2025/04/25
B&T Advanced Police Carbine APC9
B&T
Advanced Police Carbine
APC9
Text & Photos by Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Gun Professionals 2012年12月号に掲載
B&T
今回は同じフランス語を話すお隣りの国ベルギーから、やはりフランス語も話すスイスの銃について話そう。
ヨーロッパでサイレンサーといえばこのスイスのB&T。ちなみにこのB&TのあるThun(トゥーン)はドイツ語が使われている地方だ。B&TはOEMで様々なメーカーに製品を供給している。
もともとピカティニーレールなどの銃のアクセサリー製造から始まり、その高い技術からH&KにOEMとしてMP5のパーツを供給するようになった。レールを介して様々なアクセサリーを装着、銃をアップグレードしていく時代の流れにも乗り、急成長したメーカーでもある。サイレンサーもそのアクセサリーの一つだ。サイレンサーを取り付ける際には、銃口にねじ込んで固定するのだが、その際にカリカリカリとカムが当たる音がする。ヨーロッパではこの音が特殊部隊の音と言われるほどポピュラーな存在だ。

MP5のパーツをOEMをしていることもあり、B&TもH&Kの正式なライセンスを得てB&T製のMP5、BT 96を販売していたこともある。
ブルッガー氏とトーメ氏によって誕生したB&T。現在ではトーメ氏が去ったことから社名を改め、もうBrügger & Thomet AG(ブルッガー&トーメ)とは呼ばなくなっている。
このB&Tがアクセサリーだけでなく、銃本体の製造に手を付け始めた。それが、MP9だ。MP9はSteyr Mannlicher(シュタイヤー・マンリッヒャー)が開発したサブマシンガンTMPの製造権を購入、これを大幅に改良したものだ。現在市販されているSMGとしては、最小サイズの9mmフルオートマチックとなっている。ポストMP5として性能が高く、ヨーロッパの特殊部隊の一部に採用され、アフガニスタンで見かけるようになった。しかし、構造が複雑でパーツ点数も多く、高価でもあることから、爆発的な人気にはならなかった。

この世界では、優れた製品でも時間を掛けて、売上を伸ばしていくことが普通だ。世界標準となったMP5でさえ、登場した当時、販売数は伸び悩んでいた。しかしこのGL06は登場とともに一気にヨーロッパ中に広まった。今までにない高い命中精度がこのグレネードランチャー最大のセールスポイントで、暴動はそれを先導しているリーダーを倒すことで早期に鎮圧できる。一点を狙えるグレネードランチャーは、現在このGL06ただひとつといってもいいほどだ。またダットサイトが標準装備されている。

口径は308Winの他、338 Lapuaマグナムも選択できる。B&Tの豊富なアクセサリーから必要なコンポーネントでオーダーが可能。また写真のモデル以外にも、バレルとサイレンサーが一体になったモデルもある。

.30口径のサブソニック弾である300ウィスパーを使用する、スペシャルオペレーション専用のサイレンサースナイパーライフル。実際の射撃では、ファイアリングピンがプライマーを叩く音しか聞こえない。またコンパクトに運べるためそのステルス性も高い。

市販されているモデルとしては世界最小の9mmフルオートサブマシンガン。ピストルをやや大きくした程度のサイズだ。PDWとしてヨーロッパの特殊部隊に採用され、アフガニスタンでもその成果を上げている。ピストルのようにレッグホルスターに装備することができ、フォールディングストックを展開すれば、より正確な射撃も可能だ。ただし、やや複雑な構造から価格が高い。そのため一般的には広がりにくく、特殊部隊のように予算が潤沢な組織だけが採用している。
B&Tはその後、スナイパーライフルとしてAPRを開発、さらに、.300 Whisperを使用する音のしないスナイパーライフルSPR300を市場に送り込んだ。
B&Tと言えば特殊部隊御用達といったイメージが定着したが、次に登場したのがGL06グレネードランチャーだ。スタンドアローン専用のグレネードランチャーは暴動鎮圧用の非殺傷ウェポンとして売り込まれた。他のグレネードランチャーとは比較にならないほどの高い命中精度、そしてリロードが可能な弾薬を使用する事が特長だ。フランス警察が数カ月前に別のグレネードランチャーを新規に調達したにもかかわらず、7,000挺のGL06導入を即決したことは、業界では大きなニュースなった。韓国もGL09やMP9の導入をしている。
そして2011年、B&TのオリジナルSMG、APC9が登場した。これこそがポストMP5として開発されたSMGだ。MP5をOEMとして製造していたB&Tだからこそ、その欠点を知り尽くしており、APC9はその部分をカバーすることで性能アップを図っている。今回はそんなAPC9をご紹介したい。



口径:9mmパラベラム
重量:2,500g
全長:597mm
バレル長:175mm
作動方式:ディレイドブローバック
発射速度:1,080発/分


ポストMP5
世界中に普及したMP5の耐用年数に達する頃、ポストMP5を狙って複数のメーカーが新しいSMGを登場させた。MP5の設計自体は1960年代で半世紀前のものということもあり、H&K自身もUMPなどを新しいSMGを登場させている。ところが依然としてMP5の使用が続いているのが現状だ。
性能的にMP5を超えるSMGがなかなか現れなかったことから、MP5のパーツを交換するなどして延命化が図られている。H&KのUMPでさえMP5を超えることができなかった。そこに現れたのがB&TのAPC9だ。MP5やUMPを研究し尽くしてデザインされている。
最も重視したのが価格だ。MP5に比較してUMPは価格が2/3ほどに抑えられていたが、このAPC9はさらに安く、ほぼ半額だ。この価格にはAimpointのダットサイトやフォアグリップ、予備マガジンが含まれている。



銃の調達コストというものは、その銃の購入価格だけではない。新規に銃を購入すればそれを使いこなせるように兵士たちを訓練しなければならない。そこには多大なコストがかかるのだ。そのためAPCの各種のレバーやボタンは、MP5とほぼ同じ位置にあり、同じ操作性を持たせている。MP5に慣れた兵士であれば、特別な訓練は必要ない。また、MP5用に揃えたアクセサリーも無駄にしない。レールに取り付けられるものはもちろん使用できるが、サイレンサーなどもそのまま使用できるよう、マズル部のサイレンサー固定ラグの形状はMP5と互換性がある。
次に着目したのはMP5の欠点だ。それは最終弾を撃ち尽くした時、ホールドオープンしないという事。一方、APC9はホールドオープンする。
またコッキングレバーは左右どちらでも設定できるアンビ対応だ。また、コストにも関係するが、パーツ点数を極力少なくしたことでメンテナンスも容易にしてる。
作動方式はUMP同様、単純なディレードブローバックを採用。レシーバーもアルミの一体成型である。さらにAPC9のレシーバー内にはリコイルバッファーが設けられ、リコイルを軽減することにも成功している。実射の項で述べるが、その効果は絶大だ。また.45口径が好きなアメリカ市場向けにAPC45もラインナップしている。また、ヨーロッパの多くの警察からの要望でロングバレルを持ったカービンモデルもバリエーションとして用意した。これはバレルが長い分、レシーバーも延長されている。
9mmにしても.45口径にしてもマガジンハウジングのサイズは使用するマガジンよりも大きい。これは5.56mmのアサルトライフルへの発展も考慮しているためで、すでにB&Tではそのプロトタイプが用意されているというので、こちらも機会があればリポートしたい。

