2025/03/05
【Rifleman's Corner】FLサイジングダイ
Rifleman's Corner
Chapter 6
FLサイジングダイ
Turk Takano
Gun Professionals 2012年12月号に掲載

ここで述べているケースリサイジングの手法は、実際にライフルカートリッジのハンドローディングをおこなっていないと、いったい何が書かれているのか、全くわからないかもしれない。実際のところ、ハンドローディングの世界は底なし沼なのだ。やったことが無い方も、その深淵をちょっと覗き込んでみるつもりでお読み頂ければと思う。
2025年3月 GP Web Editor
Gun Professionals 2012年11月号では小面倒くさいBR(ベンチレスト)競技ライフル用ケース(薬莢)作りをリポートした。一見、ハンターには関係ないノウハウと考えられるかもしれない。しかしプリンキングから一歩踏み出し、当たる射撃(タイトなグループを生む)を追求しようとすれば、知っておいて損はない話だ。今回は通常のFL(フルレングス)リサイジングダイも含め、その使い方について述べてみたい。読者の中には、既にこのノウハウ知っているライフルカートリッジリローダーもおられるだろう。別に秘密でもなんでもないからだ。リローディング関係の近年発刊の専門書を読めば、触れられていることでもある。
筆者のリローディングするカートリッジは、ピストルカートリッジ、ベンチレスト競技専用カートリッジ、タクティカルライフル用カートリッジなどいろいろある。ノウハウに若干の違いはあるがオーバーラップしている部分も少なくない。
BRの世界もタイトネック採用によるネックサイザーダイを使用するだけではなく、従来のフルレングス(FL)のノウハウから発展させた新しいスタイルのBR用ネックサイザー兼FLサイジングダイも登場している。そしてBR界では、このFLダイが一般化しつつある。

カートリッジのチューンはいろんなことが関係してくる。特定のモデルで高い命中精度を上げたリローディングのノウハウを、他の同口径の銃にも適用した場合、同じような結果が出るとは限らない。
競技用に限らず、例えハンティング用であっても、所持する銃が高い精度を持つことは誰もが望んでいるはずだ。銃は”当たってなんぼ”であり、よく当たる方が嬉しいに決まっている。
ネックサイザーだけによるチューンアップとなると、どうしてもホット領域に踏み込みにくくなる。となれば最良リローディングデータ模索にブレーキをかけることになる。ホットサイドでタイトなグループを生むということも少なくないからだ。
ホットサイドとなればケースのへたりも早くなる。タイトグループを生む部分を米国BR射撃界ではウインドウ(窓)と呼ぶ。一連の広範囲なロードデータ範囲の中でタイトグループを生むエリア(ウインドウ)が何箇所か存在する。
何故、ケースが使用回数により徐々にタイトになるのか?
まずはブラス製ケースの特徴から述べたい。ブラスケースの歴史は150年以上にもなる。理由はブラス自体の収縮特性にある。現時点でこれに変わるものがないのだ。アルミ製、鋼製のケースも存在するが、限定使用の域を出ていない。ケースレスカートリッジ、プラスチックのライフルケース(ヘッド部以外)が試作開発されたが、これらは実用の域には今もって到達していない。現段階でブラス製カートリッジ優るものはないようだ。
ブラスの優れた点は発射時、プレッシャーでチェンバー壁に張り付き、かつケースヘッドもボルトフェイス間でシールとなり、チェンバーからのガス漏れを防ぐ。発射時、ケースの張り付きと共にバレル全体を含めたチェンバー部は一瞬、膨らむ。もちろんプレッシャーの低下でバレルも元のサイズに戻るのだが、ブラスの戻りが一瞬早い。これはロッキングラグ部にもいえる。信じがたいかもしれないがこの部分も発射の瞬間、延び、そして戻るのだ。
ケースが張り付き、チェンバーから抜けにくいことも起こる。これはケースのへたり、場合によっては不適格マテリアル/熱処理からケースの戻りがバレルの戻りよりも一瞬遅くなることなどから起こる。特にホットロードとなると、へたりもプラスされタイトになることは避けられない。カートリッジをチェンバーに装填、ボルトを閉鎖するとき、力を必要とする。ベンチレストシユーターなら経験しているはずだ。


右:これは6mmPPCケースで、閉鎖時の抵抗感を調整するにはFLダイを調整して行なう。ここで使われているダイはネックサイジングブッシングを兼ねたBR専用FLダイだ。
ケースのどの部分がチェンバーに対して主にタイトになるのか?それはケースのショルダー、そしてヘッド周囲部分だ。よってこの部分を矯正することになる。BR専用FLサイジングダイでは、ブレットを保持するネックサイジング用(ブレットの保持のテンションを変えるための各種サイズがある)のブッシングも交換可能となっている。一般のFLダイと異なり、ボディの矯正量もチェンバーの寸法から割り出したサイズとなっている。これもケースへたりと関係し、必要以上の矯正はしないというのが基本だ。矯正量が大きければケースに与える負担も大きくなり、へたりを加速させる。
一般用のFLダイのネックサイズは初めからフィックスドの標準寸法で作られ、好みまたは最良のネックテンションに変えることはできない。発射後のケースを通常のFLサイジングダイに挿入すると、ネックテンション決めるボタン兼デキャッピングピン(プライマーを抜くピン)はケースネック部をすんなり(発射後のケース・マウス内径は広がっている為)通過し、ケースボデイ内に入る。この時、ボデイそしてネックが矯正される。ケースがFLサイジングダイから引き出されたときケース内部に入ったボタンは絞られたネック内側からネック部分を押し広げ通過、所定の内径とする。
ネックサイザーで外側からネックを絞るネックサイジング法では、ネックの厚さを均一にしないとブレットがセンターに保持されない。BR用のFLサイジングダイは両方の特長を組み合わせたハイブリットだ。しかしタクティカル、ハンテイング用には必要ない。