2025/05/25
The World of Cartridges 2:.45-70 Governmernt (M1873)
Text by 床井雅美 Masami Tokoi
Photos by 神保照史 Terushi Jimbo
2012年 Gun Professionals Vol.1(2012年4月号)掲載

中央:初期の銅製薬莢(ホールデッドヘッド薬莢)の.45-70弾薬断面図
右:高圧に耐えられるソリッド薬莢の.45-70弾薬断面図
.45-70ガバメント
.45-70は、1873年にアメリカ軍が採用した新型ブリーチローダーライフル、スプリングフィールド モデル1873トラップドアで使用するセンターファイア弾薬だ。.45-70ガバメント、または.45-70スプリングフィールドとも呼称されている。
.45-70は、南北戦争後に新規製作されることになったアメリカ陸軍の制式ライフル、スプリングフィールド モデル1873ライフルとモデル1873カービンで使用する 弾薬として、 1873年に制定されている。
弾薬の開発は、ライフルの開発と同じく、アメリカ コネチカット州スプリングフィールドにあったスプリングフィールド造兵廠でおこなわれた。
このモデル1873ライフルに先立ち、アメリカ陸軍は、南北戦争中に大量生産されたマズルローダー(先込め式)のスプリングフィールド モデル1861ライフルをブリーチローダー(元込め式)に改造し、モデル1866の名前で制式ライフルに制定している。これは.50口径の.50-70弾薬を使用した。
.50-70弾薬は大口径で、殺傷威力が大きかったものの、450グレイン(29g)の重い弾丸を発射するところから、初速が1,260fpsと低く、大きくカーブする空中弾道で命中精度が低かった。加えて.50-70弾薬は、弾薬自体も重かった。
.45-70弾薬は、先行した.50-70弾薬を近代化する目的で、これを使用するライフルと共に開発が進められた。
1873年に完成した弾薬とライフル、カービンは、アメリカ陸軍の制式ライフルに制定され、その後アメリカ陸軍によって、長く使用されることになる。第一次世界大戦(1914-1918年)になっても、アメリカの一部の州兵が、スプリングフィールド モデル1873ライフルを、新兵訓練用のライフルとして使用していたという記録が残っているほどだった。
.45-70弾薬の表示法は、口径.45で、薬莢内部に70グレインの黒色火薬を発射薬として装填してあることを表わしていた。
.45-70弾薬は、最初その薬莢を真鍮ではなく、銅で製作していた。また、初期の薬莢の構造は、ホールデッドヘッド薬莢と呼ばれるもので、薄い銅製の筒状の薬莢の底部が二重式になっており、その部分を雷管(プライマー)として利用するようになっていた。
この形式は、高い発射ガス圧に対して耐久性が低く危険なため、すぐに新型薬莢に切り替えられている。新型はやはり銅製だが、底部を厚くし、そこに雷管室(プライマーポケット)を設けたソリッド式薬莢となっている。
この改良後もホールデッドヘッド薬莢は、その発射薬を55グレインに減らして生産が続けられ、カービンで使用する発射リコイルの低い弾薬として利用された。
さらに後年、薬莢の素材は、より高い発射ガス圧力に耐えられるよう、真鍮製に改められている。
.45-70弾薬は、ほぼストレートな薬莢を備えた弾薬で、ソリッドな鉛製の405grの弾頭と70grの黒色火薬を装填してある。その初速は1,350fps、銃口エナジーは1,640ft.lbsであった。
.45-70弾薬は、軍用として使用されたほか、多くのハンティングライフルの弾薬としても利用されてきた。現在も主にハンティング用として供給が続いており、現代の.45-70弾は無煙火薬を使用、弾頭重量も大幅に軽い300grや350grを用いることで初速2,191fps、銃口エナジー3,730ft.lbs程度へと大幅なパワーアップが図られている。


Text by 床井雅美 Masami Tokoi
Photos by 神保照史 Terushi Jimbo
2012年 Gun Professionals Vol.1(2012年4月号)掲載
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございます。