2025/08/17
Colt M45A1 CQBP Colt Marine Pistol
コルトGIガバメントの復活! アメリカ海兵隊が採用したM45A1
Gun Professionals 2014年3月号に掲載
2012年、USMCはコルトのレイルガンをベースにしたM45A1の採用を決め、それから約10年間、この銃を使用した。これはアメリカ軍が運用した最後の1911であり、1世紀を超える1911の歴史において、最後に見せた輝きだったといえるものだ。
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GP Web Editor2025年8月補足:この記事は、USMCがM45A1を採用した2012年7月の約1年半後に書かれたものです。この時点でコルトのM45A1は順調な滑り出しを見せていました。しかし、USMCにおけるM45A1の運用期間は予想以上に短く、2021年に各部隊からの回収が始まり、2022年10月にはこれが完了、M45A1は残念ながら軍用としてはすでに過去の銃となっています。
復活のコルト
コルトといったらやっぱりガバメントだ。ガバメント、またそれを略したガバという呼び名が日本では浸透しているが、アメリカでは1911(ナインティーンイレブン)という方が一般的で、コルト自身も現在の製品をコルト1911と呼んでいる。
GIガバメント、つまり米軍サイドアームであったM1911/M1911A1はコルト以外のメーカーを含めて相当な数が製造された。第二次世界大戦が終戦を迎えた1945年にGIガバの製造は終了したが、コルトはM1911A1の市販モデルを増やし発展させていった。
基本設計は変わらなくても小改良を重ね、コマンダー等のコンパクト、ゴールドカップのような標的射撃モデルとファミリーをどんどんと増やし、特許が切れたあとでもクローン製品の増殖など意に介さないほど、本家だけが持つブランドパワーを長く持続した。当時は“コルト”という名前だけで立派なブランドだったのだ。それは、現在ほど強力なライバルが多くなかったということでもある。
戦後モデルは工作精度の高さに加えて表面処理のブルー仕上げが美しく、保存常態の良いモデルで元箱付きなら現在でも4,000ドル近い値段をふっかけられてもおかしくない…確かに昔のコルトは美しかった。
70年代に命中精度を向上させるためにコレット バレル ブッシングを採用したシリーズ70へと改良された。80年代になるとオートマチックファイリングピンブロックセイフティを追加し、安全対策を強化したシリーズ80へと進化し、完成度を高めた。加えて、オフィサーズACPなどのサブコンパクト、10mmオート弾を撃つデルタエリートなど、チャレンジ精神のある製品も戦列に加えている。
90年代にはGIガバメントのシリアル番号を引き継ぎ、ガバの原点を感じさせるM1991A1を発売、コルト1911は順風満帆な道を辿っていたかに見えた…が実際にはそうとも言えない厳しい現実があった。
コルトの失速が特に目立ち始めたのが80年代中頃のことだ。長期にわたる従業員のストライキで熟練工が去ってしまい、エンジニアの入れ替わりによって品質が低下、これによりかなりのイメージダウンを被った。

この写真のGIガバ(レミントンランド製)は2002年に公開された映画「ウインドトーカーズ(Windralkers)」で主演のニコラス・ケイジが実際に撮影で使用したもの(空砲用改造されておりオリジナルのパーツではない部分もある)。
同時に完全新規デザインの新製品開発の着手があまりに遅かったことも問題だった。公的機関はリボルバーから新世代のセミオートマチックピストルへとバトンタッチしていた。そんな大事な時期がやってきても、コルトには切れるカードが少なかった。1911だけで安泰だった時代は既に終わっていたにも関わらずだ。
もちろん、何もしなかったわけではない。ダブルアクション版1911のダブルイーグル、ポリマーガンのオールアメリカン2000を送り出すも市場の反応はイマイチに終わっている。
スプリングフィールドアーモリーや、多弾数化したパラオードナンスなど競争力を持ったクローン製品たちが続々と勢力を伸ばしてきたこともコルトには脅威だった。
それらのライバルたちは、1911のカスタム製作というブームにもうまく便乗した。品質が低下していながら本家というだけで高価なコルトは、消費者から距離を置かれ始め、築き上げてきたブランドが逆に足を引っ張る形になってしまったのだ。
そんなコルトは1992年に連邦破産法第11章(Chapter 11)に基づく破産申請をおこなっている。事実上の破産だ。これに対し、銀行とコネチカット州は債権者保護融資をおこない、コルトを再生されている。
GP Web Editor 2025年8月補足:1992年にコルトはChapter 11を申請し、その後、コルトは財政破綻から脱却しましたが、真の意味での安定を取り戻すことはなく、23年後の2015年にふたたびChapter 11を申請しました。
しかし、コルトの苦戦は続いた。90年代半ばからMIM(メタル インジェクション モールディング)を用いてカスタム1911の特徴を備えながら、市販価格を抑える事に成功したキンバーが1911市場の流れを大きく変え、ますますコルトは引き離されていった。
そんな中、1999年にコルトは米軍とのビジネスに力を注ぐことを決意し、一般市場向け製品の大整理を行なった。リボルバーなど多くのモデルが市場から消え、1911製品群についてはシリーズ80系のベーシックなモデルを中心に落ち着き、その後は記念モデルを限定生産する程度の大人しい製品展開をおこなった。
21世紀に入ってからはS&W、SIG、スタームルガーなどのメジャー会社の1911市場への参入もあり、特に新製品を送り出す意欲のないコルトはその存在感がさらに希薄になっていく…かに見えたが、ひそかにコルト1911再生の動きは始まっていた。
2002年、軍・警察市場を担当するコルト・デイフェンスが分離し、この出来事の前後から一般市場向け製品の開発にも再び力がみなぎり始めた。
M1991A1のスライドのロールマークをガバメントモデルと刻印された渋いスタイルに変更し、出遅れていたカスタム1911の市販化にも追い付こうとXSEシリーズを発表した。
XSEではスライドのフロントセレーション加工、ノバックサイト、ビーバーテイルグリップセイフティ、アンビセイフティなどの特徴を有し、モダン1911として恥じることのない実用的なデザインに大変身した。
いつまでもベーシックな1911や記念品ばかりをオファーするコルトではない、ということを市場にアピールするためにはXSEは大事な存在となった。
さらにXSEをベースにトレンドになっていたアクセサリーレイルを加工したColt Rail Gunを2009年に発表し、一度は時代の流れから取り残されていたコルト1911が競争相手たちと肩を並べられるレベルまで復活したことを印象付けた。
本家ならではの発想でGIガバメントの復刻モデルやシリーズ70の再発売などといったアイデアも成功している。
カタログでは80年代に一度付いてしまった品質低下のイメージを払拭するためか、品質の高さを強調している。実際にクオリティの向上は感じられるし、価格の面でも競争力のあるプライスレンジを維持している。
また1911の焼き直しばかりでは芸はないとばかりにダブルアクショントリガーを組み込み新規設計したニューエージェントを開発。1911の小型版、380ACPのムスタングを品質改善し復活させるなど、コルトはここ数年で確実に競争力を取り戻してきた。
そんな明るい兆しを見せるコルトを、さらに引き立てるニュースが報じられた。それが2013年のショット・ショーのブースで人だかりを作ったアメリカ海兵隊採用モデル、M45A1である。






