2025/04/19
Ruger LC380 & LCR-22MAG
Ruger
LC380 & LCR-22MAG
キャリーガンのニッチに対応した
ルガーの新製品2種
Text and Photos by Terry Yano
Gun Professionals 2013年6月号に掲載
2013年1月、スターム・ルガーは2種の小型キャリーガンを発表した。.380 ACPのLC380と、.22マグナムのLCR-22MAGで、いずれもユーザーから寄せられたリクエストに基づいて製品化されたものだ。ニッチ市場に対応したこの2挺の存在意義と操作性を検証する。
ルガーのキャリーガン
アメリカでは.45 ACPなどの大口径が好まれる傾向にあるが、常時携行するキャリーガンでは9×19mmや.380 ACPなどを使用する中型~小型オートや、.38スペシャル等の小型リボルバーがポピュラーだ。
同じカートリッジを使用するのであれば、リコイルの強さは基本的に銃のサイズや重量に反比例する。もちろん、グリップ形状や素材等によって多少は変化するが、基本的に軽くて小さな銃からパワフルなアモを発射すれば、リコイルは不快なものとなるわけだ。
Sturm, Ruger & Co., Inc. (以後はルガーと略す)は、2008年のSHOT SHOWで“LCP”(Lightweight Compact Pistol)を発表した。ケルテックのP-3ATにならい、ショート・リコイルの小型オートに.380 ACPを組み合わせたものだ。LCPの成功後も、ルガーはコンシールド・キャリーガンのラインナップ充実に力を注ぎ、同分野で躍進を続けている。今回は、ルガーが年明けに発表した新製品、“LC380”と“LCR-22MAG”を採り上げた。


LC380
まずはLC380をチェックしてゆこう。このモデルを簡単に説明すると、LC9の口径を.380 ACPにしたものだ。発表後すぐに大ヒットとなったLCPだが、.380 ACPのパワーでは満足できずに9×19mmのキャリーガンを望んでいた人も多かったという。そういったカスタマーからの要望を反映させ、2011年1月3日に発表されたのが軽量小型の9mmハンドガン“LC9”(Lightweight Compact 9mm Pistol)だ。
9×19mmに対応させるためにLCPより大きくなったLC9に、再度、パワーの低い.380 ACPを組み合わせるというのは本末転倒に思えるかもしれない。しかし、このアイデアもLC9の時と同様に、ルガーに寄せられたカスタマーからの意見を反映させたものなのだ。
ショート・リコイル機構を備えたミニナイン(軽量小型の9×19mmハンドガン)のLC9は、サイズと重さの割には発射時のリコイルは強過ぎない。しかし、LC9のリコイルを耐え難いと感じたり、スライド操作が困難であると感じたりするユーザーも存在し、.380 ACPバージョンを望む声も寄せられたというわけだ。


.380 セミオート
一般的に、.380 ACPは護身銃のカートリッジとしてはミニマム・パワーと考えられている。また、かつては中型オートの口径としてポピュラーであったのは、作動方式がストレート・ブローバックと相場が決まっていたためで、リコイルを考慮すると小型化には限度があった。また、それらには強力なリコイル・スプリングが備わっており、スライド操作にはそれなりの力が必要だ。
構造は多少複雑になるが、バレルをショート・リコイルさせてロックト・ブリーチとすれば、小型化や操作性改善が可能となる。そうして誕生した小型.380オートが、ケルテックのP-3ATやルガーのLCPというわけだ。だが、携行性を重視してデザインされた小型で薄い.380キャリーガンのリコイルは、ショート・リコイル・バレルによっていくぶんリコイルは緩和されるとはいえ、マイルドとはいいがたい。サイズが小さいLCPは保持しにくい上、狙いにくい小振りなサイト、長いトリガープルやシャープなリコイルなど、初心者でなくとも数多く撃ちたいとは思わないだろう。特に、手の大きな人にとっては非常に撃ちづらい。
一方、LC9などのミニナインでは、カートリッジの威力が大きくなっただけリコイルも大きくなるが、グリップも大型化して保持しやすくなるため、手の大きな人でもそれほど撃ちにくいとは感じないはずだ。
そんなミニナインのプラットフォームに.380 ACPを組み合わせると、パワーが弱まった分だけリコイルがマイルドとなるほか、リコイル・スプリングも弱くできるのでスライド操作も容易となる。キャリーガンには様々なスタイルがあるが、携行性やパワーを犠牲にして、撃ちやすさを含めた操作性向上に重点が置かれた.380オートがLC380というわけだ。


トリガーのストロークは長いが引き味はスムースで、トリガープルの実測値は3.2kg。変則シングル・アクションのプリセット・ハンマーなので、ハンマーが完全に前進した位置(レスト・ポジション)ではトリガーとハンマーの関係は絶たれている。




マガジン・リリース・ボタン(ルガーのパーツ名は「マガジン・ラッチ」)は小さめだが位置はよく、操作性も悪くない。

LC380の特徴
LC380は、多くの特徴をLC9から受け継いでいる。マガジン・セイフティやインターナル・キー・ロックなど、各種安全機構はまったく同じだ。個人的には、長いトリガー・ストロークを持つプリセット・ハンマー・ハンドガンのマニュアル・セイフティや、護身用拳銃のインターナル・ロック機構は蛇足としか思えないが、全米50州での販売を考慮したデザインなので仕方がない。
7ヤード以内の近接戦を想定したハンドガンにはサイトなど不要という意見もあるが、LC380にはLC9譲りのしっかりとしたアイアン・サイトが備わっている。実戦では、拳を突き出すように銃を保持してトリガーを引くか、場合によってはヒップ・シューティングをしなければならないかもしれないが、サイトを用いずに撃ってヒットさせるのは意外に難しい。ストレス下でも慌てずにサイトを用いて正確なショットを放つことができるように練習しつつ、超近接戦でのサイトなし射撃にも対応できるようにしておくのが理想だ。
マガジン・フロア・プレートもLC9と同様に、射撃時にコントロールしやすいフィンガー・レスト付きと、携行性/秘匿性を優先させたフラットなものが付属する。
フィールド・ストリッピング

2 テイクダウン・プレイトを下げ、スライドを3~4mm引いて、テイクダウン・ピンを外す。
自重で落下しない場合は、フレーム右側面の穴からインターナル・ロック用キーなどの細いものを用いてテイクダウン・ピンを押すとよい。
3 テイクダウン・ピンが外れると、スライド・アッセンブリーは前方に外れる。スライド・アッセンブリーからリコイル・スプリング・ガイドとリコイル・スプリング(アウターとインナー)、バレルを取り出すとフィールド・ストリッピング完了だ。






実射
私は、SHOT SHOW 2013のメディア・デイのルガー・ブースにおいて、初めてLC380を撃った。非常にマイルドなリコイルで、片手保持でも設置されたターゲットに難なくヒットできたことに驚いたものだ。
ミニナイン・サイズのショート・リコイル.380オートということで、スライドの操作は非常に軽く、今回スライド操作を試していただいた女性たちにも難なくおこなえた。トリガープルは3.2kg(デジタル・ゲージの5回平均)、ストロークは長いが、引き味はスムースだ。基本操作は女性にもおこなえると考えてよいが、実用精度を伴った射撃がおこなえるか否かは、練習次第であることはいうまでもない。
アモをマガジンに装填する時、5発目あたりからスプリングのテンションはかなり強く感じ始め、7発装填されたマガジンを銃本体に装着する際には、ロック位置まで押し込むのにかなりの力を要した。新品なので、スプリングが馴染めばもう少しスムースになるかもしれない。念のため、フル装填の状態(マガジンに7発、チェンバーに1発)での実射も試したが、問題なく作動した。


マガジンにフィンガー・グリップ・エクステンションを装着すれば、LC380の保持性はさらに向上する。発射時のリコイルは、女性でも片手撃ちできるくらいマイルドで、弾さえあれば、いつでも練習したいと思えるのではないだろうか。
日を改めて行った実射撮影では、射撃経験者のみゆきさんがモデルになってくださった。スタンスもなかなかのもので、女性スペシャル・エージェント風にバッチリ決めてくださって本当に感謝だ。
今回のテスト中、イジェクト不良が1回と、送弾不良が3回発生した。イジェクト不良は腰だめからの射撃時に発生したので、原因はリコイルを逃がし過ぎたことにあると推察される。送弾不良は、RWSのFMJとレミントンのJHPの最終弾で発生した。LC380のようなキャリーガンを見ると、新品箱出しで完全作動することを期待しがちだが、実際はブレイクインが必要な場合が多く、慣熟も兼ねて最低でも100発は撃ちたいところだ。今回の実射テストでは合計約120発消化したが、不発は発生していない。
アメリカではまだ弾不足が続いているが、弾速計測とグルーピング・テストのためにディフェンス用を含む3種のアモを用意した。結果は「カートリッジ・データ(.380 ACP)」の表を参照してほしい。

