2025/06/15
Kahr P380 & Glock 42【動画あり】
Text & Photos by Yasunari Akita
Gun Professionals 2015年5月号に掲載
日本ではあまり注目されていないが、カーアームズの小型オートは、高品質高性能で米国では高く評価されている。.380ACPのP380もそのひとつだ。これをグロックの.380オートG42と併せてご紹介しよう。歴史のないメーカーでもこれほど良質のコンパクトオートを製品化していることを知って頂きたい。
キャリーガンの新製品
大きいことは良いことだ、というのはかなり昔の話。いまや小型軽量、それでいて実用的なモデル市場から求められる時代になった。全長と全高の短さだけで競うのではなく、特に大事なのが全幅だ。短縮しただけのコンパクトでは最先端のキャリーガン市場にはインパクトを与えられない。スライドとフレームを薄くしても突起物が目立つとスペック上の魅力が大幅にダウンする。したがってレバーやボタンができるだけ張り出さない工夫が求められる。各社の努力により、キャリーガンは90年代よりも格段に進歩した。現在はそれに加えてレーザーやライトなどを限界まで小型一体化させたり、ここまでやるかと思えるほどペラペラな板みたいなモデル、あるいは変形可能なトランスフォーマーのようなものなど、いろいろな新発想が加えられている。
超小型携帯ピストルの設計ではハンマー方式よりもストライカー方式の方が、スライド/フレームの後ろが小型化できてコンパクト化にさらに有利だ。そして小さくても重いと減点となるため、アルミ合金フレームやポリマーフレームが現実的な選択肢になる。
ストライカーになると突起物となりそうなデコッキングレバーなども省略できるし、さらにトリガー方式もグロックを初めとするサムセイフティを省いたものにすることで、薄さの魅力を強調できるデザインが完成する(それでもマニュアルセイフティを望む声もあるので、セイフティあり/なしの2系統で出すところもあるが)。
こんな具合で、新製品といってもデザインではある程度のパターンの中に納まっており、各社“手を替え品を替え”というのが現状だ。
さらに今年(2015年)のSHOT SHOWで公開されていたトーラスのカーブのような新しい方向性も見えてきた。.380ACPのポリマーフレームでレーザーとライトを内蔵させたモデルだが、単純に薄くするのみならず、腰のカーブに合わせて銃全体を曲げるという発想は、今年の新製品の中でもかなり飛び抜けていた。
ドイツのコルス社の新型リボルバー、スカイマーシャルも既出のアイデアとの組み合わせだが、着眼点は興味深い。9mm×19を選ぶことで.38スペシャルよりもパワーがあるところをアピールしつつ、シリンダー全長を短縮(クリップ要らずで空ケースをエジェクトさせる機能も内蔵)している。ある一定サイズに全体を小型にしたままでも銃身長を維持し、なおかつ安全面から軽量素材を使いにくいシリンダーを小型化することで、更なる軽量化に結びつけていた。
キャリーガン市場には斬新な新製品が飛び出す可能性がまだまだ眠っており、今後の動向から目を離せない。採用口径を考えるとLE(ローエンフォースメント)的には9mmがボトムライン。ストッピングパワー不足により.40S&Wや.45ACPの活躍が匂わされているが、超小型モデルから撃つには反動が厳しく、現実的にはハードルがある。
9mm×19は必要十分なパワーがあり、短い弾の全長も小型化にとってバランスの良いカートリッジだが、一歩譲って.380ACPという選択肢も出てくる。
一般人の護身用としては現実的な最低ラインがこの口径だ。危害を加えようとする相手を制して倒すにはちょっと心もとないが、危険な状況から逃れるためのデフェンシブな口径としては最低限の威力を備えているといえよう。
そこで今回は、コンシールドキャリーに適した.380ACP口径のコンパクトオート、その代表的な2機種の比較を行なってみたい。まずは超薄型オート人気の仕掛け人とも目されるKahr Arms(カーアームズ)のP380、そして、昨年(2014年)満を持して登場したグロック42(以降G42)だ。高品質を武器にするP380、それに対するグロックは言わずと知れたポリマーオートのトップランナー。そんな2つのブランドが送り出した.380ACPのコンパクトオート、それらのキャラクターを深く探っていく。

