2025/06/07
POCKET PAL 22/380【今月の,どマイナーWORLD! 18】
Text & Photos by TOSHI
Gun Professionals 2015年11月号に掲載
オートみたいなリボルバー
このコーナーを始めて以来、珍銃ハンターがすっかり板についてしまった自分だ。今月お見せする獲物も、かなりの変り種だぞ。Cobray社のポケットパルピストルだ。
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オートっぽい成りをしているが、コイツはれっきとしたリボルバーである。シリンダーが内部にちゃんと組み込まれている。
そのシリンダーは、バレル部をトップブレークでオープンすれば簡単に取り外すことができる。なぜ簡単に取り外せるようになっているのかといえば、シリンダーの入れ替えによって、口径の異なる二種のカートの撃ち分けが可能な構造になっているからだ。その二種のカートとは、.380ACPと.22LRだ。
バレルは上下二連式になっている。上が380で下が22だ。シールド部には上下二個の穴があり、二本のファイアリングピンが同時に突き出す。
付属する二個のシリンダーの表面には、それぞれ異なったジグザグの溝が掘ってある。トリガー上部の突起がそのジグザグの溝にはまり、トリガーの前後運動をシリンダーの回転運動に換えて、回す。ジグザグの溝の彫り方の違いでシリンダーの停止位置を変え、口径を撃ち分けるのだ。
全弾を撃ち終えると、トリガーが引けなくなって知らせる。そうなるようにジグザグの溝が掘ってある。バレルを開け、トリガーを軽く引くと、シリンダーが浮いてきて取り出せる…。




文章で書くと何だかひどくややこしいが、要するにこの銃は、シリンダーの交換によって二種の口径の撃ち分けが可能な、中折れ式上下二連の小型リボルバーという話なのだ。シリンダーのジグザグの溝は、昔々のウェブリー・フォースベリーのオートマチック・リボルバーのアイデアを拝借した可能性が高い。
実に奇妙な銃、突拍子も無い発想だ。しかし自分はその突拍子の無さよりも、むしろこのスタイリッシュなスタイリングに先ず魅了された。リボルバーなのに、まるでオートのような角っぽいデザイン。『ブレード・ランナー』のCOP357の代わりに、コレでも全然いけたに違いないほどのSFチックでカルトな近未来感覚。シド・ミードもびっくりのセンスの良さなのだ。
自分は長年コイツを狙っており、昨年のガンショーでお手頃価格のものをやっとこ購入した。お代は350ドルを値切って325ドルだった。
登場年と当時の価格は、資料不足でとんと不明。Cobray製品に有りがちな“いつの間にか出て、いつの間にか消えていた”パターンか。
全体にポットメタルを多用し、鋳造のモナカ跡があちこちにお構いなく残る。この高級感の無さと節操の無さが、Cobrayの信条であり身上だ。唯一念入りなのはシリンダーの仕上げくらい。




そして、DAオンリーのトリガーのプルが恐ろしく重い。7kg近くある。VP70の出来損ないのようなベッタリした引き心地だ。安全対策上、致し方ないとはいえ、コレは強烈だ。
しかし、それにしても、何処かで見たようなデザインなんだよなと執筆中に思っていたら、ハタと気付いた。遥か昔、1920年代に登場したモスバーグのブラウニー・ポケットピストル(4連発の小型デリンジャー。あのCOP 357の元ネタ)に外観がソックリなのだ。ラッチの形状など瓜二つ。聞けば、ハンマーのシステムも似通った部分があるという。
な~んだ。センス抜群だなんて褒めちぎって損したぜ、みたいな。とりあえず撃ってみたが、一応は撃てた。一応というのは、.380ACPのシリンダーの回転がイマイチなのだ。空撃ちで試した限り、3発目の停止位置が微妙にバレルとずれるのである。何度試してもキッチリ合わない。なので、.380は大事を取って2連発のみで流した。シリンダーの溝が磨耗しているのかもしれない。.22LR側は5発全弾が滞りなく出た。




何しろトリガープルが異常に重く、じっくり狙いつつ引いたら指がプルプル震えてくる始末だ。一気に引き切るしかない。グリップも、下辺がスカスカでどうにも締まらない。見た目のクールさを意識し過ぎている。せめてフロントストラップの下部は斜めではなく垂直、或いは出っ張ってくれていたら…とは考えるが、そうなると見栄えが損なわれたろう。結局このままのほうが正解か。筆者のような形から入る輩も多いだろうからね。
なお実射の後で、説明書に弾薬指定の注意書きがあるのに気が付いた。「ウインチェスターの弾でしかテストしていないので、ウインチェスターのみ使ってくれ」とある。オートの場合なら弾頭形状やらパワーの微妙な違いが作動に影響もするだろうが、コイツはリボルバーだ。それほどシビアになる必要はなかろう。但し、強度の関係上、下手なリロード弾は避けるべし、程度の意味合いと思う。
ともあれ、色んな意味で妙であり、そこがまたえらく魅力的などマイナー銃…それがこのポケットパルなのだ。


Text & Photos by TOSHI
Gun Professionals 2015年11月号に掲載
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