2025/05/20
Smith & Wesson M586 この銃に会いたかった
この銃に会いたかった
Smith & Wesson
Model 586
フォト&キャプション:Toshi
Gun Professionals 2015年2月号に掲載
「この銃に会いたかった」は、日本全国のガン愛好家の方々に銃への憧れとか思い入れを声高々に語って頂くコーナーです。
今月は、大阪府出身の山本さんがご登場。お目当ての銃は、S&Wが80年代初頭に放った理想のターゲット・リボルバー、モデル586です。
それではハリキッテどうぞ!
私が586に出会ったのは、サンフランシスコのシャボーシューティングレンジ。当時人気のあったPPCマッチでした。どんな銃でも出場可能ですが、もし市販状態のガンで上位入賞を望むとしたら、586か686の6インチしかない!という時代だった(と思った)のです。
大学を卒業して就職したものの、社会の厳しさに心が折れ退職。仕切り直しを目指して渡米したのが86年。入国審査で、どれくらい滞在したい?との問いに「As long as I can!」で6ヵ月の滞在許可をゲットできました。おおらかでしたね。
当時のGUN雑誌のレポーターの方々に遊んでもらいながら、自分の銃を持つための準備を進めました。当時はIDカード(又は運転免許)を取得後3ヵ月経てば住民と認められ、銃や弾が購入できたのです。6ヵ月滞在、というのはここに意味があったのですよ。
で、譲って頂いたのがS&W モデル586の6インチでした。日本では「パイソンのまねだけど、ベンチレートリブがなくてだめじゃん」的な見方もあったかもしれませんが、私としては冒頭に述べたとおり、ストックで競技に使える銃!という頼もしい印象でしたね。最初はモデル64の2インチでPPCに参加しましたが、隣でギュギュッとしたグルーピングを出されるとムムッと来てしまうのですよ。多くはウデの問題でしょうが、大学時代から.22口径のライフル射撃を続けていたので、たとえつまみ食い的に参加したものであれ競技である以上、道具立ての時点で点数的にハンデがあるのはツライのです。
レポーターの方々もカスタムガンを使ってる方以外は586か686でしたね。フロントサイトはパトリッジで、グリップはデイビスのゴムグリップを手に合わせて削ったもの。これをテッドブロッカーズのホルスターに納めるのがカッコよくてカッコよくて!あこがれましたよ~。用具を入れるのも専用ぽい“オカモチ”で。流れ者の僕の場合はデイバッグにスピードローダーやらイヤープロテクターやらバラ入れでしたが。
2025年5月 GP Web Editor追記:申し訳ございませんが、GripのSpeed Loader Cutはもう少し早く、1977年頃に一部始まっておりますね。
最初のうちはレポーターの方々に射撃場に連れて行ってもらっていましたが、みなさんはお忙しい身。じきに一人で射撃場に出かけるようになりました。そうなると弾も自分で買わなきゃいけない。私はもっぱら“マケール”という銃砲店で買っていました。確か空薬莢を持っていくと少し割引してくれたと記憶してます。いつも買うのはワッドカッターのリロード弾。例のIDカードを見せて50発がビニールに入ったのを何袋か購入します。デイバッグの中にはソフトケースに入った586。そこに弾のズシッとした重みが加わると、なんだか幸せを感じたもです。日本ではありえない状況ですね。
ダブルアクションで撃つときはシリンダーストップがかかるまでトリガーを引き、そこで一旦止め、最後にジワリとスクイズしてハンマーを落とすんだよ、なんてこともこの銃で教わりました。やりやすかったのはLフレームのおかげだったかも。
射撃が終わると手入れをしないといけません。私はリボルバーって銃身内部以外はそんなにメンテナンスしなくてよいものだと思ってました。ところがどっこい、シリンダーの前後面の掃除こそ大事で、ここが汚れてくるとトリガーがスムーズに引けなくなり、ダブルアクションがガクガクになるんですね。知らなかった~。
さらにシリンダーを掃除するとき、スイングアウトしただけで銃口側からブラシを通してると、向こう側に抜けたブラシがフレームのサムピース下あたりをヒットして傷付けてしまったこともありました。これをやった時は凹みましたわ~。愛する者を傷つけてはいけませんね。
当時日本ではコクサイが金属リボルバーを積極的に展開し始めてました。国際電話をかけて兄貴に「M19の4インチ買っといて~」と頼むと「お前、そっちで本物が幾らでもあるんだろ?おもちゃ買ってどうすんだよ!」と言われました。そこでハタと気付きましたね。モデルガンは本物の代用品ではないのだと。本物が所持できない法的環境と日本人のモノづくり技術が重なったことで生み出された、世界に類を見ない価値のある文化なんだと。それが町で1万くらいで売ってるんですぜ。「いいから買っとけ~!」って。
夢のような6ヵ月が過ぎ、帰国の時が来ました。スカンピンの私はマケールに持ってる銃を売りに行きました。モデル586も査定を受けるとフレームトップの裏側に彫り込んだような傷が!シリンダーギャップから吹きだす高圧高温ガスによるものだそうです。「マグナムはあんまり撃たない方がいいんだよ」と言われました。ときどきマケールでマグナム弾も買ってたからな…。
●
私にとって銃とは、精緻な工作と洗練されたデザインを併せ持った特別なスポーツ用品です。かのイチローさんも「僕は美しい銃で試合に出ることが何より嬉しいのです」と言っていました。この言葉に尽きますね。
今月、語って頂いた方
プロフィール
お名前(P.N.)
山本 亙(わたる)様
・年齢、性別
53歳、男性
・出身地
大阪府
・トイガン歴
約40年
・職業
教育関連
・自分を芸能人に例えたら
イーストウッドでありたいです。
・子供のころの夢
仮面ライダーになりたい!
今回ご登場の山本さんは86年、自分は87年の渡米組です。時期は一年ずれますが、同じシスコの空気を吸い、同じシャボーレンジのPPCマッチをこれまた同じLフレーム(自分はモデル686)で戦った同志として、面識が全く無いにもかかわらず応募のメール一本で瞬時に打ち解けました。思えば、あのPPCマッチの毎回の結果が、自分の人生そのものだったような気がします。つまり、いつもチョッピリ的外れ、みたいな(笑)。
ともあれ山本さん、思い入れタップリの原稿、本当にありがとうございました。
フォト&キャプション:Toshi
Gun Professionals 2015年2月号に掲載
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。