2025/07/06
【NEW】Luger P-08 1908 DWM ブルガリアン コントラクト
Text & Photos by Hiro Soga
独特なトグルアクションと洗練された機能美を持つルガーP-08のファンは多い。120年以上前にその原型が設計されたにもかかわらず、その完成度は高く、唯一無二の存在であるからだ。今回は、1908年から数年間のみブルガリア軍用に製作されたモデルにスポットを当ててみた。
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1908 DWM ブルガリアン コントラクトモデル
珍しいルガーP-08に遭遇してしまった。全体の程度はそこそこだが、通常セイフティレバーの後ろにある特徴的なランヤードループが無く、バックストラップ先端、マガジンウェル部分に可動式のランヤードリングが増設されている。
ルガーにはつきもののプルーフマークは見当たらず、通常フロントトグル部分にある“DWM(Deutsche Waffen-und Munitionsfabriken:ドイツ兵器弾薬製造会社)”ロゴがチェンバー上部部分にある。
ピッティング(錆によって浸食された痕)を削ってリフィニッシュしたと思われるフロントトグルには、何かの紋章のような刻印が入っている。
これらの特徴やシリアルナンバーから調べてみると、この個体は1908年にブルガリア軍がDWMとコントラクト(契約)を交わし、1910年から1913年までの間に1万挺ほどが納入されたうちの1挺であることがわかった。

口径:9×19mmパラベラム
全長:222mm
銃身長:100mm
重量:871g
アクション:トグルロックドショートリコイル, シングルアクションストライカー
マガジン装弾数:8発(デタッチャブルボックスマガジン)
データベースによると、このシリアルナンバーのP-08は1908年にブルガリア王国とDWMとの間で締結されたコントラクトの内、最初に納入されたシップメントに含まれていたという記録がある。バレルは明らかに交換されているが、少なくともレシーバー、トグル周りのメインパーツは1908 ブルガリアン コントラクトモデルのオリジナルのものだ。




つまりこの銃は、バルカン戦争と2つの世界大戦を潜り抜けてきた強者の1挺だったのだ。各部のピッティングの具合やチェンバー部の“DWM”刻印の薄さ(つまり錆などをポリッシュしたときに薄くなってしまった)から、かなり錆が進行していた各パーツをポリッシュしてブルーを掛け直した“リビルド”モデルであるのは確実で、バレルもオリジナルではなく交換されているのは明らかだ。
何せ1910年代に製造されたモデルで、いくつもの戦争を経験したことから、何度も職人の手が入り、各部がリフレッシュされてきたのは間違いない。
ここで、ブルガリアンモデルの特徴をリストしておこう。
・ランヤードループがグリップフレームの最下部に設けられている。
・DWMロゴが、トグル上ではなく、チェンバー上面にスタンプされている。
・フロントトグルには、ブルガリア紋章(ランパンライオンと呼ばれる)が刻印されている。
・受領のプルーフマークがレシーバー右側に刻印されている。
・エキストラクター/ローデッドインジケーター側面に、ブルガリア語で“ローデッド(Loaded)”を意味する刻印が打たれている。
・セイフティレバーがオフの状態で現れるレシーバー部分に、“Fire”を意味するブルガリア語が現れる。