2025/04/12
MAC 50 Les Pistolet automatique de 9mm modèle 1950
Les Pistolet
automatique de
9mm modèle 1950
MAC 50
Photos & Report by Tomonari Sakurai
Gun Professionals 2013年2月号に掲載
今も現役!?フランス軍制式拳銃

フランス軍サービスピストル
フランス警察、および憲兵隊がサービスピストルとしてSIG P2022を採用したことは大いに話題になった。ではフランス軍のサービスピストルは何かというと、今ひとつ正確な返答ができない。知人のフランス陸軍のある大佐とこのことを話しても、彼は苦笑しながら「ないよ」と答える。2012年現在はMAS G1(ベレッタM92Gのフランス・ライセンス生産品)を使用しているが、声を大にしてこれが正式というわけではなく、「とりあえずはこれで…」という感覚だ。
実際に見てみるとMAS G1と今回ご紹介するMAC 50は混在している。例えば今、あなたがフランス軍に入隊して装備を支給されるとき、MAC 50を渡される確率もけっして低くない。MAC 50は1978年に生産を終了したとはいえ、軍の保管庫には依然として未使用のものが大量にあるようだ。

口径:9mmパラベラム
全長:195mm
バレル長:111mm
重量:860g
装弾数:8+1発
ライフリング:4条左回り
作動方式:ブラウニング式ショートリコイル


フランス軍サービスピストルの推移を見ていくと、リボルバーからセミオートマチックになったのはMle 35A(Model 1935A)からだ。スイスのガンデザイナー、チャールズ・ペター(Charles Gabriel Petter)が設計したモデルで、1937年以降に使用が開始された。そしてまもなくMle 35S(Model 1935S)も採用された。これらの銃はフランス独自規格の7.65×19.7 mm 弾(7.65mm Long)弾を使用する。
ドイツがフランスに侵攻してきた時、これらの銃は既に配備されていたわけだ。そしてすぐにフランスは降伏した。このM1935Sの基本デザインはそのままMAC 50に引き継がれていく。それだけでなく、このデザインはスイス軍用拳銃更新のトライアルの際、SIG(Schweizerische Industrie Gesellschaft)が利用した。ペター・デザインをベースに名銃SIG P210へと発展していったわけだ。SIG P210はMle 35Aの発展型の一つだといえる。このMle 35AとMle 35Sは、その改良型SM1も加えてアルジェリア戦争でも使用された。




フランスはドイツに侵攻される前、9mmパラベラムのセミオートピストルを独自に開発していた。1928年から1935年にかけてテストが繰り返されたが、結局採用は見送られた。そのピストルは”Le Francais type ARMMEE( フランス軍向け銃)”と呼ばれ、ストライカー方式を採用、マガジンのバンパーの下に予備の弾一発を入れておけるポケットを設けるなど、考え過ぎのいかにもフレンチなピストルだった。やや特異なシステムを持つことや、1kgを超すこともあり1939年に生産が終了した。その間に7.65mm LongのMle 35Aが採用されている。
しかしながら、19世紀末に開発された8mm口径のMle 92リボルバーも並行して使用され、これはなんと1960年代まで使用され続けるのだ。つまり前モデルを引きずるように使用し続け、新型に完全に入れ替えることのできないのがフランス軍の悪い癖のようだ。
1950年代は、8mmのリボルバーと、同じ7.65mm Long弾を使用するものの、マガジンさえ共通化されていない3種類のMle 35シリーズ(SとSM1は共通)、そして9mmパラベラムのMAC 50(あるいはMAS 50)と、実にサイドアームとして5種類が混在したのだ! 現在はMAS G1だと言いたいところだが、前述したようにMAC 50との混用が現在までも続いている。実にフランス的だ。




MAC 50
フランス軍の銃の名称はその生産工場名が使用されることが通例だ。FA-MASライフルも最初のFAがアサルトライフルを意味するフランス語の頭文字をとったもので、その後のMAS はManufacture d'armes de Saint-Étienne:サン=テチエンヌ造兵廠製造という意味だ。MACの場合Manufacture d'Armes de Chatellerault、つまりシャテルロー造兵廠製造という意味で、50は1950年に製造開始されたモデルであることを表している。実はこのMAC 50が制式採用されて増産されるとき、サン=テチエンヌ造兵廠でも生産されている。そのモデルはMAS 50と呼ばれる。ただし設計図は全く同じなので銃自体に違いはない。MAC 50が221,900挺、MAS 50は120,000挺製造されたことになっている。MASかMACのどちらかは、スライド左側の刻印を見れば判別可能だ。本格的な製造は1953年に入ってからで、1978年に終了した。





採用された年代からするとインドシナ戦争に参加し、アルジェリア戦争には数多く参加している。どちらもフランスが敗れた戦争だ。MAC 50を“敗北のピストル”と冗談で言う者もいる。この話はまた後に触れるとして銃を見ていこう。
ブラウニングタイプのティルトバレル式ショートリコイルを採用、ハンマースプリングやハンマー、シアなどは一体化されてハンマーユニットアッシー(フランスでは、このユニットをボディを意味する“Coups”と呼ぶ)に収められ、フレームから容易に脱着できる。このシステムはSIG P210が継承しているのはご存知の通りだ。
セイフティはスライドにあり、レバーを回転させることで突起がファイアリングピンの上に現れ、ハンマーが落ちてもこの突起がファイアリング・ピンをブロックする。機能はそれだけなのでトリガーも引けるし、コッキングも可能だ。
スライド上部にはインジケーターがある。視認性は悪いが暗闇、夜間などでは手で触れることでチェンバーに弾薬がチャージされているか、確認できる。
またマガジンセイフティもあり、マガジンが挿入されていないとトリガーを引くことができない。それに連動する形で、スライドが閉鎖されてないとトリガーが引けないディスコネクター機能も備えられている。
サービスピストルなのでランヤードリングもある。


