
Gun Professionals 2014年3月号掲載
フルオート火器としては珍しく素材にステンレスを用いたルガーKAC-556Kは、コンパクトサイズでありながら5.56mm高速弾を毎秒14発もの割合で弾き出すという、Mini-14系随一の跳ねっ返りモデルだ。MP5の倍以上のエネルギーを秘めるパワフルな性格とは裏腹に、ステンレス製素材が発する上品な輝き、レトロな雰囲気を醸し出す木製ストック、挑戦的な折りたたみストックなど、一見チグハグともいえる外見的なミスマッチも筆者の好みだ。Mini-14系タクティカルモデル全般をご紹介した前編に引き続き、後編ではKAC-556Kに的をしぼり、独特な3発バーストメカや内部機構を詳しく解説する。
薄暮射撃において豪快なマズル・フラッシュを吐き出すKAC-556K。銃の構えが不安定だと反動を食われて作動不良に陥りやすい反動利用方式に較べ、ガス圧利用方式は腰だめ射撃でも快調に作動する。
100連C-MAGも装着可能だが、実際に100連を試したことはない。連射によるAC-556系バレルの加熱は凄まじいものがあり、100連のフルオート連射など実行したら、バレルの消耗は半端ではない。
アメリカは、一部の州を除き一般市民でも合法的にフルオート火器が所持できるという、先進国の中でもきわめて特殊な環境を持つ国だ。なかでもAC-556系モデルは、1986年にマシンガン所持規制法、FOPA86が発令されるまでは一般市民でも直接メーカーから購入することができた数少ないファクトリー純正マシンガンであり、未改造の状態であれば、2009年までスタームルガー本社工場でのサービスを受けることが出来た。ちなみにAC-556Kの1970年代当時の販売価格は344ドルであったという。
エキストラクターやスプリングといった消耗パーツに損傷があれば無償で交換するという定評あるルガー社の良心的サービスは、そうでなくとも日頃からメンテナンスに苦労するマシンガンオーナー達にとって貴重なものであった。
一般市民がフルオート火器を個人所有する場合、自己責任によるメンテナンスやパーツの入手が極めて重要な事柄となってくる。単に機能、性能、納入金額といった、銃器に関する一般的な事柄のみを考慮すればよいという軍や法執行機関などとは、価値判断の基準が大きく異なるのだ。
AC-556系モデルを選ぶのであれば、セミオートMini-14からのコンバートモデルではなく、ファクトリー純正モデルにコダワルべきだ。単にMini-14をフルオートに改造しただけのコンバートモデルでは、純正オリジナルの3バースト機能が欠如している。
折りたたみストックは、木製ストックの胴体部に2本の大きなネジで大雑把に固定されている。スタームルガー社の公式サイトには、銃器のシリアル#から製造年を割り出せるサービスがあるが、残念ながらAC-556系モデルはカバーされていない。そこで直接同社に電話で問い合わせたところ、シリアル#191-08816は1982年1月の製造で、誕生から既に30年以上になることが判明した。
独特な形状が際立つ折りたたみストックは折りたたみ状態でも射撃が可能な上、ワンタッチで引き出すことができる。デザイン的に優れてはいるものの、取り付けヒンジの厚みが足りず、上下にガタつくのが難点。
Mini-14タクティカルモデルの新品ガスブロック部。
AC-556パーツセット(後述)のガスブロック部。度重なる射撃訓練により、発射ガスが直接吹き込むガスブロック内面には厚さ1mm以上の火薬残渣が堆積している。
分解清掃が完了し、新品同様に蘇ったAC-556のガスブロック部。
ピストン内部やガス導入孔の清掃には、それぞれ1/8インチ(約3.2mm)径、1/16インチ(約1.6mm)径のドリル歯やリーマー等を用いる。
発射ガスによる汚れが付着しやすいKAC-556Kのマズル部とスライドのシリンダー部は、30連マガジン数本の射撃でこの有様だ(写真右が射撃後の状態)。