2025/07/15
ジャクソン アーモリーで目の保養 ~博物館クラスのクラシックミリタリーガンが数多く置かれているガンショップ Jackson Armory~
Gun Professionals 2014年8月号に掲載
Text & Photos by Turk Takano
テキサス州ダラスのガンショップ Jackson Armoryの存在は、古銃コレクターの世界じゃよく知られている。ここには博物館クラスのクラシックミリタリーガンが数多く置かれているのだ。同ショップは以前にも紹介したことがあるので読者もご記憶に違いない。筆者は時々、顔を出す。“高嶺の花”という商品が多いのだが、筆者もコレクターの端くれ、財政的な問題はとりあえず横に置いて、見てみたい銃は多い。
博物館にあるモデルと古銃ショップにあるモデルには大きな違いがある。博物館はセキュリティでがんじがらめ、ガラス越しに眺めるのが関の山だ。ところが古銃ショップとなると手にとって見ることが出来る。こちらもセキュリティが厳しいことに変わりはないのだが、それは閉店後の事であり、店がオープンしている間は一応解除となっている。
しかしながら店員はそれぞれ武装しており、この事実は、銃の強奪を試みようとする者に対し大きな抑止力となっているのだ。もちろんこれは古銃ショップに限った話ではない。米国のガンショップはどこも同じような対応を取っている。




今回、リポートすることになったのは筆者がJackson Armoryを訪ねた折、何枚かの写真を撮影、編集部に送ったのがきっかけとなった。スプリングフィールドM1903A1/Unertlスコープ付の超レアものにエライ興味を持ったのが松尾副編集長、ところがこれは翌日、売れてしまった。価格は18,000ドル(183万円)だった。筆者には手も足も出ない価格だ。
中古銃を買うなら今がもっとも良い時期かもしれない。米国での話だが…、所有するコレクターの世代交代から戦後、半世紀以上の間、ガンセイフに仕舞われたままだった往年の名銃が売りに出されているからだ。ルガー、ワルサーはもちろん、日本の十四年式など戦前、戦中、戦中末期のモデルなどがいろいろある。ものによっては数千ドルだが、コレクションとして高い価値を求めないのであれば1,000ドル以下のものもある。
しかしながらこの20年、骨董品もモノによってはかなり価格が上昇した。たぶん多くの古銃店訪問者は“あの時、売るんじゃなかった”と後悔しているに違いない。後悔先に立たず…、今、高いと思ったら20年先を考えたら良い。

1960年代のガンショーなら、十四年式が50ドルで買えた。ルガーは値が張ったがそれでも200ドル以下、もっとも当時の貨幣価値から考えたら今とそれほどの差はないという意見も年配者から聞く。いつの時代も“昔、買っておけば…”という話は、繰り返されているのかもしれない。年配者が“今の若い者は…”と舌打ちするが、彼らも若い時代、同じ事を言われていた。それと似たようなものだ…(笑)。
Jackson Armoryの売り物に無可動モデルはない。置かれているものは普通に作動するモデルというのが前提となっている。だが現実には、古い銃の購入者がレンジに持ち込み、それを撃ってみるというケースは稀だという。パーツが破損しようものなら修理には手間が掛かるし、ものによってはスペアパーツを見つけることが出来ないかも知れないという心配があるからだ。撃たなくとも全部パーツが揃い、いつでも撃てる状態…、これがコレクターにとって大切なことなのだ。撃つことはなくとも撃てるコンデション…、“無可動と同じじゃないか?”、“いや違うね…、いざとなったら使える”これが魅力なのだ。
Jackson Armory社は米国南部の有名私立大学SMU(Southern Methodist University)の向かいにある。この辺は古くからアッパークラス(高級住宅地)で知られている。かつてJackson Arms社が1ブロック先にあった。店をたたむときJackson Armsの名前を譲り受けたいと願ったがそれが実現せず、Jackson Armoryとしたという経緯がある。ところがJackson Armory経営者も同姓同名のJackson氏、近所同士でありながらここに親戚関係ではないというから恐れ入る。遡ればどっかで関係しているかもしれないが…、かつてのJackson Arms社の社長Jackson氏は元米陸軍大佐だった。もう故人となって久しい。Jackson Armory社長は元検事という。




筆者は所得レベルの関係もあり、ここでの購入実績は数えるほどしかない。しかしいろいろ親切にしてくれる店なのでよく顔を出す。ドイツから昔、移住してきたドイツ人経営のドイツレストランが近所にあるのも大きな魅力だ。銃と関係ない話だが…。余談はこの程度にしよう。筆者は銃も好きだが、他にも好きなものがいっぱいある。
店のドアを開けると正面にどーんと置いてあるのが1855年ものハウザー(榴弾砲)の3/4スケールモデル。無可動じゃない。先込め(マズルローダー)だが黒色火薬と口径に合った砲弾があれば発射できる。これらフルスケール、縮小スケールの大砲所持者は普通、空砲を撃つ。実弾が撃ちたかったらニューメキシコ州のレンジに行けば可能だ。前装大砲用のレンジもあるからだ。
マウザーKar98、M1ガランドなどいろんな製造所製がある。集めようと思ったらまとめ買いも可能だ。もっとも財布との相談だが…、昔の銃ばかりと思いきや最新ものもある。イスラエル製のブルパップIWI Tavor TAR-21もあったりで古銃屋とは思えない。ただ価格がちょいとプレミアム付きなんで…ここが難点だ。昨年だったかボーチャードピストルがあった。こういったものは好事家が群がり、金に糸目なしとなるので筆者のような庶民には残念ながら関係ない話となる。
しかし、眺めるだけでなく触らせてもらってもお金を取られるわけでもなく、それもあってか結構店は客(?)で込み合っている(笑)。時間帯によってはエライ混雑となり、お客(?)が店員と話し込むケースが多い割に右から左にホイホイ売れるわけでもない。値段も関係している。
写真にあるようにジョンソンライフルもあった。昔から欲しかったモデルなのだが、3年前(2011年のこと)、実射テストと分解をしてみて筆者のような射撃好きには向いてないと知り、急速に興味を失った。
いつもはドイツのG43があるのだが、売れてしまったようでこの日は見掛けなかった。G43はこれまでにも何回も見ており、結構な数が米国内にあるようだ。そのほとんどはヨーロッパ戦域から帰国した兵士により持ち込まれたものだろう。ここは米国、何でもアリだ。
今回は店内の様子を写真でご紹介した。筆者同様、読者の皆さんにとって“目の保養”になれば幸いだ。




Text & Photos by Turk Takano
Gun Professionals 2014年8月号に掲載
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