2025/07/20
Smith & Wesson Lフレーム .357 マグナムリボルバー
Gun Professionals 2014年2月号に掲載
リボルバーは装弾数が少なく、再装填に時間がかかるというデメリットがあるが、使用するアモのプレッシャーや弾頭形状に関係なく確実に作動するというメリットもある。限定的ではあるが、今でもLE機関で使用されているので、リボルバーを過去の遺物と断定するのは早計だ。
リボルバーが米国LE用ハンドガンの主流であった時代に開発され、マスターピースとして急速に普及したスミスアンドウェッソンLフレームの.357マグナムリボルバーを再評価してみよう。
汎用ハンドガン
M&Pシリーズのセミオートハンドガンが大ヒットとなったことに加え、ARスタイルのセミオートライフルをラインナップに加えたスミスアンドウェッソン(Smith & Wesson、以後はS&Wと略す)は、今ではすっかり総合銃器メーカーとして定着した感があるが、かつてはコルトと並んでリボルバーメーカーの代名詞のようなイメージがあった。今でも.17 HMRから.500 S&Wマグナムまでバラエティー豊かなダブルアクション(以後はDAと略す)リボルバーを製造しており、幅広いラインナップは他社の追随を許していない。ビッグゲーム・ハンティングやホームプロテクション、ハンドガン・コンペティションにプリンキングなど様々な用途に対応したモデルが用意されているので、たいていのユーザーはそれぞれのニーズに適したスタイルを見つけることができるだろう。
1挺の銃ですべての状況に対処するのは困難であるということは、以前から述べてきた。程度の差はあるが、それぞれの銃器にはデザインの過程で想定された使用状況や目的がある。限定的な目的のために特化されればされるほど、その他の用途では使いづらいというわけだ。そんな中、比較的多くの状況でそれなりに使えるハンドガンが欲しい場合は、ミディアムフレームの.357マグナムのDAリボルバーが折衷案となる。長年LE機関のサイドアームとして使用された.357マグナムは、今でもトップクラスのマンストッパーとして評価されるカートリッジだ。.38スペシャルのライトロードを使用すれば、初心者に射撃を指導する際にも使用できる。決して万能というわけではないが、多目的に使用できるというハンドガンを1挺選ぶのであれば、中型の.357マグナムDAリボルバーは無難な選択肢だ。
.357マグナム
.357マグナムは、S&Wとウィンチェスターの協力によって開発された最初のマグナムハンドガン・カートリッジだ。開発に大きくかかわったS&Wのダグラス・ウェッソン氏(Douglas B. Wesson)には、大型獣用ハンティング・ハンドガンを誕生させるというビジョンがあり、当初は6-1/2インチ銃身から158グレインの弾頭を1,400fps以上で撃ち出す(ME=初活力は688ft.lbs以上)という目標があった。当時の基準では、非現実的とも思える数値だ。
1935年、ウィンチェスターの新型カートリッジと共に、それを使用するS&Wの大型(Nフレーム)リボルバーが発表された。これが現在、プリウォー・マグナムとも呼称される史上初のマグナムハンドガン、“The .357 Magnum”だ。受注生産品で、銃身長は3-1/2~8-3/4インチの範囲なら1/4インチ刻みで指定することができた。開発コンセプトがハンティング・ハンドガンであったこともあり、当初は6-1/2~8-3/4インチという銃身長が多かったが、凶悪犯罪に対処するLE用としての可能性が見出された後は携行性を考慮した3-1/2~5-1/2インチ銃身の人気が高まり、FBIなどいくつかのLE機関で採用されている。これら元祖.357マグナムリボルバーは現代の感覚でいえばカスタムガンであり、今でもコレクターたちが注目するS&Wリボルバーの最高峰だ。

上から、エクストラ・ラージサイズのXフレーム(.500 S&Wマグナム)、ラージサイズのNフレーム(モデル629- 8、.44マグナム)、下段左からミディアムサイズのLフレーム(モデル686-8、.357マグナム)、ミディアムサイズのKフレーム(モデル64-8、.38スペシャル)、スモールサイズのJマグナムフレーム(モデル60-14、.357マグナム)、スモールサイズのJフレーム(モデル37、.38スペシャル)、特殊ラージサイズのZフレーム(Governor、.410シェル/.45コルト/.45 ACP)。
(撮影協力:On Target)

フルラグ付き銃身を備えた.357マグナムリボルバーとしてはコルトのパイソンが有名だが、それに触発されたようにS&WはLフレームで、ルガーはGP100シリーズでフルラグド銃身を標準化した。(撮影協力:On Target)

LE用リボルバー
元祖.357マグナムリボルバーの製造は第二次大戦によって中断されたが、戦後しばらくして復活し、近代化改修を経て1957年にはモデルナンバーとして「27」が与えられた。チェッカリングが施こされたトップストラップなど、元祖.357マグナムリボルバーの譲りの豪華な仕様は継承されていたが、1954年にはLE機関への普及を考慮した廉価版の“Highway Patrolman”(ハイウェイパトロールマン、後のモデル28)が誕生する。
Nフレームの.357マグナムリボルバーは、フルパワーのマグナムロードの長期使用に耐えうる頑丈なものであったが、その巨体と重量は万人向けとはいいがたい。S&Wは、USボーダーパトロール出身で曲撃ち射手であったビル・ジョーダン氏(Bill Jordan)の意見を取り入れ、ヨーク部を若干大型化させた強化型Kフレームに.357マグナムを組み合わせたデューティリボルバーを完成させた。これが、1955年に発表された“Combat Magnum”(コンバットマグナム、後のモデル19)だ。サイドアームを一日中携行するオフィサーたちにとって、装備の軽量/コンパクト化は負担軽減に直結している。コンバットマグナムは全米のLE界で歓迎されたほか、民間のシューターにも広く受け入れられた。ステンレス版のモデル66をはじめ、フィクストサイト付きのモデル13(カーボンスティール版)やモデル65(ステンレス版)など、バリエーションも展開されてゆく。
Kフレームの.357マグナムリボルバーが開発された1950年代中頃、LE機関の射撃訓練では.38スペシャルのターゲットロードが使用されていた。勤務中に装填して携行するフルパワーの.357マグナムを、実際に射撃する機会は少なかったというわけだ。しかし、後には射撃訓練でも.357マグナムが用いられるようになり、Kフレームの強度不足が表面化した。もともと.38スペシャル用として開発されたKフレームだが、ギリギリの寸法で設計されており、シリンダー前部のガスリングとの干渉を避けるためにフォーシングコーン下部が削り取られている。.357マグナムの使用を可能とした強化型Kフレームでも同部位の強度不足は改善されておらず、クラックなどの不具合が発生した。
Lフレーム
.357マグナムの長期使用に対応するため、S&Wが開発したのがLフレームのリボルバーだ。アジャスタブルサイトを備えたモデル586 / モデル686と、フィクストサイトのモデル581 / モデル681が1981年に発表された。ボアラインとシリンダー軸の距離がKフレームより若干増加し、フレームやバレルも大型化されたが、グリップフレーム部は従来のサイズが維持されており、Kフレームとグリップの互換性をもたせている。バレルは.357マグナム発射時の反動軽減を考慮したフルラグ仕様となり、当時はこれによって一目でKフレームと見分けることができた(後には、フルラグ付きのJ・K・Nフレームリボルバーも作られた)。
.357マグナムのデューティ・サイドアームとしてデザインされたLフレームリボルバーだが、それ以外の口径でも製造されている。.38スーパーや.40 S&Wは.357マグナムと同じ6連発、.44スペシャルでは5連発となった。Lフレームの.357マグナムリボルバーには、携行性を重視した2-1/2インチ銃身からハンティングや競技での使用を考慮した8-3/8インチ銃身まで、多くの銃身長のモデルが製造されている。LE用としてポピュラーであった4インチは、携行性と撃ちやすさのバランスがとれた銃身長だ。コンシールドキャリー用としては少々大きいが、様々な状況への対応を考慮した汎用リボルバーの場合でも、4インチという銃身長は理にかなっている。
今回は、3~4インチ銃身のLフレーム.357マグナムリボルバー5種をピックアップし、それぞれの来歴と特徴をご紹介することにした。


モデル686では1996年にスクエアバットのフレームは廃止され、すべてのバレル長でラウンドバットが採用された(特別仕様品を除く)。また、2001年以降のほとんどのS&Wリボルバーには、インターナル・キーロックシステムが組み込まれている。