2025/06/04
1911 Collection Colt Government Series 70 .38 Super
1911 Collection
Colt Government Series 70 .38 Super
Text &Photos by Yasunari Akita
Gun Professionals 2015年11月号に掲載
コルトマニュファクチャリングカンパニーが銃器業界に遺したもっとも偉大な製品は1911だ。様々なバリエーションがある1911の中で、もっとも魅力的なモデルは、1970年代のシリーズ70ではないだろうか。製造中止から長い時間が経過し、ファクトリーオリジナルのシリーズ70はもはや稀少品となっている。ほぼ未使用のまま、コレクターの元で眠り続けたこの.38スーパーモデルも、いずれはカスタムモデルに生まれ変わる予定だ。
秘蔵の38スーパー
3年近く前にブレンテンなどの取材でお世話になった某コレクターの自宅を再び訪れた。前回紹介できたのもごく一部でしかなく、その時、「また撮影にいらっしゃい」と言われていたので、そのお言葉に甘えることにした。
今回のお目当ては、コルトMK.Ⅳシリーズ70だ。前回も見せてもらった秘蔵の38スーパーがそのコレクターの元で眠っている。秘蔵なんて書くと大袈裟だが、発売された当時の状態で保存してあるシリーズ70というのもめっきり見なくなって久しい。
1970年から13年もの間、製造されていたのだからLA中を探せばきっとどこかにあるはず…と思ってみても、実際はそう単純ではない。ガンショーやネット掲示板ではたまに見かけるがサイト等が交換してあるパターンが殆どだ。1983年の製造中止から32年の月日が流れている(2015年の取材時点)。これは仕方がない。しかし編集部が求めるのは完全なノーマルなのだ。
そんなに一生懸命探さなくてもシリーズ70は現在も販売されているではないか! 確かに…でも現代版はまた別の製品といえる。
(2025年6月 GO Web Editor 補足:2025年現在、コルトのラインナップに、シリーズ70と呼ばれるモデルはありません。但し、シリーズ70刻印のGold Cupならあります)
オリジナルよりも工作精度が高く、仕上げも均等で製品としての完成度は当然高い。本来その方が断然良いはずなのだが、オリジナルならではの良さというものがある。ところどころ加工が荒く、擦り傷が多く、銃を振るとカタカタと音がする。フィッティングが甘いのだ。そんないい加減な品質管理に人間臭さを感じてしまう (笑)。
本当のシリーズ70が欲しいと思ったら、あの70~80年代初頭の、“時代を感じさせるオリジナル”を求めたくなるのがコレクター心というもの。そして何よりオリジナルのブルーはまさにブルーの仕上げ。浅い角度で眺めるとスーッと透き通るきれいな青色が目を和ませる。現代版はブルーではなく、完全にブラックという感じだ。






.38スーパーの1911
口径.45ACPとして完成し、米軍のサービスピストルとして採用されたM1911と後のM1911A1だったが、コルトは.45口径以外の口径バリエーションにも着目した。
1920年代後半、大きな可能性を秘めた.38スーパー弾が登場する。高初速で貫通力に優れ、自動車のドア越しの撃ち合いでの有効性や、ボディアーマーを着ていても脅威となる貫通力に、コルトは警察用としての高い将来性を見出した。
さらに.45ACPモデルを構成する55点のパーツ中、わずか16点の変更だけで製品化出来ることが確認されると、.38スーパー仕様の試作が開始された。
1927年末頃から翌年にかけて試作品は完成しつつあったが、量産の準備が整ったのは1928年末頃だった。コルトはその年の9月にオハイオ州キャンプペリーの射撃大会で先行量産品のお披露目を行なった。
1929年1月3日から量産が開始され、その2日後には出荷開始される。専門誌に掲載された広告にも130gr弾頭を1,190fpsまで加速、エネルギー値は408ft/lbs.と弾の持つパワーを強調し、標的射撃とビッグゲームの狩猟用として売り込んでいた。事実1935年に.357マグナムが登場するまで世界最強のハンドガン弾の座に君臨できたのだから、その存在感は際立っていた。
初年度は6,000挺を出荷し好調の滑り出しを見せたが、同年10月のウォール街大暴落の影響を受けて市場全体が静まり返る。
1930年代、コルトはストック、フォアグリップ、コンペンセイター、試作の延長マガジン付きのフルオートモデルの試作を行なった。
第二次世界大戦が勃発した頃、.38スーパーモデルのシリアル番号も37,000番台に入ったが、戦時中には.45口径のGIモデルの製造を優先させたため、.38スーパーモデルは製造を停止し、それが再開されたのは1946年9月頃だ。この時は戦争前に製造途中で放置されていたパーツを再び組み上げるところから始まっている。翌年6月に新規製造を再開、1948年末までには戦争開始前13年間に生産した数を上回るほどの販売を記録した。
1968年にGun Control Actof 1968が制定され、新法が執行後、使用出来るシリアル番号は、かつて製造したいかなる銃のものとも重複してはならないというルールができた。1969年末の時点で刻印された番号は202188で、そこからは新番号方式に切り替わりCS001001から開始された。
そして70年代に入り、コルトはそれまでの市販M1911A1を一新させ、新型バレルとブッシングを組み合わせたシリーズ70を発表した。1971年2月に70S01001からスタートするシリアル番号を持つシリーズ70の38スーパーモデルの出荷が始まった(最初の200挺は過去のシリアル番号が既に打たれたレシーバーを使用していたため、番号が二つ刻印された)。
.38スーパーモデルは軍採用口径の銃の一般所持許可が下りないメキシコなどの国でも人気が高く、シリーズ80以降でも製品化されている。そして現在も1991シリーズとスペシャルコンバットガバメントでラインナップされている。
(2025年6月 GP Web Editor補足: 2025年現在、コルトの.38 Super仕様は9機種存在します)


