2025/06/08
HSProdukt XDM-45ACP 4.5
HSProdukt
XDM-45ACP 4.5
Text&Photos by Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Gun Professionals 2015年11月号に掲載
XDMピストルはスプリングフィールドアーモリーのブランドでよく知られている。しかし、これを製造するのは、クロアチアのHS Produktだ。スプリングフィールドアーモリーが持つ販売権はアメリカのみに限定されており、ヨーロッパではHS ProduktのXDMとして供給されている。

アメリカのスプリングフィールド社は2002年にニューモデルとしてストライカー方式のポリマーピストルXDを発表した。このモデルはスプリングフィールド社オリジナルではなく、クロアチアのHS Produkt社のHS-2000をアメリカに輸入し、スプリングフィールドブランドで販売した製品だ。
ヨーロッパの中欧、東欧には1990年以降、独立を果たして出来た小国がいくつも存在し、その中には優秀な小火器を製造するメーカーもある。ソ連が消滅して冷戦が終結、東欧諸国が自由主義経済へ転換したことから、武器の輸出入が比較的自由にできるようになった。彼らの生産する製品で何よりも魅力なのは価格だろう。しっかりとした品質、性能を持ったモデルが比較的安価で手に入る。
この状況に対し、西側の既存メーカーの中には、多額の開発費と多大な時間を掛けて、自社オリジナルの新製品を開発するより、東欧諸国の新進メーカーが開発した優れた製品に自社ブランドを冠してビジネス展開するほうが得策だと考えるところも出てきた。スプリングフィールドアーモリーはこのHS2000を選び、XDと名付けた。名もない小国の製品が注目を集めることは難しい。しかし、スプリングフィールドアーモリーが大々的にプロモートすることで状況は変わる。その結果、XDはアメリカ市場で確固たる地位を築いた。これと同様に、STIもスロバキアのグランドパワー社製GP100にGP6の名を冠して製品展開を図った。そのトリガージョブのすばらしさから発売当時は話題にはなったが、今のところ目立った成功を収めたとはいえない状況に留まっている。

口径:.45ACP
全長:196.5mm
バレル長:116.5mm
重量:765g
装弾数:13+1発

XDと名付けられたモデルはアメリカだけで販売されている。フランスをはじめヨーロッパではスプリングフィールド社の製品は輸入されていても、XDだけはアメリカのマーケットオンリーという契約がHS Produkt社との間にあるためだ。ではクロアチアのHS2000が売られているのか、といえば、西欧への輸出が整っていないため見ることも無かった。たまたま訪れたアメリカで筆者はXDを射撃する機会があった。何とも手に馴染みやすいグリップで、初めて射撃した銃としては異例ともいえるほど良く当たり、その場で持って帰りたい衝動に駆られた記憶がある。
この頃はIPSCに明け暮れており、そこそこ腕に自信もあった。ビジターとして訪れたレンジでインストラクターとして働いていた青年は、筆者の射撃に驚いていた。筆者のイメージとしては銃大国のアメリカで射撃場に勤めるくらいならば、ある程度の射撃技量を持っているはずと思っていたが、聞くとIPSCなど高嶺の花で、IPSCシューターに会えるとは思ってもみなかったと目を輝かされて、照れくさい思いをした。筆者は単に“ヨーロッパのIPSCに参加している”といった程度で、チャンピオンでも何でもないからだ。
その彼に話を聞いてみると、普段撃つのはシングルショットのピストルでシルエットターゲットだという。彼はロングレンジのターゲットを狙うピストルスナイパーだったのだ。普段はお客さんの前では見せないけどと言いながら、.223Remのライフル弾を撃つシングルショットピストルの射撃を披露してくれた。
余談はここまでにして。話を元に戻そう。XDはなかなかの好印象であったことが、今でも蘇る。なるほど、これならアメリカで高く評価され、売り上げを大きく伸ばしたのも当然だ、と納得できる製品だった。








