2025/06/29
【NEW】懐かしのモデルガン&実銃 ハドソン / ハイスタンダード ハイスタ デリンジャー
マイナーなモデルを数多く製品化し続けたハドソン産業、その中でもマイナーメーターの針を振り切っているモデルのひとつが、このハイスタデリンジャーだ。実銃の方だって、実用性があるのか、かなり怪しいモデルだ。それをモデルガン化するのは、かなり勇気が必要だっただろう。
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ハドソンのハイスタ デリンジャー
自分はコレでも結構なモデルガンマニアを自称する人間だ。中学時代から集め始めたコレクションは、24歳で渡米する直前には100挺を超えていた。
しかし、それほどの数を集めていても、買い切れなかったモデルは山ほどある。その中の一挺が、ハドソンのハイスタンダード デリンジャーだった。


81年の暮れ頃だったか、旧Gun誌の新製品コーナーで制作発表を観た時には、当然欲しいと思った。細身でシャープなルックスが、モダンに見えて惹かれた。
けれど、自分は迷いに迷って、ほぼ同時期に発売されたCMCの樹脂製レミントンデリンジャーのほうを買ってしまったのだ。貧乏学生だった自分は、やれオートバイだの、洋楽のレコードだのと、バイトした金があちこちへ消えていく一方、当時はモデルガンの新製品が矢継ぎ早に出てやりくりが大変だったのである。だからデリンジャー系はCMCのみでガマンし、この歳になるまでハドソンは未体験のままだった。

今ご覧のハドソンはつい最近、ebay経由で手に入れた。数名のコンペティターと競い合い、それでも予想よりは低めの71ドルで落札。
真鍮カートに空撃ちの跡は激しいながらも、未発火で程度は極上だ。元箱もちゃんと付いてきた(説明書は無し)。ハドソンがトイガン業界から撤退したのは2009年の末。少なくとも16年前の製品でこのコンディションなら恩の字だろう。
なお、ハドソンが自社製品を米国へ輸出していたのかは、資料不足でハッキリしない。出品者に質問したところ、「確か2000年頃手に入れた。どこで買ったかは覚えてない」との返事だった。渡米以来、MGCの製品なら頻繁に見掛けてきたが、ハドソンは初めてだ。輸出があったとしても、数的には少数だったのではないか。
イヤしかし、この歳になって、しかも異国の地で、ひょっこり買い逃したモデルガンに出会うなんて少なからず感動ですよホントに。

右:こちらハドソン。実銃に比べて銃口の径が0.1mmくらい大きい。クラウンの処理は無く、またライフリングのモールドも無い。


そんな、ひょっこり出会ったハドソンの第一印象は、「おわー、結構良く出来てるじゃん」 コレである。
くろがねさんの『モデルガン銘鑑』によれば、設計を担当したのはモデルガンデザイナーの御子柴さん。コスト優先のため実銃の計測などはせず、展開図と銃器雑誌等の資料のみで作り上げたのだそうだ。不明な部分はメカとして最善の方法で処理したと。
実銃のハイスタデリンジャーはさほどメジャーなモデルでもないし、80年代の初頭に日本で入手できた資料は多くはなかったろう。また国内記事も、自分が知ってる限りでは旧Gun誌77年12月号に載った7ページの実射リポートしかない。
ただこの旧Gun誌の記事には分解写真もあって内部構造の大体がわかる。十中八九、御子柴さんは参考にしたに違いない。いずれにしても、日本ではほぼ無名のモデルゆえにモデル化はかなりリスキーだった反面、少々ファジーに作っても大丈夫みたいなノリは少なからずあったかと想像する。

右:こちらハドソン。割と良い感じにまとめている。強いて言うなら、オープンラッチ(スターラップ)のツメとエジェクターが絡む部分の前方にわずかな隙間があるのが気になる。それと、有名な“MAGNAM”のスペル間違いもね。


さて、野暮な邪推はこの辺で引っ込めて、実銃についても少し書こう。
登場は1962年だ。上下二連のオープントップ、トリガーはDAオンリーのデリンジャーである。当初は黒モデルのみで、後にニッケルが加わった。口径は.22LRと.22マグナムの二種。.22LR版をD-100、.22マグナム版をDM-101と呼んだ。発売価格は30ドルほど。
ルックスがなかなか独特であるとともに、DAオンリーのトリガーが殺人的に重い。トリガーが折れるんじゃないかと言うレベル。トリガーガードもサムセイフティもない構造のため、安全上重くせざるを得なかったわけだが、何とも凄まじい。そして実際に撃つと、小口径ながらもマグナムなので手が痺れるほどに痛い。見た通りに(?)あれこれ過激な銃。生産は84年まで続いた。

右:そしてハドソン。バレルのオープン角度がやや浅く、エジェクターの稼働距離も実銃よりやや短い。フレーム側のスターラップが絡む軸に、実銃にはない固定用の溝が見える。
ご覧の個体は74年製だ。当時の価格は69.25ドル。RUGERのMKⅠが71.50ドル、コルトのシリーズ70ガバが149.50ドルの時代だ。自分は2007年に347ドル払って買った。今思えばやや高かったかも。ちなみに、.22LRのモデルはただの一度も出会った試しがない。全部.22マグナムばかり。巡り合わせの問題か、或いは.22LR版は生産数が少なかったとか? ハドソンの金型を引き継いで再販したハードフォードのハイスタ デリンジャーは、確か.22マグナムではなく.22LR版だったよね。わざわざ変更するなんて、オシャレで憎い。


話を戻し、実銃とハドソンを細かく見比べると、各部の寸法がずいぶんズレている。具体的な数字は写真のキャプションを参考にして欲しいが、ハドソンは実測抜きの設計という事で致し方あるまい。ただ繰り返すが、雰囲気は上々だ。確かハドソンの黒モデルには白のグリップが付いていたよね。アレを手に入れたら、バッチリ瓜二つになりそう。
気付いた点を列記すると、ハドソンはバレルのオープンラッチ(スターラップ)にクリック機能が無い。実銃の場合、クリック機能が固定を担い、またおかげでエジェクターの動きにもメリハリがあって、バレルを閉める際にスターラップを下ろしたままでもパチンとはまってくれる。一方ハドソンはクリックを省略した代わりに、スターラップがバネ圧によって前方へ押される構造になっており、フレームの軸部の窪みと噛み合って固定する仕組みだ。この辺はコストの影響か。
またハドソンは、バレルをオープンした際、無理するとトリガーがバレルに接触して傷が付く。実銃ではトリガーの上部に逃げの切り込みがあり、バレルへ接触しないようになっている。ココは資料不足が響いたか。
加えてバレルを開けた際に気付くのが、ハドソンはハンマーのリバウンド機能を省略したため、ファイアリングピンが出っ張ったままの状態だ。実銃は無論、しっかり引っ込む。ココもコスト削減で仕方なし。
それと、実銃はトップ部を含めたストラップ全体に艶消し仕上げが施してあり、グリップ部のバックストラップには下部のツノの先端までグルーブが入っている。ハドソンは艶消し処理は省略し、バックストラップのグルーブも上部のみだ。