2025/02/04
昭和大好きかるた 時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る 第20回「と」
時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る
第20回
と
ドラゴンクエスト
令和となってはや幾年。平成生まれの人たちが社会の中枢を担い出すようになった今、「昭和」はもはや教科書の中で語られる歴史上の時代となりつつある。
でも、昭和にだってたくさんの楽しいことやワクワクさせるようなことがあった。そんな時代に生まれ育ったふたりのもの書きが、昭和100年の今、"あの頃"を懐かしむ連載。
第20回は、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之がお送りします。
昭和61年5月27日。とんでもないゲームが発売されます。
「ドラゴンクエスト」です。
“ドラクエ”の略称も有名ですね。もはや日本人であれば、誰もが知るものであり、説明は不要なゲームでしょう。日本を代表するコンピューターRPG(ロールプレイングゲーム)です。
友人の兄ちゃんが持っていた魅惑のゲーム
ではあるものの、実は私のいた町では、発売当初はそれほど騒がれませんでした。
当時、私やその友人たちは、例外に漏れずファミコン世代であり、放課後は誰かの家に集まり、ゲームをする流れが定番でした。そして我々はシューティングゲームに大ハマリしていました。当時の私は「グラディウス」大好き少年でした(詳しくは『か 隠れ〇〇』の回をご参照ください)。あのスピード感、画面の美しさに魅了されたといっていいでしょう。シューティングゲーム大ハマリ少年であったのに加え、「なんか難しそう……」というのが、「ドラクエ」に手を出さなかった理由なのかもしれません。
ある日、友人に「ウチに来て『アトランチスの謎』やろうぜ。まだ隠し扉があるはずだ」と誘われ、当時仲良かった数名と彼の家に行きました。
彼が得意顔でリビングのふすまを開けると、中学生の兄が先にファミコンをやっていました。彼は面目丸つぶれとばかりに、泣きべそかきながら「約束したじゃん(怒)。今日は僕が使うって!」とブチ切れ、兄弟げんかを始めました。
しかし、もともとそのような約束があったことを兄者も思い出したのか、「分かったよ、だからキリの良い所までやらせろ。それまでちょっと待ってろ。だからキリの良い所までやらせろ」と回答し、彼はしぶしぶその条件を飲みました。
その時兄者がやっていたのが「ドラクエ」だったのです。

彼の家にはコロコロコミックも揃っていたので、読みふけったり、部屋の隅でビックリマンシールの交換をしたりするなど、仲間たちは思い思いに待ち時間を過ごしました。
しかし私はそれらには参加せず、兄者の真横に座り、「ドラクエ」の画面に見入っていました。これが、私と「ドラクエ」の出会いの瞬間です。
兄者がコントロールする主人公が、平野をさまよい、敵と遭遇し、戦い、倒し、ひたすら歩くたかだが10分程度のシーンでしたが、私は完全に引き込まれてしまい、なかなか現実世界に戻ることが出来ませんでした。
どこぞの城に入り、「ふっかつのじゅもん」(これについては後述します)を表示させ、自分のノートにさらりと書き留めると、「ほらよ」と不貞腐れたように、コントローラーを友人に投げつけ、部屋を出ていきました。
その後、ファミコンが自由になった我々は、「アトランチスの謎」をはじめとして、「グラディウス」「ゼビウス」「マイティボンジャック」と変わるがわる楽しみます。
ちょっとゲームに飽き始めたころ……。
「次何する?」と聞かれたので、私は「ドラクエやりたい」とすぐさま提案。それに対し「あれは兄ちゃんのだからダメだ。バレたら殺される」と拒否されます。昭和の兄弟関係は、完全に兄による暴力支配(文字にするとものものしいですが、まあ、そういう感じです)だったので、これは当然の返答です。
全小学生が泣いた!! 「ふっかつのじゅもん」
この「やってみたい」衝動は家に帰ってからも押さえられず、それからすぐに、私は「ドラクエ」を購入しました。
スイッチをオンにすると、あの壮大なオープニング曲が流れてきます。明らかにこれまでのゲームとは異なり、まるで映画の始まりのようです。
プレイを始めるにあたり、まず主人公の名前を決めます。誰もがそうであったように、まずはプレイヤーに自分の名前を打ち込みます。4文字制限なので、我が名の「まさゆき」はぴったりです。なお、濁点もひと文字になってしまうので、例えば「だいご」だと、5文字使ってしまうので、使えないどころか「だいこ」となってしまいます。
いよいよ冒険のスタートです。画面に映る主人公は私の分身です。まるで自分自身がゲームの中に入ったかのような錯覚に襲われます。
鳥山明先生の描くモンスターは、実に個性的で、愛らしい。ゲーム中に流れるすぎやまこういち先生作曲の数々の音楽は、ドラクエの世界観そのまま。これらも人気が出た理由でしょう。
最初の頃は面白さが勝ち、ネガティブな部分は見えてこなかったのですが、ゲームが進むにつれて、レベルを上げ、お金を貯めるのが、実に苦痛となります。必ず1対1の対決となるので、戦いも単調です。
何よりも、当時の小学生たちを悲劇のどん底に落としたのが「ふっかつのじゅもん」の存在です。
セーブするには、教会で神父様より「ふっかつのじゅもん」という名のセーブデータのコードを聞く必要があったのですが、最大20文字の意味のない平仮名の羅列で、ひと文字でも違えばアウトというシビアなものでした。その際は、おどろおどろしい音楽と共に「ふっかつのじゅもんがちがいます」と画面に表示されてしまいます。どんなにレベルを上げていようが、高価な防具を買った直後であろうが、すべてが水の泡。セーブ以前の状態に戻されます。涙をぬぐいながら、「あ」を「ぬ」に打ち変えて再度試したりするのですが、成功した試しがありません……。
大ヒットを受けてほどなく「ドラゴンクエストⅡ」が発売されました。今度は3人パーティ制を取り入れ、ゲーム中のイベントも多くなり、かなり良い方に改善されましたが、あの忌々しい「ふっかつのじゅもん」は継続。こちらでも何度泣かされたことか……。
そして「ドラゴンクエストⅢ」で、ようやくふっかつのじゅもんは廃止され、セーブは簡単なものとなりました。他に改良したところもあり、ゲームの内容も操作性も格段に向上しました。

この「ドラゴンクエストⅢ」ですが、当時は購入するために並ぶ必要がありました。私は発売からちょっとたってから購入したのですが、それでも百貨店の前に並んだ記憶があります。
僕にとっての「ドラクエ」はこの3部作の印象が強いです。
TEXT:菊池雅之
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