2025/06/13
Lone Wolf's TIMBER WOLF Custom
Lone Wolf's
TIMBER WOLF Custom
By Hiro Soga
Gun Professionals 2015年3月号に掲載

グロックみたいなチープなガンには興味がないというアンチグロックの人達だって、チューニングを施したグロックを撃ってしまうと、その評価は180°変わるだろう。気に入らない部分は1911同様、カスタマイズすれば良いのだ。1911に慣れた者がグロックを撃つとマズルが少し上を向いてしまう…そんな時はフレームを変えよう。LoneWolfからポリマーのグロックフレームとして、ティンバーウルフフレームが供給されている。
グロックファン
グロック人気が定着して久しいのは、皆さんもご存知の通りだ。
1982年の登場以来、累計販売数が900万挺を超えているというのだから、そのメインマーケットであるUSでの人気度も普通ではないのがわかる。現時点でのローエンフォースメント(ポリスなど法執行機関)関係でのグロック採用率が65% (グロック社試算)に達しているというし、一般市場でも必ずといっていいほど人気トップ5に入っている。
しかしながら、そんなグロックにも“アンチグロック”と自らを呼んではばからない人達がいるのも確かだ。私の周りにも何人かいるので、彼らの言い分を聞いてみた。
・ ポリマーフレームが信頼できない。
・ 何といっても美しくない。
・ トリガープルが重く、長く、切れる瞬間がはっきりしない。
・ グリップのアングルがおかしく、思ったところにポイントできない。
・ グリップが太すぎるし、手に汗をかくと滑る。
古いハナシで恐縮だが、USA販売当初にグロックがなんと呼ばれていたかご存知だろうか。“テロリスト御用達のガン”である。これは、当時馴染みのないポリマーフレーム(プラスティックガンと呼ぶ人もいた)が空港のX線検査を通ってしまうというイメージから付けられたニックネームで、いわば保守派の悪口雑言の類だ。
いくらフレームがポリマーでも、X線にはしっかり映るし、なんといってもパーツやスライド、バレルといったコンポーネントは、立派過ぎるほどの鉄製なのだ。
また、“タッパーウェアガン”というのもあった。タッパーウェアというのは、あのキッチンで使う塩化ビニール製の保存容器のことだが、セカンドジェネレーションまでのグロックは、まさに“黒タッパーウェア”としか呼びようのないパッケージに入っていた。当初の販売価格が300ドル台であった(!)のを受けて、そのチープなイメージからそう呼ばれていたのである。



かくいう私めも、1985年にグロックがアメリカ市場に参入してきた当初は、見向きもしなかったクチである。当時はまだファーストジェネレーションの時代で、新モノ好きの友人が手に入れたグロックを撃たせてもらい、17連マガジンには惹かれたものの、そのぶっとくて滑りやすいグリップと、何はともあれ重くて得体の知れないトリガープルに閉口したことを覚えている。
それでもセカンドジェネレーションが1988年にリリースされ、数年後にガンショーでほぼ新品のグロック17を手に入れた。何せ300ドル前後だったので、そのあまりの安さに抵抗できなかったのだ。それでもこのグロック17は、長いことガンセイフに眠っていた。出番がなかったのだ。このグロックが永い眠りから覚めるのは、1997年のことである。当時、ローカルのシューティングマッチにせっせと通っていた私は、友人がSTIやSVIといったハイキャパシティガンに移行していく中、シングルスタックの1911に限界を感じていた。そこで見つけたのは、当時新しいカテゴリーとして人気が出始めていた“プロダクションクラス”で、常にトップ3に入っているグロック使いの男である。このデイヴィッドという男は、でかい体に似合わず風のように走り、マシンガンのようにグロックを撃ちまくるのだ。
順番待ちの間に、グロックで戦うのは大変じゃないか、と聞いてみた。
「慣れればそうでもないよ。トリガープルは自分なりにポリッシュしてある。ほら、試してみな」
お言葉に甘えて、セイフティエリアでドライファイアをさせてもらう。軽い!まるで別物だ。
「ここと、ここと、ここをポリッシュして、この2本のスプリングを換えるんだ。スプリングは自分でレートの違うのを買ってきて、切って曲げるけどね。興味があるならやってやるから、君のグロックを持っておいで」
これまた願ってもないオファーである。早速次のマッチでグロックを渡し、チューニングを頼むことにした。出来上がってきたグロックには驚いた。まるで別物なのだ、トリガープルはスムーズで軽く、ストライカーが前進する直前で重くなり、約4ポンド(1.8kg)弱ほどの抵抗の後、「カシュッ!」と切れる。


これで、いっぺんにグロックが好きになった。そうなのだ。好みに合わない所は、1911と一緒でカスタマイズすればいいのだ。
ここで使い込むうちに少々気になったのは、グロックのグリップアングルである。数々の革新的な機構を持つグロックだが、そのグリップアングルもまた独創的なのだ。
初めてのガンがグロックである人たちにはまったく問題がないが、われわれのように1911を撃ち慣れている者にとっては、普通にガンをターゲットにポイントすると、マズルが少々上を向いてしまう(センターを狙うと12時方向を撃ってしまう)のだ。これはグリップそのものの角度と、バックストラップの後半がもっこりと盛り上がっているのが原因だ。
このあたり、同じように感じる人も多かったらしく、2000年代に入るとこのグリップの後半を切り落とし、エポキシで造形し直すといったカスタマイズが出始めていく。
2006年になると、“CCF Race Frame”という会社から、このグリップアングルを直した、金属製フレームが登場する。これはグロックのポリマーフレームを、アルミ、チタン、ステンレスの3種類の素材で作り上げたものであった。おおっ、チタン製か!と飛びつきそうになったが、これまた友人のアルミ製を撃たせてもらったところ、何せスムーズな面が多すぎて、なんとも落ち着きのない仕上がりとなっていた。


ティンバーウルフ フレーム
そして2010年、グロックのバレルやスライドといった自社製のパーツで人気のあった“ローンウルフ社”から、今度は同じくポリマー製のグロックフレームがリリースされた。まだプロトタイプの段階だったが、友人の好意で試射をする機会に恵まれたのだ。当時のマーケットからは否定的なコメントが多かった。
いわく、「すぐにグロックに訴えられて、裁判沙汰になってなくなるだろう」、「事故があった場合、誰が保障するのか」、「グロックのオリジナルフレームの、どこが悪いのか」、「安全性は確保されているのか」等々といったものである。まあ、アメリカらしい反応といえるだろう。

中央:なんだか尻つぼまりのCCFグリップ。角度は良好だが、いかんせんサイドが非常に滑りやすい。
右:タラン・タクティカル・イノベーション(Taran Tactical Inovation:TTI)のグリップ。グリップ下部は、できるだけ薄くストレートに削ってもらった。

右:こちらはグリップアダプターを装着したもの。アングルは改善するが、少々太くなってしまう。
