりも容易に所持できるようになったことから、ロシア製をはじめとする東側の銃が多く出回り始めた。なにしろ価格が安い。ノリンコのようにコピー品であっても、それなりの性能とそれに見合った価格の安さがあれば、需要は拡大するということだ。中国製コピー品は粗悪品のイメージが強く、市場で嫌われがちだが、その出来次第では西側の高価なクローンを脅かしかねない。

今回取り上げるのはノリンコ製ガバメント モデル1911A1で、名称もそのまま1911A1である。通称ノリンコ45だ。現在ヨーロッパではこのノリンコガバメントがドイツのディストリビューターを通して展開中だ。人気の高いモデルが、低価格で販売されれば、当然、売れる。ベルギーの最大の銃砲店コルネーでも取り扱いを開始した。
よくできたモデルだが、やはり中国製。大雑把というか仕上げが粗く、“ 安かろう悪かろう”の域を出ていない。それではつまらないと長年ベルギー警察、国家憲兵隊でガンスミスを務めてきたパトリック氏が手を加えた。仕上げ直し、細部までしっかりとカスタムし、またサイトなどを最新のものにすることで、“使える銃”になるのだ。

実際にノリンコのオリジナルは手に持って振ると、カタカタと音がする何とも雑な作りだ。スライドを引くときの感触は、スムーズな動きとは180°逆のギシギシ感がある。作動部にオイルやグリスをべっとり塗っても変わらない。ところが撃ってみると、なかなかどうして良く当たるし、作動性もそれなりに良いという。
それならば…、とパトリック氏は試しに手を加えてみた。まずはガタをなくすフィッティング。この作業でフレームも、スライドもかなり硬質であることを感じたという。そして、ビーバーテイルやコンバットサイトを取り付ける際、スライドやフレームを加工するのだが、削り始めてその感覚はやはり正しかったことが判った。実際に硬いのだ。彼が手がけた1911系は数知れないが、このノリンコが一番硬かったという。素材は悪くない。しっかりとしたフィッティングを施し、最新のサードパーティのパーツに交換すれば、性能的には各社から出ているカスタムモデルと肩を並べられる性能を持たせられる。そして何よりも価格が手頃であれば商品としてもおもしろい物になるというわけだ。






・口径:45ACP
・全長:216mm
・重量:1,100g
・バレル長:127mm
・装弾数:7+1発
アメリカを意識したグリップが更に陳腐さを演出しているメイドインチャイナのガバメント。しかしながら作動不良も無く、良く当たるのだ。




必要最低限のカスタムはビーバーテイル、トリガー、ハンマーの交換だ。もちろんシアーなどは調整してキレを良くしている。マガジンの交換が容易になるようにファンネルも装備。そして表面処理はセラコートだ。シリアルナンバー以外のオリジナル刻印は消してある。セフティやスライドストップなどはオリジナルのままだが、これらはユーザーが後で好みのモノに交換すればよい。このノリンコ・コンバットカスタムは、あのオリジナルの状態を全く想像できない別物に仕上がっている。
パトリック氏は自ら手がけた1911を用意してきてくれた。筆者の世代だと何とも懐かしいブルズアイ用のカスタムであるコンバットトロフィーだ。シリーズ70をベースにした最小限のカスタムで、ノリンコ コンバットカスタムに似た仕様だ。パトリック氏のベーシックスタイルといえる。大きな違いはフィンガーグループのついた木製グリップだ。キャスピアンのダブルカアラムに対応したハイキャパシティのフレームとゴールドカップと組み合わせたハイキャップカスタム。シリーズ80をベースとしたコンバットカスタムなど、どれもシンプルながら実際に射撃をすることを念頭に、またローエンフォースメント向けにカスタムをしてきた実戦で戦える銃を作るパトリック氏らしい作品の数々。ピカティニーレイルが無いのが美しく、正当派といった印象だ。こうした経験を注ぎ込んだものが今回のノリンコ コンバットカスタムだ。







