2025/05/01
エスコートBullTac ブルパップスタイル ポンプアクションショットガン【動画あり】
エスコートBullTacブルパップスタイルショットガン
Text & Photos by Yasunari Akita
アグレッシブなデザインのエスコートBullTacは、セール価格でわずか259.98ドルだ。近年目覚ましい活躍を見せるトルコ製だが、これは安い。所詮は価格相応なものだろうと思われがちだが、“お、ねだん以上 BullTac”という可能性もある。これはテストして見る価値がありそうだ。
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Hatsan Arms Escort Bulltac
口径:12GA
全長:673mm
銃身長:18インチ/460mm
チューブマガジン装弾数:5発
重量;3.0㎏
作動方式:ポンプアクション(スライドアクション)
この他、バレル長20インチ、全長715mm、重量3.2kgのロングモデルもラインナップされている。
昨今のアメリカ銃器市場において、年々存在感を増しているのがトルコ製銃器だ。毎年のSHOT SHOW取材では、従来からある大手ガンメーカーのブースの間に、比較的新しいトルコのガンメーカーや、そのアメリカ国内ディーラー/ディストリビューターのブースが散見されるようになってきた。
かつては“どこかで見たようなモデルの模倣品”、あるいは“有名モデルの特徴を寄せ集めたような、安っぽいデザインの廉価モデル”といったイメージがあったトルコ製銃器だが、近年は大きく様変わりしてきた、トルコのガンメーカー数社がそのブランドイメージを大きく刷新し、確固たる地位を築きつつあるのだ。
その背景には、トルコ国内に数多くの銃器メーカーが存在し、その一部は海外の一流ブランドへ製品のOEM供給を行ない、時間を掛けて技術を蓄積してきたということがある。これが全体的にトルコ製銃器の品質と信頼性を底上げした主な理由だろう。またOEM供給はしていないメーカーも、模倣を長く続けてきたことで、設計技術力や銃の外観をデザインするセンスが磨かれたという事もある。一言でいえば、“洗練されてきた”ということだ。
もちろん、“安かろう、悪かろう”といった、従来のイメージを引きずるダメな製品が無くなったわけではないが、性能・外観共に、一流メーカーの製品に匹敵するトルコ製銃器が増えてきている。
ちなみにトルコ国内では250社以上の銃器メーカーが存在し、そのうちおよそ85社がショットガンの製造を行なっているらしい。にわかには信じられないメーカーの数だ。
実際にトルコのメーカーが欧米諸国のメーカーに製品をOEM供給しているという例は少なくない。既存のメーカーにとって、エントリーレベルの製品や低価格帯の製品においては、トルコのメーカーからOEM供給を受けた方が安価に販売でき、品質も安定し、且つ利益率も良いことから、これを積極的に推進しているという例は増えている。
その中でも、その驚異的なコストパフォーマンスで業界に衝撃を与えたのがCANiK(カニック、あるいはキャニックとも発音されるが、トルコ語ではジョニックに近い)だ。ワルサーP99のコピー製品から進化し、独自の発展を遂げたカニックは、2022年の
USPSAナショナルズにおいて一つの偉業を成し遂げた。同社のチームキャプテンであるニルス・ジョナソン(Nils Jonasson)が、カニックSFx Rival(ライバル)を使って優勝したのだ。Rivalはメーカー希望小売価格が700ドルを切るポリマーフレームの安価な製品だが、この競技に参加した他の全米トップシューター達は数千ドルを超えるカスタム2011を手にしていた。しかも採点上で不利とされる9mmマイナーでの優勝だったことも脅威的だ。この出来事は、トルコ製ハンドガン評価を一気に高める転機だったといえる。
さらにショットガン市場において、トルコのメーカーは注目を集めている。今ではアメリカ市場における廉価版のショットガンはほぼすべてがトルコ製だと言い切っても過言ではない。そして低価格であるにも関わらず、品質は悪くない。
そのため、エンドユーザーにとっては一流メーカーのコピーモデルが安価で手に入れられるようになった。1998年に登場し、アメリカ軍のJoint Service Combat ShotgunプログラムにエントリーしたイタリアのベネリM4は、Auto-Regulating Gas-Operated" (ARGO) システムを採用した高性能ショットガンだ。その後、アメリカ軍はこれをM1014として採用している。この実績からベネリM4は、市場での評価も高く、根強い人気を誇ってきた。但し、市場価格はおおよそ1,700~2,000ドル前後と比較的高価であり、一般ユーザーにとってはちょっと手が届きにくい。
しかし数年前にベネリM4のパテントが失効したことを契機に、トルコのPanzer Arms(パンツァーアームズ)、Black Aces Tactical(ブラックエイシズタクティカル)、Orthos Arms(オルタルズアームズ)など数社が、ベネリM4クローンモデルの販売を開始した。これらがどれも、オリジナルと同等の品質や耐久性を持つとまでは言えないものの、スタイルはM4そのものであり、これを買えば軍用ショットガンを手にした気分が味わえる。また実用面でも十分な性能を備えていることから、コスパを重視するユーザーからは高く評価されている。モデルや仕様によって価格帯は異なるものの、セール時には400ドルを下回る価格で入手できるケースもあって、かなりの人気を集めているのだ。
アメリカでもその名が知られているトルコの銃器メーカーは、ATA Arms(アタアームズ)、Kral Arms(クラールアームズ)、Armsan(アームサン)、Yildiz(イールディス)、Derya Arms(ダリアアームズ)、そしてHatsan Arms(ハッサンアームズ:ハッスンアームズ)などが挙げられる。その中でもハッサンアームズはエアライフルでの成功を背景に、ポンプアクションやセミオートのショットガンをESCORT(エスコート)の名称で展開し、一定の評価を得ているメーカーだ。

Images courtesy of Hatsan USA
今回は、そんなハッサンアームズが製造する個性的なポンプアクションショットガン、ブルタック(BullTac)を紹介したい。ゲームや映画に出て来そうな外観と、手ごろな価格のこの銃は、果たして“安かろう、悪かろう”という製品なのだろうか。それとも、価格以上の性能を発揮する優れたタクティカルショットガンなのだろうか。