2025/04/08
Small Arms of 2nd WW ビッカースマシンガンMk.1 Part 3
Small Arms of 2ND WORLD WAR
ビッカースマシンガンMk.1 Part 3
Text by Masami Tokoi 床井雅美
Photos by Terushi Jimbo 神保照史
Gun Professionals 2013年6月号に掲載


1912年11月26日、ガン マシン ビッカース0.303インチ マーク1の制式兵器名が与えられイギリス陸軍制式兵器となったビッカースマシンガンは、第一次世界大戦中に大増産されて、イギリスとイギリス連邦軍に支給され、陸軍の中心的なマシンガンとして使用された。
攻撃用のライトマシンガンとして第一次世界大戦中に追加制定されたルイスライト・マシンガンが、兵士の間で不評だったのに対し、ビッカースマシンガンMk.1は、堅牢で耐久性があり信頼できるマシンガンとして、その重量のことを除けば兵士たちに概ね好評だった。
第二次世界大戦に入っても、ビッカースマシンガンMk.1の信頼性は揺るがなかった。
しかし、その前に、ビッカースマシンガンMk.1のメカニズムについて説明しておこう。Part 1で、ビッカースがハイラム・マキシムによって開発されたことを書いた。そして、彼は最初の試作マシンガンとして、ウィンチェスター1873ライフルを改造して使用したことを記述した。
このことは、マキシムマシンガン、そしてその発展型であるビッカースマシンガンの構造を語る際に、かなり重要だ。
ご存じの通り、ウィンチェスター1873は、トグルリンクジョイントをそのロッキングメカニズムとして、レシーバー内部に装備させてあった。
かつてウィンチェスター社で働き、後にルガーピストルの原型となったボルヒャルトピストーレ(ボーチャードピストル)を開発したヒューゴ・ボルヒャルトが、ボーチャードピストルのロッキングメカニズムとして、トグルジョイントを流用した。
このケースと同じく、ハイラムマキシムもまた、トグルジョイントロックを、彼のマシンガンのロッキングメカニズムとして流用し設計したのだった。
トグルジョイントロックは、ボルトが前進しきって連結する3本のピンが直線上に並べば遊底が開かず、中央のピンの位置を少しずらすだけで、ロックが解除されてボルトを後退させられる至って便利なロッキング・メカニズムだった。
それだけに、ボルトに加圧されている時間が短いリコイルオペレーテッド(反動利用)式の自動火器で利用しやすいロックシステムでもあった。
最初の試作マキシムマシンガンは、ウィンチェスターモデル1873とは似ても似つかない、大きなボックス状のレシーバー(機関部)を装備し、頑丈な三脚架に載せられた、かさばるものだった。
だが、そのボックス状のレシーバーの中には、まさにウィンチェスター1873に装備されていたものと同型式のトグルジョイントが組み込まれていた。
手動連発式のウィンチェスター1873の場合、トリガーガードを兼用したレバーを回転させてボルトのロックを解き、その後ロック本体をレバーで動かしてボルトを後退させた。
それに対し、マキシムマシンガンの場合、発射される弾丸がマズルを離れる瞬間に起こる発射反動(リコイル)によってバレルを後退させ、この動きでトグルジョイント・ロックを支える3本のピンの位置関係をずらしてロックを解く。後退する重量のあるバレルの後方への移動エネルギーが、ボルト前面に伝えられ、ショートリコイル(短後座)した後に停止するバレルに対し、ボルトは、そのまま後退を続ける。そして、発射済みの空薬莢をマシンガンの外に排出(エジェクション)する。この運動中に圧縮されたリコイルスプリングの圧力で、ボルトは再び前進、バレル後端にあたると、バレルを前方に押し戻しながらさらに前進を続け、トグルジョイントロックが再び伸びきってロックが完了する。ボルト内部には、ファイアリングピンと撃発スプリング、そして メカニカルトリガーが内蔵されている。ボルトの後退中にファイアリングピンは自動的にコックされ、メカニカルトリガーで保持される。




ボルトが前進しきってロックされると同時に、メカニカルトリガーは、レシーバーの突起に当たって後退しファイアリングピンをレリース、ファイアリングピンがボルト前面から突き出して次の弾薬が撃発される。マキシムマシンガンは、この一連の動作が繰り返されて外力を加えることなくフルオートマチックに連射を続ける。
ボーチャードピストルが形状的にもウィンチェスター1873のものによく似たロッキングメカニズムを組み込んでいたのに対し、同じトグルジョイントロックを利用する原理は同様だが、マキシムマシンガン、そしてその発展型のビッカースマシンガンに組み込まれたトグルジョイントロックは、長時間の連射に耐えられるように耐久性が高められ、かなり形状の異なった設計のものが組み込まれていた。
発明家の多くは、インスピレーションを受けた製品や考案を改良しようと考えを巡らせるせいか、どうやら最初にインスピレーションを受けた製品から離れることができないものらしい。
弾薬を撃発、発射してボルトが前後動する原理は説明した通りだ。しかし、マシンガンにはさらなる難問が待ち構えている。それは長時間連射を続けるための給弾システムだ。
ボックスマガジンなら、マガジン内のスプリングの圧力によって弾薬が次々と送り出される。しかし、ボックスマガジンの弾薬容量はたかが知れたものだ。ボックスマガジンは、その構造上、本体や内部のスプリングを無限に長くすることが不可能だ。
過去のガトリングガンなどの外力利用の手動式マシンガンでは、落下式のマガジンが利用された。それもマガジン一つではなく、多数のマガジンを放射状に並べたものを手で回転させて連射した。
完全自動式のマキシムマシンガンにこの方式は向かなかった。
そこで考えられたのが、2枚の布ベルトの間に弾薬をはさむベルト給弾方式だった。問題は、マシンガンで、この布ベルトを、どうやったら1発ずつ正確に送り込むことができるかという点だった。

