2026/04/03
【気鋭作家×HOBBY JAPANコラボレーションナイフ企画】 市川志郎 I川商店
気鋭作家×HOBBY JAPAN コラボレーションナイフ企画
市川志郎 I川商店
「気鋭作家×HOBBY JAPANコラボレーションナイフ企画」の各作家にクローズアップ。ナイフと作家へのご理解を深めていただければればと思う。
「ここまでのすべてがナイフメイキングに繋がっているんです」
「ナイフをつくりだしたのは2020年からですが、子どもの頃から外で遊ぶのが好きで、刃物は身近にある存在でした」
市川志郎さんの人気は、カスタムナイフ界の中でもひときわ目を引く。ショーでは常に完売。多数のリピーターがいるが、新規のカスタマーも彼の作品を手に取って吟味している。ショーごとに新作や意欲作を並べているが、いずれも一定以上のデザインクオリティを保ちながら、ひと目で「l川商店」と分かる個性を持っている。そこに人気の理由が潜んでいるのだろう。
そんな市川さんは、冒頭の言葉どおりナイフを作り出してまだ5年足らず。新人と言っても良いほどのキャリアだが、小さな頃からアウトドアに親しんできた彼にとって、まさしく刃物は身近にある存在だった。
「ナイフそのものに興味を持ったきっかけは映画です。『ランボー』や、トミー・リー・ジョーンズとベニチオ・デル・トロが共演したナイフ格闘アクション映画『ハンテッド』を観て熱くなりました。高校生の時にはお金を貯めてマイクロテックを手に入れたりしていました」
当時好きだったのは、マイクロテックの他にストライダーやグレッグ・ライトフットなど。実用を第一義としながらも、独特の「色気」に多くのファンが魅力された作品の数々だった。
そんな市川さんは、成人してからはハンティングを始めるように。山に入って数日間過ごすスタイルを好んだので、必然的に道具を厳選する必要があった。その際に気になったのがナイフだった。
「理想は、それ1本で獲物の止め刺しやスキニングからユーティリティ的な用途にも使えるナイフ。なかなかこれは、と思える1本に出会えなかったので『だったら、自分でつくろう』と思ったんです」
世界がコロナ禍に見舞われていた時期でもあった。外出もままならない状況が、ますますナイフ制作へと向かわせた。
「参考にしたのは、ナイフメイキングについて書かれた本がメイン。デザインや削りといったものも独学で身につけていきました」
面と面が複雑に絡む立体的なデザインと精緻な仕上げの作品を見ると、独学という言葉もにわかには信じ難い。「デザインに関しては、航空工学などで学んだことも役立てることができたように思います」
市川さんの小さな頃からの夢のひとつが「空を飛ぶこと」。ご存じの方も多いだろうが、本業はパイロット。初志を貫徹した結果である。そこまでの過程でふたつの大学で専門的な学問を納めている。流体力学などに則った「理にかなったデザイン」は、どのようなものか、どのような思考プロセスで生まれるかといった感覚、さらには「PDCA (分析・計画・実行・改善のサイクルを繰り返すことで、成果を最大化する技法)」などものづくりの思考といった「基礎」を身につけることも役立っているという。
「ナイフづくりには、ここまでの経験がすべて繋がっています。その過程で多くの人たちに助けてもらってもきています」 そう語る市川さん。つくるナイフは「ハンティングに使える1本を」とつくり始めた当初から一貫して「実用」を意識してきている。
「今回のモデルは、ナイフのライトユーザーにも親しんでいただけるような『ユーティリティ性』をテーマにしました。もちろん、タフなユーザーにも自信を持って使っていただけるような実用性も追求しています。他のモデルでも同じプロセスを取るのですが、今回も、さまざまなナイフを使う分野のプロフェッショナルの仲間たちとの協議を繰り返しました。その結果『ちょうど使いやすい』モデルになったと自負しています」
市川さんの言葉通り今回の「Core Breach」は、初めてナイフを手にする人からヘヴィーユーザーまで安心して使えるユーティリティモデル。
実用性を追求した結果たどり篇いたタントーブレード。市川さんの特徴のひとつでもある直線的なシルエットを、汎用性をより重視したデザインにアレンジした結果、メインエッジと切先が緩やかな曲線で繋がるシルエットとなった。どこか日本刀を連想させるデザインは、面と面が重なる市川さんらしいデザインと精緻な仕上げも相まって「持つ楽しみ」も味合わさせてくれるマスターピースとなった。
「ナイフがあることで広がる楽しさを感じていただければと願ってつくりました。ぜひ多くの方に手に取っていただきたいです」
市川さんはそう語る。
ブレード長:135mm
ブレード厚:5mm
ブレード材:MAGNACUT
ハンドル材:ドライカーボン
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構成:服部夏生(刃物専門編集者)
この記事は月刊アームズマガジン2026年4月号に掲載されたものです。
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