2025/06/26
ヒーローが手にしたモデル19

Photos & Caption by Toshi
Text by Satoshi Matsuo
Gun Professionals 2014年9月号に掲載
S&Wモデル19は数多くの映画に登場している。しかし、その代表的作品は何か、と問われると答えに窮してしまう。ヒーローがモデル19を手に活躍する映画がほとんど無いのだ。そのあたりはコルトパイソンやS&Wモデル29などと対照的だ。モデル19はポリスオフィサーの装備品として映画に登場する場合が多い。特に4”は制服警官が使う場合が多く、その結果、登場の仕方は非常に地味になりがちだ。それも1980年代までの話だ。アメリカの警察装備がセミオートマチックにすっかり切り替わった1990年代以降、さらに目立たない存在になってしまった。 その中で記憶に残っているのは『リーサル・ウエポン(Lethal Weapon):1987』。ダニー・グローヴァーが4インチバレルのパックマイヤーグリップ付きを使用していた。ステンレスのモデル66も含め、さらに銃身長を問わないとなると、もうひとつ印象に残っているのは、クリントイーストウッドの『ガントレット(The Gauntlet):1977』だ。2.5”のスクエアバットをアップサイドダウン・ホルスターに入れていた。『ブラックレイン(Black Rain):1989』でもマイケル・ダグラスがモデル66の2.5インチを後半に使う。これもパックマイヤーグリップ付きだった。これらはいずれも1970年代、80年代の作品だ。
そんなわけで映画の中ではどうも目立たない存在になりがちなモデル19(66)だが、日本のアニメではプロのガンマンが愛用する銃として大活躍した。アニメ放送が開始された1971年において、プロのガンマンが選ぶ銃として、S&WのDAリボルバーという選択は正解だ。2.5”では短すぎて、携帯時や速射性での優位性はあるものの、精度や連射にやや難がある。6”は長過ぎて不便だ。従って、一番バランスの良い銃身長が4”だと考えることができる。コルト パイソンという選択もあるが、実用性より見栄えの良さを重視するのはプロっぽさに欠ける。ダブルアクションのプルのスムーズさと、レットオフのタイミングを容易に把握できるS&Wを選ぶのは当然の帰結だろう(といいつつ、あのアニメではなぜかファンニングで撃つシーンもあった。まあ1971年の事だし、アニメなので…)。
現代においてS&Wモデル19という選択は現実的ではない。それでもこだわりを持ってモデル19を使い続けることは間違いではないだろう(のちに“あれはモデル27”立ちという説も出て、実際の設定資料もそうなった時期もある)。時代と共に銃に求める機能的要求は変化し、それに応えた製品が登場している。それに流されることなく、自分の価値観で銃を選択することは間違いではない。
あのアニメがスタートした1971年のモデル19はどの様な仕様のものだったのだろうか。
S&Wがコンバットマグナムと呼ばれるKフレームの.357マグナムリボルバーの生産を開始したのは1955年11月だ。この時点で既に新しい3スクリュー インターロッキング サイドプレートが採用されていた。これはNフレームを使う従来の製品より156gも軽い。
S&Wがモデルナンバーを採用したのが1957年だが、それが定着するのは数年後だ。その間にエクストラクターロッドのロックが左回転に変わりモデル19-1(1959)となり、その後、シリンダーストップスプリングを固定するスクリューがなくなったモデル19-2(1963)に切り替わる。さらにリアサイトのスクリュー位置が変わりモデル19-3(1967)となった。1968年にはグリップスクリューの周囲のダイヤモンド パターンが消えた。1971年に存在したモデル19は19、19-1、19-2、19-3のいずれかだ。ちなみに2014年9月号の表紙に使ったモデル19がこの19-3にあたる。
もちろん、アニメの設定上、その後ずっと同じモデル19を使い続けているとは考えにくい。必要に応じて新しいモデル19に切り替えているだろう。Kフレームはそれほど耐久性の高いモデルではない。1977年には、ガスリングがヨークからシリンダーの移り19-4となった。1982年にシリンダーのカウンターボア加工とバレルピンが無くなって19-5に切り替わる。1988年、ハンマーノーズブッシングが追加され、ヨークスクリューが変更になり、シリンダーを回転させるハンドがフローティングハンドと呼ばれる新型に変更された19-6になる。1994年、エキストラクターのデザインが変わり、リアサイトも変更、アンクルマイクスのシンセティック・グリップが標準装着されて19-7に移行した。1998年には、ハンマーがMIM(金属粉末射出成型法)で製造されるようになり、ファイアリングピンがフレームに移った19-8が登場した。これがモデル19の最終型となり、1999年11月にモデル19は製造中止となって44年間の歴史に幕を下ろした。2005年、ステンレスのモデル66も生産中止となったが、現在、モデル66は生産を再開、市場に供給が続いている。
Photos & Caption by Toshi
Text by Satoshi Matsuo
Gun Professionals 2014年9月号に掲載
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