2025/05/16
S&W モデル624 .44 スペシャル
Text & Photos by Toshi
Gun Professionals 2014年12月号に掲載
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S&WのNフレームで.44口径といえば、誰でも.44マグナムだと思うはずだ。しかしこれは違う。.44スペシャルを使うモデル24の復刻+ステンレス仕様のモデル624なのだ。大型のNフレームなのに、今ではその存在意義が希薄になってしまった.44スペシャル弾を使用するM624をわざわざ選ぶのはいったい何故なのか?
さらばモデル4506
2014年11月号で、S&Wのモデル4506をリポートした。その記事中、SA時のトリガーがひどくグラグラだと指摘した。自分はその後、このグラグラ感がどうしてもガマンできなくなった。
SIGだってベレッタだって、昔のワルサーP38だって、あんなにグラグラ揺れたりはしない。明らかに、絶対おかしい。
銃そのものは、決して悪くはない。個人的にはマイアミバイス繋がりで思い入れもタップリある。が、このトリガーの違和感にはいかんともし難いものがあった。
そこでリポート終了後、購入先のガンショップへ持ち込んで相談することにした。たまたま店頭に最後期のモデル4506が在庫しており、店員と一緒にトリガーの感触を調べてみると、う〜ん、そっちも結構グラグラなのだ。モデル645の時代には、あそこまでひどくはなかったと思うのだが…。
「なんか、ちょっとガッカリだよ」
と、自分が店員に愚痴を漏らすと、
「ウチの中古銃は30日間の保証付きだ。ソイツの場合は壊れてるワケじゃないから返金は出来ないが、他の銃との交換ならOKだぜ」
と、おっしゃるではないか。コレは願ってもない助け舟。有り難い。その店ではすでに5〜6挺の銃を買っているから、一応顔馴染みではある、自分は遠慮なくお言葉に甘えることにして、代わりの銃を探した。心には一挺、当てがあった。
そして程なく交換成立となったのが、今ご覧のモデル624だった。
THE MODEL OF 1985
モデル624は、.44スペシャル口径のステンレス製DAリボルバーだ。ボディには大型のNフレームを使用している。
正式にはMODEL 624:THE MODEL OF 1985 .44 TARGET STAINLESSという。登場はその名にある通り1985年で、発売時の価格は449.50ドル。カタログには88年まで載った後、消えた当初は1万挺の限定という触れ込みだったらしいが、最終的な生産数は資料不足で不明。88年にはヨークの改良が入り、624-1となったところで終わった模様だ。
4インチの他、6-1/2インチのモデルも存在する。また、大手ディストリビューターのLew Hortonが特注した3インチの“コンバットスペシャル”が5,000挺の限定で出たりもした。
名称の中に“1985”と入るのには、理由がある。1950〜67年の時期に、この銃の先代に当たるモデル24:THE MODEL OF 44 SPECIAL TARGETというモデルが出ており、新型を強調する意味で“1985”が入るのだ。
つまり、その先代のステンレスによる復刻版がコレなのである。先代のほうは5,050挺しか造られなかったそうで、いまや発見すら困難な珍品。凄まじいお値段で取り引きされている。なお、ブルーモデルの復刻もあり、そちらの正式名称はMODEL 24:1950 .44TARGET REINTRODUCTIONという。REINTRODUCTION は再販/復刻の意だ。1983〜84年の極めて短い期間に7,500挺のみ造られた。順番としては、このモデル624が後になる。
それで、だ。自分はこのモデル624に、実は前々から目を付けていたのだ。かれこれ半年以上、そのショップで売れずに残っており、出向くたびに眺めるのだが、なかなか決心が付かなかったのである(このパターンは前回のモデル4506と一緒)。購入を躊躇し続けた理由は3つある。
❶何しろ800ドルと超高価。今時の相場とはいえ、やっぱり高い。
❷自分は、どちらかといえば骨董狙いのコレクターだ。60年代、70年代のビンテージ物なら食指が動きやすいが、80年代以降のモデルは二の足を踏む傾向アリ。
❸このモデル624に先立ち、自分は復刻モデル24をまんまと買い損ねた。それは84年に出たLew Hortonの限定品で、3インチ/ラウンドバット仕様の“コンバットスペシャル”(5,000挺限定)だった。相場よりも随分安かったのに、迷ったスキに逃してしまったのだ。その悔しさが尾を引き、モデル624に対して素直になれなかった。
以上の3点が引っ掛かっていたのだが、モデル4506との交換話が出た瞬間、決心が付いたのだった。例によってネタにもなるしの計算も入り、早速250ドルほど追金を払って(モデル4506は550ドルだった)めでたくゲット。
しかし、運よく(?)1年も売れ残っていたのは、やはり800ドルという高価が原因であろう。スキモノでなければオイソレとは払えまい。
ともあれ、1挺の銃を手に入れるまでには、こういった紆余曲折があるのである。