2019/10/07
“ジョン・ウィック:パラベラムの銃器”【月刊ガンプロフェッショナルズ11月号】
10月4日に公開された『ジョン・ウィック:パラベラム』は、普通のガンアクションとは明らかに異なる強烈なインパクトを秘めた映画だ。ハリウッドでアクション映画を製作する際、主要なキャストに対して、射撃トレーニングをプロのインストラクターがおこなって、本格的なガンアクションに仕上げるということはしばしばおこなわれている。その結果、銃の扱い方はそれなりのレベルに仕上がっているものも少なくない。しかし、この『ジョン・ウィック:パラベラム』でキアヌ・リーブスとハル・ベリーが、タラン・バトラーから教えられたテクニックは、映画用の“それっぽく見せる”というものではない。ホルスターからハンドガンをドロウして、実弾を射撃し、連射して複数のターゲットを撃ち倒し、移動しながら撃って、リロードし撃ち続け、さらにリホルスター(ホルスターに銃を戻す)して、トランジション、新たな銃でターゲットを撃ち倒し続ける…といった高度なものだ。彼らはそれを何ヵ月も続けた。監督であるチャド・スタエルスキもトレーニングを受けた。その成果は映画の中にしっかり描かれている。
トレーニング中のキアヌ・リーブス。SIG MPXを撃っている。TTIのレンジには、多数のターゲットが設置されている
特にキアヌ・リーブスが見せるショットガンのクワッドロードはすごい。普通の観客は彼が何をしているのか、理解できないかもしれない。4発の12Ga.ショットシェルを掴み、2回に分けてチューブマガジンに素早くロードしているのだ。2発だけならさほど難しくないが、4発を掴んでこれをスムーズにおこなうことはかなり難しい。キアヌ・リーブスはこの技術を1ヵ月(2ヵ月?)掛けてマスターした。映画をご覧になるときは、ぜひその部分にも注目して欲しい。
タラン・バトラーによるクワッドロード
タラン・バトラーが愛用するショットシェルキャディ(サファリランドのモデル86ダブルショットガンシェルホルダー)。クワッドロードがしやすいように12発をこのように装着できる。縦、横、斜めは好みによるがタランは縦位置に固定する
映画に登場するSTI 2011コンバットマスターは、9mmメジャー仕様となっている。劇中でもちゃんとそれが説明されている。もっとも字幕を見ていると、単に「9mm」としか語られていないので、これが特別なアモであることは判らない。コンチネンタルホテル ニューヨークで銃を選ぶシーンで、コンシェルジュのシャロン(ランス・レディック)が9mmメジャーだと語っているので、しっかり英語の台詞を聞き取っていただきたい。
前作『ジョン・ウィック:チャプター2』で使用されたG34コンバットマスターと今回の映画で使用されたSTI 2011コンバットマスター。G34もちょっとだけ登場する
ガンプロフェッショナルズ11月号ではこの映画に登場する主要な銃をほぼすべて20ページに及ぶ記事で解説している。すべてエキストリームプロップス&ウェポンレンタルズ社で、実際に映画に使用されたプロップガンを取材した。同社はタラン・バトラーの会社であるタラン・タクティカル・イノベーションズ(TTI)からさほど遠くない場所にある。記事ではそのベースになった実銃も取材、タラン・バトラー自身による実際の射撃もお見せしている。実射シーンは「月刊ガンプロフェッショナルズ11月号」内のAR動画にも収めた。
Xtreme Props & Weapon Rentalsのゲイリー・トゥアーズ
「月刊ガンプロフェッショナルズ」読者の方から、「実射の動画にBGMを被せないで欲しい。銃の作動音や射撃音が聞きたい。またスローモーションも不要」というリクエストをいただいたので、今回はAR動画の最後に、BGMなしの実射シーンを加えている。もっともガンマイクを使って音を拾っているわけではないので、実際の銃声とはだいぶ違うが、多少はリクエストにお応えできたかと思う。
実際のところ、銃声はいかなる機材を用いても、その音は記録不可能だし、仮に記録できたとしても再生不可能だ。実際の銃声はとてつもなく大きな音で、こんな音が動画でもしも再生されたらたまったものではない。イアプロテクションなしでは聞きたくない音だ。屋外でもかなり辛く、継続的に直に銃声を聞いているといずれ難聴になってしまう。屋内のレンジで撃つとその音はさらにキツイ。筆者はうっかり7.62×51mmをイアプロテクションなしの状態で屋内レンジで撃ってしまったことある。両耳から脳に突き刺さるような痛みを感じ、その後、数分間耳鳴りが止まらなかった。
劇中で使用されたSIG MPXカービンTTIカスタム。筆者はチャド監督に「あのMPXも9mmメジャーカスタムという設定ですか」と聞いたら、「あれは普通の9mm仕様です」とのお返事だった
そんな余談はさておき、動画ではタラン・バトラーがSTI 2011コンバットマスター、G19コンバットマスターのハル・ベリーモデル、SIG MPX、ベネリM2(すべてTTIカスタムで映画とほぼ同じ仕様)を連射している。そのスピードはすさまじく、訓練すれば、こんなスピードで撃てるようになるのだろうか?と思ってしまう。単にトリガーを引くだけではなく、リコイルをコントロールして撃ち、ターゲットに当てるのだ。
映画に登場した銃を詳しくご紹介している “ジョン・ウィック:パラベラムの銃器”は「月刊ガンプロフェッショナルズ 11月号」に掲載されています。皆さんもぜひお読みください。どうぞよろしくお願いいたします。
TEXT:Satoshi Matsuo
(月刊ガンプロフェッショナルズ副編集長)