2025/01/25
Stiller Precision TAC338 Tactical Rifle 試作モデル.338 Lapua
Stiller Precision 試作モデル.338 Lapua
TAC338
Tactical Rifle
Turk Takano
Gun Professionals Vol.4 (2012年7月号)に掲載
市場は.338ラプアの各種ライフルで沸いている。1年半前だったか、某誌の特集でBarrett 98B Cal.338Lapuaマグナムをリポートしたことがあった。中々の性能で感心したものだ。98Bの性能がいまやミリポリ.338Lapua の最新ベンチマークとなったことは間違いないようだ。
ようするに98Bを凌ぐ性能、価格でなければ市場で生き残ることは難しい。
近年、アモ・メーカーも銃器メーカーと密な協力体制を構築、市販するカートリッジも飛躍的な性能向上を遂げた。ファクトリー・アモでこれだけ当たるのなら、リロードする意味がないといった話まで飛び出す始末だ。ただアモを製造して市場に放つという時代は終わった。現実には銃本体のみならず.338Lapuaのアモが高価で、普及にはかなりのブレーキがかかっている。1年半前、アモの価格に度肝を抜かれたものだ。
そして今、あれから10%以上の値上げとなった。フェデラル、レミントンのマッチなら20発入り1箱が140-150ドルだ。1発7ドルとなると庶民にとって半端な値段じゃない。一番安価なHornadyで1発5ドルだ。よほどの金持ちじゃないとプリンキングというわけにはいかない。
値段はともかく.338Lapuaはロングレンジ・アキュラシイ追求のシユーターにとっては注目の的であることは間違いない事実だ。
このところボルト・アクション・メーカーの多くは.338Lapuaの世界にシフト・チェンジしてきた。儲けられそうな分野に進出してきたというわけだ。イラク、アフガン戦争もワインディングダウンし、軍のオーダーも減少してきたはずだ。となれば一般市場が矛先となってくる。輸出もいろいろ制約があり、20年前のようには行かない。しかしながら、従来のアクションをオーバーサイズにしただけでは戦いにくい。特にBarrett98Bは手ごわい相手だ。

.338Lapuaマグナム・カートリッジの開発歴史などについては、過去の某誌2010年11月号のBarrett98Bのレポートで述べているのでご記憶の読者もおられるだろう。新しい雑誌となり、新たな読者も増えたので、重複する格好となるが、再度述べさせて頂こう。
この口径で先鞭をつけたのは英国のアキュラシィ・インターナショナル社だった。もう10何年前の話である。ルーツは1980年代初めに米国のリサーチ・アーマメント・インダストリーズ(RAI)社が試作開発を始めたロングレンジ・ライフル・カートリッジだった。ベース・ケースとなったのは英国生まれのビッグ・ゲーム・カートリッジとして知られた.416リグビーである。これを口径.338にネックダウンし、250grブレットを3,000fpsで飛ばすというものだった。
ところがオリジナル・リグビー・ケースは古い時代のデザインで250grを3,000fpsに加速する為の生ずるマックス60,000PSIの圧力に耐えるケース・ヘッド構造とはなっていなかった。ケースのサイズはそのまま拝借したものの、そのままのデザインで.338にネックダウンして使うには無理があった。RAI社はカートリッジ、ケース製造メーカーとして世界に知られたフィンランドのラプア(Lapua)社に協力を要請した。しかし、RAI社はほぼ時を同じくして経営難に陥り、このプロジェクトから大きく後退した。
ラプア社はこの新しいカートリッジに興味を持ち、RAI社から引き継いだ格好のまま試作開発が進められた。
ベルテッド・マグナム・ライフル・ケースというとケース・ヘッドに鉢巻のようなベルトが付き、何やら強力そうなイメージを与える。しかし最近登場のマグナム・ライフル・カートリッジはいずれもベルトなしだ。ヘッドの内部構造強化でベルトなしに対処している。リローデイングから考えてもベルトは厄介で時代遅れだ。筆者も旧型ともいえる口径7mmレミントン・マグナム/ハンテイング・ライフルなどベルテッド・マグナムを持っている。

.338Lapuaマグナムはイラク、アフガン戦争で一躍、脚光を浴びた。自衛隊でも既に採用しているはずというが、どんなモデルなのか判らない。紛らわしいのは口径.338には.338ウイン・マグナム、.338ルガー・マグナムなどがある。いずれもハンテイング・ライフル・カートリッジで性能から見て.338Lapuaマグナムと比較できる性能ではない。.338Lapuaはこれらより一回りサイズが大きく性能もレベル違いだ。
.338Lapuaは口径.50と7.62mm×51の中間性能を狙ったものだった。米軍には中間を埋める口径として既に.300ウイン・マグがあるが、.338Lapuaマグナムも並行採用している。
タクティカル・ライフルとして.50BMGの時代が去ったわけではないが、.338Lapuaマグナムが急速な勢いで伸びている。カートリッジのサイズを比較すればわかるが.50BMGと.338Lapuaとでは大きな違いがありこれは直接、銃のサイズに跳ね返ってくる。
過去のリポートでも再三触れたが、口径.50BMGの射撃は埃高きもので、射撃するたびに1,000m先の敵から容易に位置が確認できる。また効果的なサウンドサプレッサーのデザインも、このクラスの口径となると難しい。.50BMGのメリットは単に貫通するだけでなく、サイズにものを言わせ炸裂弾など各種タイプによる相乗効果が得られることだ。これも歩兵ライフル・カートリッジと同じで、軽くて、タクティカル用として使いやすく、ロングレンジにおける威力を備えた性能を求めるとなるとそれは夢だ。どこかで妥協しなければならない。
.338Lapuaマグナムの最大有効射程は1,400mと考えて良い。この距離は7.62mm×51NATO有効射程の2倍強だ。ケースが大きくなれば必然的に銃は大きくなる。.338Lapuaマグナムライフルも例外ではないが、バレットM98Bのようにスコープつけて7kg前後というものもある。今回は、このクラスのベンチマークであるバレットM98Bと比較しながらの評価になることは避けられない。
TAC338を借りてきた経緯

Jerry Stiller 社長が射撃仲間ということもありStiller Precision社にはよく行く。わが家から僅か50kmだ。近くに味のいいメキシコ料理店があることも一つの理由だ。
つい最近、事業拡大で新しい社屋に移った。広さにして2万スクエア・フィート、日本流に言えば500坪ぐらいか?…日本で面積の単位として、坪がいまだに使われているかどうかは判らない。
昔の社屋ではマシンが所狭しと置いてあったが、今度は広すぎてスペースだらけ…更なる拡張でこのスペースがうまるのはまだまだ先のことになりそうだ。



Jerry Stiller社長、週末ともなればHD(ハーレー・ダビッドソン)を乗り回す。スポーツカーはコルベットだ。オールアメリカンで日本車や欧州車には一切興味なし・・純正の米国製は何もない昨今だが・・その辺は気にならないようだ。工作機械NCは韓国製が多い。ワイヤーEDMは三菱製が4台あったと記憶している。
ワイオミング大学機械工学部卒というのがバックグラウンドで、ガンスミスがどうのとは無縁の新しいファイヤーアームズ・デザイナーだ。つい最近まで米国軍事産業大手のエンジニアだったが退職した。これまで副業でやっていたライフル・アクションのデザイン/製造が晴れて本業となった。


新しい社屋の中で見慣れないものがあった。
“格好良いじゃない…これは?”
”それは試作した338Lapua タクティカル・ライフルだよ“
”撃てるステージかな?”
“数発、発射機能テストで撃った…それだけだ”
“リポート用にテストしたいのだが、どうだい?”
“うーん…OKだ。数箇所、手を加えてないところがあるので来週までに何とかしておく。テストするのは良いが現在、弾がないんでそれは自分で調達してくれ…それで了解ならこっちに問題はないよ。グルーピングの性能などはわからない。”
“結果がどうでてもそのまま書くが、それでOKならテスト・リポートさせてもらうよ。ところでバレルは?”
“結果が悪けりゃそりゃ仕方が無い。そのまま書いていいよ。バレルはリルジャ、トリガーはレミントン・タイプだがTimney製だ”
そして1週間後にシリアル#30001の第一号プロトタイプを受領した。