2025/08/13
グロック19 vs シュタイヤーM9-A1
Gun Professionals 2014年3月号に掲載
グロックとシュタイヤーは、共にオーストリアを代表する銃器メーカーだ。両社とも、ストライカー撃発方式のLE /ミリタリー向けハンドガンを製造しているが、世界中にユーザーをもつグロックピストルに対し、シュタイヤーピストルはそれほど普及していない。
今回は、9×19mmで似たようなサイズのグロック19とシュタイヤーM9-A1を比較し、それぞれの長所と短所などを検証してみた。
オーストリアの銃器メーカー
その前身が1864年に設立されたというオーストリアのシュタイヤー(Steyr Mannlicher GmbH)は、ヨーロッパを代表する歴史ある銃器メーカーだ。第一次大戦前後の軍用ライフルやセミオートハンドガンの設計/製造においては世界のトップレベルにあり、その後の銃器デザインに与えた影響は大きい。
GP Web Editor 2025年8月補足:現在の社名はSteyr Arms(シュタイヤーアームズ)となっています。
戦後はハンティングや競技用銃器の分野にも力を入れ、高品質のスポーティングアームズを供給しているほか、1977年にオーストリア軍に“StG77”として採用されたブルパップスタイルのアサルトライフル“AUG”の供給も担当しており、既成概念にとらわれないデザインを大胆に活かすメーカーとして知られている。
第二次大戦後にデザインされたシュタイヤー・ハンドガンの代表作には、ユニークなガスディレイドブローバックの“GB”があり、これは1980年代初頭のオーストラリア軍サイドアームトライアルに提出された。しかし、このトライアルで最優秀と認められ、1982年の契約を勝ち取ったのは、当時銃器メーカーとしては無名であったグロックのポリマーフレームハンドガンであった。

(撮影協力:On Target)

フレーム右側面中央部にあるのは、分解時に使用するディスアッセンブリーレバーと、銃の使用を制限するインテグレイティッド・リミティッドアクセスロック(キーロック)だ。


このグロック19はGen3で、Gen4の各種モデルにもニッケルボロン仕上げされたものが存在するが、グロックのウェブサイトには同仕様に関する記述はなかった。特定ディストリビューター向けの特別仕様なのかもしれない。


グロック19以外はGen4(第4世代型)で、少々小型化されたグリップフレームにはバックストラップの追加が可能となり、大型化されたマガジンキャッチが備わっている。
(撮影協力:On Target)
グロックの成功とその影響
母国オーストリアでP80として採用されたグロック17は、プラスティック業界で成功したガストン・グロック氏が設計した最初のハンドガンだ。シンプルな構造でありながら3重の安全機構を備え、操作が単純であるという点においても先進的であった。
合成樹脂をフレーム素材に採用したハンドガンはグロック17が最初ではない。しかし、その後の銃器業界に与えた影響を考慮すれば、最初に成功したポリマーフレームハンドガンと考えて問題はないだろう。
グロックは1985年に米国法人を設立し、翌年からグロックピストルの輸入を開始した。当初は合成樹脂の耐久性に対する疑問や、金属探知機をくぐり抜けるという誤報による否定的なイメージも存在したが、信頼性の高さとシンプルな操作性が評価され、一般市場だけでなくLE界でも認められてゆく。グロックがセイフアクションと呼称し、現在はプリセットストライカーと分類される撃発メカニズムや、安全性を確保しつつ基本操作や通常分解を単純化するなど、グロック17がモダンハンドガンに与えた影響は計りしれない。
コンパクトサイズのグロック19をはじめ、各種口径やサイズのバリエーションも豊富になり、様々なユーザーに対応したラインナップも充実している。アメリカLE機関の2/3がグロックピストルを採用しているともいわれているが、こうした情報の数字に関する裏付けを取るのは困難だ。しかし、FBIを含む大手LE機関の多くに採用されているほか、近所で見かけるLEオフィサーが携行している拳銃のほとんどがグロックであることから、アメリカの代表的LE用サイドアームであることに疑いの余地はない。