2025/06/14
ロビンソンアーマメントXCR-Lとタクティカルトレーニング
Gun Professionals 2015年6月号に掲載
マイナーな存在ながら、熱烈なファンを持つことで知られているのがロビンソンアーマメント社のXCRモデルだ。1日で約800発は撃つというタクティカルトレーニングにこのXCR-Lを持ち込み、AR-15と比較してみた。
Rbinson Armament XCR-L
一目惚れ
珍しいライフルを手に入れることになった。ロビンソンアーマメント社のXCR-Lモデルである。こいつは、マルチキャリバー、ロングストロークガスピストンシステムを持つ、いわばミリタリー向けブラックガンである。2003年に始まった“SOCOMトライアル”(USスペシャルオペレーションズコマンドが行った次期ライフルトライアル)の候補として開発されたが、パーツの供給が間に合わずに失格となったという、いわば残念な経歴を持つライフルではある。人によっては「ああっ、あのFN SCARに負けたライフルね」という人もいるが、負けたわけではなく、ブランク(空砲)アダプターのデリバーが遅れてしまい、スタートラインに並ぶことが出来なかった、というのが真相である。
私自身は、2009年にXCRを水中から持ち上げた直後に撃ちまくるという、なんともインプレッシヴなビデオを見て、「おっ!これ撃ってみたいな」と興味を持った経緯がある。2010年のSHOT SHOWでは、このXCRのデザイナーであり、ロビンソンアーマメント社のオーナーでもあるアレックス・ロビンソン氏にも会うことができ、直接XCRについてインタビューできたのは幸いであった。このときに彼が熱く語ってくれたAR-15とAKシリーズの長所や今や時代遅れな部分など、XCRのデザインコンセプトが良く理解でき、一気に好感を持ってしまった。


まず、マルチキャリバーであるというのは、それこそ時代の先端であったといってもいいだろう。それも口径の変更には3分とかからないのだ。以下はその手順だ。
- 安全確認の後、ボルトをホールドオープンさせる。
- バレル根元にあるボルトを、1/4インチの六角レンチで緩める。
- バレルが抜ける。
- 口径の違うバレルを差し込み、ボルトを締め直す。メーカーによって決められた締め付けトルクがあるので、トルクレンチを使う方が確実である。
- アッパーレシーバーをオープンし、ピストン/ボルトキャリアを抜き取る。
- ボルトヘッドを入れ替える。
これで、マガジンさえ用意すれば、スタンダードの5.56mm、6.8mmSPC、7.62mm×39の3つの口径を使い分けることができるのだ。2010年当時、6.8mmSPCは5.56mmに換わる口径としてもてはやされていたので、注目する人も多かったようだ。
しかし、何よりも好ましかったのは、このXCRの素性の良さだ。このとき試させてもらったのは16インチ銃身のXCR-Lだった。まず、バランスがいいのだ。AR-15のピストンガンはすでに各社からリリースされていたが、ピストンシステムを増設しているために、重量が増え、それも大体がフロントヘビーになってしまう傾向があった。XCRの重量は7.5ポンド(約3.4kg)と軽い方ではないが、例えばHK416の7.85パウンド(約3.56kg)と大して変わらない。しかし持ってみた際のバランスは明らかにXCRの方が取り回しが楽なのだ。
気に入った。
スタンダードの5.56mmに、オプションの7.62×39mmのバレルキット。うーん、しかしながら、これだと3,000ドルコースになってしまう。それに、ガンコントロールの厳しいカリフォルニアで、XCRを売っているガンショップをこれまで見たことがない。これはユーズド(中古)が出るのを待つしかなさそうな雲行きである。

XCR イン タクトレ
そんなある日、XCR-Lの出物があるという話がシューティング仲間から入ってきた。早速連絡をして見せてもらうと、これがまたほとんど撃っていないというグッドコンディションの代物だった。値段は少々高めだが、そこはレアモデルが故の“カリフォルニア価格”ということだろう。少々の値段交渉の末、手に入れることにした。
10日間のウェイティングピリオドが、これほど長く感じたのは久しぶりである。翌日にはテストファイアに持ち出すという入れ込みようであった。手に入れたてのライフルでのインプレッションは以下のようなものだった。
- 撃ち心地は、ミッドレングス(M4などカービンレングスよりも、銃口寄りにガスポートがあるもの)のAR-15に比べると、リコイルがきつく感じる。ただし、マズルデバイスは単なるA2バードケージ(いわゆるフラッシュハイダー)なので、マズルブレーキを装着する必要がある。
- 精度、good。100ヤードで1-1.5インチにまとまる精度を持っている。弾との相性をテストする必要あり。
- 姿、good。持ってみた第一印象はナチュラル。セイフティの場所も良く、約60°でオン/オフができる。
- ボルトリリースはトリガーフィンガーで操作可能。アンビ仕様である。
- チャージングハンドル(左側)の操作性はいい。ボルトフォワードを兼ねている。
- トリガープルは、2ステージで約4ポンド(1.8kg)で落ちる。もう少し軽いのが好みだが、これでもじゅうぶんいける。
- ガスピストンシステムは、5段階調整が可能。サプレッサーモードがあるのは、なんとなく嬉しい。(カリフォルニアでは、サプレッサーはほぼ所持不可能)




好感度は高い。ウチに帰ってからは、用もないのに掃除と称してバレルを抜いてみる。今回サイトインは済ませたので、このバレル抜き差し後の精度テストも楽しみだ。
マズルデバイスは、ストライクインダストリー社の“J-Comp”というのを装着してみた。これは日本の89式ライフルのマズルデバイスをコピーしたもので、なんとも細身で麗しい形をしている。300発ほど撃ったはずだが、ボルトまわりの汚れは驚くほど少ない。ピストンシステムの恩恵である。ボルト/ピストンロッドはコネクトしているので、アッパーフレームを持ち上げると簡単に引き抜くことができる。さすがにピストンポート周りはカーボンがこびり付いている。この熱くてカーボンだらけの発射ガスが、撃つたびにボルトに噴き付けるのだと思うと、やはり気分は複雑である。AR-15のガスインピンジメント方式(発射ガスを直接ボルトに噴き付ける)に問題がないのは理解しているし、ミッドレングスガスシステムのマイルドな撃ち味には、大いに魅力がある。それでもやはり、ちゃんと働くピストンシステムには好感が持てるのは、当然であろう。
ここで、友人と話し合ううちに、やはりバトルライフルは使い倒さないとその良さも判らないだろうという話になった。ここはやはり、1日に800発は撃ち込むというハードなタクトレに参加して、それぞれのガンのよさを見極めようという、これまた無謀にも楽しい試みが実現することになった。





ハリウッドクラス
タクティカルインストラクターは、ここ南カリフォルニアにはこの人あり!といわれているファルコンオペレーションズのアンセン“ハリウッド”ベックにお願いした。彼は気心も知れているので、このXCR撃ちたおしという目論見も、快く承諾してくれた。
ただし、クラス内容そのものには容赦してくれるわけではない。いつもの張り詰めた雰囲気の中、セイフティの確認、サイトインから厳しいカリキュラムをこなしていく。
まず気付くのは、XCRのエルゴノミック(人間工学)に基づいたデザインからくる撃ち易さである。スタンディング、ニーリング、シッティング、プローンと、どの姿勢からでも無理なくポジションに入ることができる。また、アンビセイフティの扱い易さは抜群で、セイフティオフは親指、そしてオンはトリガーフィンガーの付け根で操作すると扱いやすいというのもわかった。個人的には、AR-15の90°セイフティには??なので、これはうれしい発見である。ボルトストップの操作感もARのようにわざわざ持ち替える必要がなく、左手はチャージングハンドルに専念することができる。マルファンクション(ダブルフィードなどのジャム)のクリアには、大きな味方となってくれる。
今回のクラスには、比較の対象として2挺のARに登場してもらった。1挺は、ショートストロークのピストンシステムを採用している“FERFRANS”(ファーフランス)社の14.5インチ銃身モデル、そしてもう1挺は、この南カリフォルニアにマニファクチャ-(製造会社)がある“Juggernaut”(ジャガーノート)社のガスインピンジメントARである。
トレーニングの内容は、ここには詳しく説明しないが、朝8時から夕方4時半まで、とにかく撃ちに撃った。走る、撃つ、ターン、撃つ、隠れる、撃つ。4時を過ぎると、もうヘロヘロのくたくたとなる。消費弾数は、この時点で約800発。あとは仕上げの“マン・アゲインスト・マン”(1対1)競技を残すのみとなる。





これはクラスの終わりに、必ず行なわれる言わば“締め”で、この日の優勝者を決める。
まず、50ヤードラインからドラム缶がおいてある40ヤード地点まで、ハリウッドの合図と共にダッシュする。ここからはフリースタイルで、6枚のターニングターゲットを、すべて相手側にフリップしたほうが勝ち、という単純なものだ。しかし、単純なればこそ燃えるのである。要は、外さずに8インチのターゲットを3枚+@フリップさせればいいだけなのだが、これがまた盛大に外すのだ。
クラスは大団円のうちに終了したが、参加者それぞれのインプレッションは以下のようになった。
- 総合点では、XCRが1等賞。どんなポジションでも撃ち易く、慣れれば左チャージングハンドルは理論的である。セイフティは慣れだろう。
- この50ヤードまでのレンジでは、どのガンも優劣つけがたい。ジャムクリアではXCRが一番扱い易い。デザインは好感が持てる。
- Juggernautの16インチ ステンレスバレルは、フルートがあるにもかかわらず重い。遠距離では威力を発揮するだろう。
- XCRは、14.7インチバレル+マズルデバイスを試してみたい。さらに取り回しが良くなりそうだ。
- やはり自分のガンが一番しっくり来るが、XCRのポテンシャルは高い。出物があれば、自分も欲しい。
- 14.5インチのファーフランスは、短いのに精度が高い。セミブルバレルの効用かもしれないが、やはりフロントヘビーは明らかである。
といったもので、図らずもXCRに好意的な結果だった。“J-Comp”の効き目は驚きで、あの肩にかつんかつんと来るショックが、大幅に軽減されている。ライフルにおけるマズルデバイスの重要さを思い知った次第である。
ロビンソンアーマメント XCR-L。去年はレール部分を軽量化した“Key Mod”モデルも登場したという。目の離せないメーカー/ライフルだ。


Text & Photos by Hiro Soga
Gun Professionals 2015年6月号に掲載
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