2025/07/27
【NEW】AREX Delta Gen2 L スロベニア製 9mm自動拳銃【動画あり】
スロベニア生まれの9mm自動拳銃
Text and Photos by Terry Yano
Special thanks to Oleg Volk
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米国には国内外で製造された銃器が流通しており、比較的よく知られた国で作られたものもあれば、あまり知られていない国から輸入されたものもある。恥ずかしながら、スロベニアの位置を示せと言われても困る私ではあるが、今回は同国で製造された9mm自動拳銃を試す機会に恵まれた。
スロベニアってどこ?
いわゆる大国には分類されないような国であっても、歴史文化や科学技術など世界に与える影響によって、高い知名度をもつ場合もある。我が日本国はその好例で、各種先端技術や漫画・アニメなどを通じて世界中の人々に広く知られており、日本語を学ぼうという若者は多い。
第一次世界大戦まではイギリスやフランス、ドイツやロシアと並び列強の一角を占めていたオーストリアは、音楽を中心に文化大国としての歴史も豊かであるが、銃器愛好家にとってはシュタイヤーやグロックの母国として知られている。FNを擁するベルギーや、CZ(CZUB)の母国チェコも、昔から優れた銃器の製造している国の例だ。
一方、本記事で採り上げるデルタGen2 L(ジェントゥー エル)が製造されたスロベニアは、一般的に広く知られた国とはいいがたく、かくいう私もこれまであまり注目したことがなかった。イタリア/オーストリア/ハンガリー/クロアチアに囲まれ、豊かな自然やスキーリゾートなどで知る人ぞ知る中央ヨーロッパの一国で、首都のリュブリャナにはバロック様式と近代建築が混在しているそうだ。1945年にユーゴスラビア連邦人民共和国を構成する共和国のひとつとして発足したが1991年に独立を宣言し、1992年にはEU(欧州連合)各国に国家承認されて国連に加盟、2004年にはNATO(北大西洋条約機構)とEUに加盟し、2008年上半期と2021年下半期にはEU議長国を務めている。
ご存知の方もあろうが、米国第45代/第47代大統領であるドナルド・トランプ氏の奥様で、現ファーストレイディのメラニア夫人は旧ユーゴスラビアのノヴォ・メスト出身だ。そこは現在スロベニア共和国であることから、同国出身と報じられることもある。

エレックス ディフェンス
1994年に設立されたスロベニアのエレックス社(AREX)は、後にエレックス ディフェンス社(AREX defense)と名称が変更され、それから25年が経過したとのこと。もともとは金型や治工具の製造を専門としていたようで、そこで要求される精密加工や品質管理のノウハウを活かしながら徐々に防衛産業へとシフトし、2015年にはAKB-15と呼ばれるライフルを製造している。これはかつてスロベニア軍で使用されていた7.62x39mmを用いるザスタバM70(ユーゴスラビア版AK)の近代化改修プランで、防衛関連向けの“AREX”ブランドで100挺、民間向け“REX”ブランドでは15挺が製造されたとのこと。顧客の確保やレシーバーの供給などがネックとなり、このプロジェクトは頓挫してしまったようだ。
エレックス初の拳銃は2017年に発表されたREX Zero 1S(レックスゼロワンエス)で、これはネバダ州のファイムグループ(FIME Group)によって米国に輸入された。外装式ハンマー撃発方式とDA/SA(ダブルアクション/シングルアクション)トリガー、そしてアルミ合金製フレームをもつレックスゼロ1Sは、タイムプルーフされたSIG P226を土台にデザインされたが単なるコピーではなく、フレーム後部両側面に追加されたマニュアルセイフティやディコッキングレバーとしても機能するスライドストップなど、独自のアレンジが加えられたユニークな製品となっている。米国でも大きな銃砲店であればショーケースにその姿を見ることもあるが、その知名度は高くない。
エレックスに招かれてスロベニアに赴いた銃器関連インフルエンサーの実射動画を観た人であれば、レックスゼロ1Sという拳銃やエレックスというブランドも認識できようが、そうでなければ銃器ファンでも知らない場合も珍しくないだろう。

今回の参考モデルとして紹介しているレックスゼロ1Sは地元のガンショップに陳列されていた1挺で、数年前に撮影させてもらったのだが、今回ようやく参考モデルとして紹介できたのは幸いだ。
レックスゼロワンS(4.3インチ銃身、標準17連マガジン)には、バリエーションが複数あり、
・5インチ銃身を擁するロングスライドにアジャスタブルリアサイトを備えた競技向けのレックスアルファ
・3.5インチ銃身と15連マガジンを備えたコンパクトサイズのレックスゼロ1コンパクト
・ネジ付き銃身と背の高いサイトを備えたゼロ1T(4.9インチ銃身/延長20連マガジン)、ゼロ1CT(4.5インチ銃身/延長17連マガジン)
などのバリエーションが追加された。



スライド後部には小型ダットサイトの装着面が加工されており、出荷時にはカバーが装着されている。

この銃に備わったマガジンキャッチは標準部品ではなく、オレグさんが注文して交換した延長仕様だ。
バックストラップ底部後ろ側の切欠きとロールピンは、ランヤードの取り付けに対応している。