2025/01/25
Ruger LCP-LM LaserMax社のレーザーサイトを備えたショート・リコイルの.380 ACPキャリー・ガン
LaserMax社のレーザー・サイトを備えたLCP
Ruger LCP-LM
Short Recoil .380 ACP with LaserMax
Text & Photos by Terry Yano
Gun Professionals Vol.3 (2012年6月号)に掲載
ショート・リコイルの.380 ACPキャリー・ガン
ストレート・ブローバック方式のハンドガンの口径は、.380 ACPが限界といわれている。十分な質量を持ったスライドと、十分なテンションを持ったリコイル・スプリングを備えていても、.380 ACPブローバック・ハンドガンのリコイルはマイルドとはいいがたい。
構造は多少複雑になるものの、バレルをショート・リコイルさせてロックト・ブリーチとすれば、小型化や操作性改善が可能となる。それを実現させ、一般に広めたのは、2003年にKel-Tec CNC Industries, Inc(以後はケルテックと記す)が発表したP-3AT(ピー・スリー・エイ・ティー。アメリカでは「.380」を「スリー・エイティー」と発音することにかけた名称だ。サイズや操作性といったデザイン面はいうまでもなく、価格の面でも.380 ACPキャリー・ガンのスタンダードを築いたといえる。

Sturm, Ruger & Co., Inc(. 以後はルガーと略す)は、2008年のSHOT SHOWでLCP(Lightweight Compact Pistol)を発表し、コンシールド・キャリー・ガンの分野へ大きく進出した。Shooting Industryの記事に掲載されたルガーCEOのマイケル・ファイファー(Michael Fifer)氏のコメントによると、LCPは開発から8ヶ月足らずで市場に送り出されたという。
ルガー初の本格的なポケット・ガンとなったLCPは、ケルテックP-3ATに酷似しているという否定的な意見もあったものの大ヒット商品となり、一時は生産が追いつかずに全米各地で何ヶ月も品切れ状態が続くほどになった。大手ディストリビューター用の特別モデルなども製造され、既に生産が終了したものを含めると現時点で22種類ものバリエーションが存在するとのことだ。

ルガーは、.380 ACPのパワーに満足できないユーザーのために、LCPを一回り大きくした9×19mmのLC9(Lightweight Compact 9mm Pistol)や、フルサイズ・ハンドガンの全長/全高を縮めたSR9c(9×19mm)やSR40c(.40 S&W)といったコンパクト・モデルも発売し、キャリー・ガンのラインナップを充実させているが、サイズが一番小さくて携行性に優れたLCPの人気は依然として高い。LE関係者の需要も多く、2011年3月にはLAPD(ロサンゼルス市警)がバックアップ/オフデューティ・ガンとして認可している。






Image from www.ruger.com
シンプルなオペレーション
ルガーLCPは、ケルテックP-3ATと同様、ショート・リコイル機構を備えた小型の.380 ACPハンドガンだ。エキストラクターの構造やスライド・ホールド・オープン機構の有無など多少の違いはあるが、多くの共通点を持つ。
長いストロークのトリガーもそのひとつだ。ルガーは「シングル・ストライク・ダブル・アクション」という微妙な表現をしているが、ハンマーのコッキングとリリースという2つの役目をこなすのがダブル・アクション(以後はDAと略す)・トリガー・メカニズムであるとする従来の定義に照らし合わすと、レスト・ポジションにあるハンマーをトリガー操作でコッキング/リリースできないLCPやP-3ATはDAではなく、変則的ではあるがあくまでシングル・アクション(以後はSAと略す)と考えるべきだ。
不発となったアモの撃発に再挑戦する場合は、スライドを一定位置まで(約10mm)後退させてハンマーを部分的にコック(プリ・コック)しなければならない。そんなことをするより、手動でスライドをフル・サイクルさせて不発となったアモを排出し、次弾をチェンバーに装填する方が確実だろう。いずれにせよ、そういった事態に陥らないように、携行の際には確実に撃発/作動することを確認したアモを装填しておくべきだ。

特定の追加安全機能を備えていないため、LCPはカリフォルニアなど州によっては新規販売許可モデルのリストに加えられない。該当地域では一般市民による入手が困難という弊害はあるが、シリアスな状況で使用されるキャリー・ガンでは、操作や構造がシンプルであることが望ましく、LCPのデザインはこの点で理にかなっている。LCPを大型化したLC9(9×19mm)では、全米50州での販売を念頭にマガジン・セイフティやインターナル・キー・ロックなど各種安全機構が設けられた。
個人的には、長いトリガー・ストロークを持つプリ・コックト・ハンマー方式のハンドガンのマニュアル・セイフティや、護身用拳銃のインターナル・キー・ロックは蛇足であるとの思いを禁じえないが、銃器規制の厳しい州での販売を考慮したデザインなので、そういった事情を語らずにこき下ろすのは不公平だろう。

ともあれ、機能や部品が追加されれば、誤作動/誤操作の可能性が高まることも事実だ。余計な機構が追加されていないLCPは、シンプルな構造ゆえに故障や誤作動の可能性が低い。護身用拳銃では、トリガーを引けば間違いなく弾が発射されるという信頼性こそが最も重要なファクターだ。

LCPのリコール問題
大人気のLCPだが、初期ロットではチェンバーに装填した状態でコンクリートなど硬い面に落下させた場合、暴発する可能性があったという。
ルガーは2008年10月29日に自社ウェブサイトや各種メディアを通じてLCPのリコールを告知、該当する製品(シリアル・ナンバー370-XXXXX)のハンマー関連部品をアップグレードするため、回収への協力を呼びかけた。改修されたLCPがユーザーへ返却される時、リコールへの理解と協力に対する感謝の気持ちとして、新しいアクセサリーとして追加されたフィンガー・エクステンション付きマガジンが1本進呈されたそうだ。
リコール騒動があると製品のイメージは大幅にダウンするものだが、ルガーの迅速な対応によって、LCPにはそれほど悪いイメージは根付かなかった。それどころか、シューティング・インダストリー・アカデミー・オブ・エクセレンス(“Shooting Industry”誌や“GUNS”誌の出版社であるFMG Publicationsのスポンサーによって運営されている銃器業界の新製品評価機関)の2008年度“Handgun of the Year”を獲得するなど高い評価を得て、その後も順調に売り上げを伸ばすことになる。
LCPにはオートマティック・ファイアリング・ピン・ブロック(AFPB)が備えられていないが、チタン合金製ファイアリング・ピンと強力なファイアリング・ピン・スプリングのコンビネーションによって、落下時の衝撃で撃発しない安全性を確保しているというのがルガーの見解だ。
テキサス州知事とLCP
LCPには、“COYOTE SPECIAL(コヨーテ・スペシャル、モデル・ナンバー3708)”というバリエーションが存在する。このモデルが誕生するきっかけとなったエピソードを、2010年4月28日付けのKETK(テキサスの地元ニュース)とCBS(全米向けニュース)の報道内容から要約して紹介しよう。
同年2月、テキサス州知事リック・ペリー(James Richard“ Rick” Perry)氏は、愛犬とジョギング中にコヨーテに遭遇した。大声で驚かし、追い払おうと試みたが、愛犬に狙いを定めたコヨーテは立ち去ろうとしない。テキサス州では、家畜やペットなどが危険に晒された場合、コヨーテを駆除することができる。拳銃携行許可を持つペリー知事には、ジョギング中に野生動物やヘビなどに遭遇した場合に対する備えがあった。自分たちに危険が迫っていると感じた彼は、レーザー・サイト付きのLCPを抜き、脅威を排除したのだ。

LCPのトリガーはダブル・アクション・オンリーといわれることもあるが、レスト・ポジションにあるハンマーをトリガー操作でコッキング/リリースすることができないので、シングル・アクションと考えるべきだろう。ストロークは長いがスムースな引き味で、トリガー・プルの実測値は3.2kgだ
ペリー知事の武勇伝にあやかって誕生したLCPのコヨーテ・スペシャルは、スライド左側面に“A TRUETEXAN”の文字と遠吠えするコヨーテのシルエット、スライド右側面には“COYOTE SPECIAL”の文字、そしてスライド上面前部には満月をバックに遠吠えするコヨーテと、スライド上面後部にテキサス州のシルエットがレーザー・エングレイビングされた限定版で、同州内の2つのディストリビューターを通じて発売された。

現在は、スライド左側面の文字を“LONESTARCOYOTE PROTECTION”に変更した“LCPCOYOTE2(コヨーテ・スペシャル2、モデル・ナンバー3716)”がルガーのスタンダード・アイテムとなってカタログに掲載されているが、誕生のきっかけとなったペリー知事のエピソードを考慮すると、どちらのコヨーテ・スペシャルにもレーザーが備わっていないのは、画竜点睛を欠くように思える。
