エアガン

2019/05/03

「オプティクスレディ」の最新事情とは【最新GUN事情】

 

毛野ブースカがアメリカ在住のリアルガンレポーターのSHINに、ガンやタクティクスに関する疑問、質問を聞いてみようというコーナー。今回は「今年のショットショーはどうでしたか?」「ピストルキャリバーカービンって実銃でも流行っているんですか?」という2つのテーマをもとに、SHINにアメリカの最新ガン事情を語ってもらった。

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

 

 

【SHIN】
 
ついにドットサイトをスライドに直付けできるモデルが大手メーカーから発売になるんですね。
 
【毛野】
 
そうなんですよ! 東京マルイは「マイクロプロサイト」を装着できる「ハイキャパD.O.R(ダイレクトオプティクスレディ)」モデルを発売していますし、ハンドガンへのドットサイト取り付けという流れは確実にエアガンにも起こっています。
 
【SHIN】
 
ドットサイトを含め、レンズを使って照準を行なう光学照準器をオプティカルサイト、略してオプティクスと呼びます。実銃の世界では新製品のほとんどが「オプティクスレディ(光学照準器対応)」のバリエーションを用意していますし、今後はもっと広がっていくでしょうね。
 

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

東京マルイから発売されたハイキャパD.O.R。同社のマイクロプロサイトが搭載できるようにデザインされている

 

 

【毛野】
 
ハンドガンにおいて、これまでどおりのフロントサイトとリアサイトを使う「アイアンサイト」と「オプティクス」、どのような違いがあるのですか?
 
【SHIN】
 
両方に利点があり、また弱点もありますね。ではまず、ハンドガンにおけるアイアンサイトについて、その仕組み、種類も含めて紹介して行きましょう。まずアイアンサイトはフロントサイトとリアサイトからなっています。そしてフロントサイトをリアサイトの中央に合わせることで、照準が完了します。
 
【毛野】
 
リアサイトとフロントサイトが正しく合わさった状態を「サイトアラインメント」と言いますね。
 
【SHIN】
 
そのとおりです。正しいサイトアラインメントが得られた場合。着弾点はフロントサイトの頂点部分になります。ちなみに着弾点をサイトと同調させる作業を「サイトイン」と呼びます。
 

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

正しいサイトピクチャーの状態。人間の目は1つの距離にしか焦点を合わせることができないので、実際にはフロントサイトにのみ焦点があっており、リアサイトとターゲットはぼやけた状態になる。その上でフロントサイトとリアサイト、そしてターゲットの3つを正しく並べなければならないので、正確に照準を行なうためには時間と慣れが必要になる。これらがアイアンサイトの弱点でもある

 

 

【毛野】
 
弾は発射後落下しますから着弾点は距離によって異なりますよね。ハンドガンの場合どれぐらいの距離に合わせるのが普通なのですか?
 
【SHIN】
 
ハンドガンは50mが実用的な最大射程です。ですので、中間点の25mでのサイトインをおこない、それ以上離れた場合は弾が落下するのに合わせて少し上を狙うというのが基本ですね。
 
【毛野】
 
エアガンの場合は、サバイバルゲームやシューティングでもっとも使う距離でゼロインするのが良さそうですね。
 
【SHIN】
 
用途に合わせてゼロインの距離を変える方が良いと思います。フロントサイトとリアサイトが正しくあった状態が「サイトアラインメント」であり、さらに「サイトアラインメント」を保ったままターゲットに向けた状態が「サイトピクチャー」と呼びます。
 
【毛野】
 
なるほど。フロントサイト、リアサイトが並び、その先にターゲットを正確に捉えた状態を「サイトピクチャー」と呼ぶのですね。
 
【SHIN】
 
そうです。射撃を正確に素早く、様々な環境で行なうために多くのアイデアが生まれ、様々な種類のフロントサイトとリアサイトが存在しています。
 
【毛野】
 
なるほど。シンプルに見えるアイアンサイトにも、素早く正確に狙うためのさまざまな工夫や種類があるんですね
 
【SHIN】
 
そうです。様々な光の環境に対応するために白ペイントを使ったホワイトドットサイト。自己発光する放射性物質であるトリチウムを使ったナイトサイト。集光ロッドを使ったファイバーオプティクスが主な種類ですね。さらに着弾点を簡単に調整できるアジャスタブルリアサイトと、頑丈なフィクスドサイトにも分けられます。細かくはフロントサイトとリアサイトノッチの幅の選択も重要です。フロントサイトとリアサイトがゆるく隙間が空いた状態で合わさるサイトアラインメントの場合、素早く狙えますがサイティングの精度は低下します。逆にリアサイトのノッチにぴったりとフロントサイトがはまり込む場合、サイティングの精度は上昇しますが、狙うためのスピードは遅くなります。
 

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

オリジナルのM92FS(写真右)ではスライドと一体のフロントサイトにホワイトペイントによるドットが加えられている。M9A3ではアリ溝(ドープテイル)によって自己発光するトリチウムナイトサイトがホワイトペイントとともに取り付けられている

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

リアサイトにはノッチの両側に2点、M92FSでは白いペイントで、M9A3ではトリチウムによるドットが追加されている。フロントサイトとリアサイトを見つけやすくする3ドットサイトと呼ばれるコンバットハンドガンでは一般的なサイトデザインだ

 

 

【毛野】
 
なるほど。使用目的に合わせてアイアンサイトの組み合わせを選ぶのは重要ですね。例えばサバイバルゲームやタクティカルシューティングで使う場合、頑丈で精度をある程度犠牲にしても素早く狙えるほうがいい。逆に精密射撃用の銃では調整が簡単に行なえ、精度を優先したサイトの選択が重要ですね。
 
【SHIN】
 
用途に合わせたサイトを選ぶのが重要だと思います。
 
【毛野】
 
オプティクスをハンドガンに取り付けるとどのような利点があるんですか?
 
【SHIN】
 
アイアンサイトとオプティクスを使ったサイティングの方法には大きな違いがあります。オプティクスはスクリーンに投影される点をターゲットに合わせるため、サイトアラインメントがありません。
 

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

ドットサイトオプティクスを使ったサイトピクチャー。ターゲットに目の焦点を合わせたまま、ドットサイトのスクリーンに浮かび上がる点を合わせれば照準は完了する。アイアンサイトに比べて視野が広く保つことができ、ターゲットを正確に見て判断することができる

 

 

【毛野】
 
なるほど、フロントサイトとリアサイトがもともとないですからね。この場合、目の焦点はどこになるのでしょうか。
 
【SHIN】
 
目の焦点はターゲットに合わせた状態を保ちます。そこに赤いドットを重ねるようにするだけで照準が完了します。オプティクスをハンドガンに搭載するのは競技用のレースガンではすでに30年ほど前から行なわれているんです。
 
【毛野】
 
確かにそうですね。最近はオプティクスも小型化され信頼性も向上したのでスライドに直接取り付けるスタイルが可能になったということですね。
 
【SHIN】
 
そうですね。ミニレットドットと呼ばれるものは古くはドクターオプティクスと呼ばれるヨーロッパ製のものがあり、近年ではトリジコン製RMR、リューポルド製デルタポイントプロの2種類が信頼性の高いハイエンドモデルとして使用されています。
 

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

C-MORE製RTS2ドットサイト。人気ある小型オプティクスの1つで、電池交換は横のトレーを引き出して行なう。スイッチングシステムや耐久性の面でスライドに取り付けての本格的な使用には絶えられない

 

 

【毛野】
 
米軍の新型採用ピストルであるM17にもデルタポイントプロが指定されて搭載されていますね。
 
【SHIN】
 
アイアンサイトに比べ、ドットサイトは多くの面で利点のあるサイティングシステムです。もっとも大きな利点は、ターゲットに焦点を合わせたままドットサイトの点をあわせれば照準が完了するところにあり、これにより一般的にはより素早く正確なサイティングが行なえるし射撃を学ぶための習熟期間も短くできます。さらに実戦的な面から見れば、銃を向けた相手に焦点を合わせたまま正確なエイムが行なえるので、相手の行動に合わせた判断とリアクションタイムが短縮でき、またガスマスクやナイトビジョンを装着した状態で、フラッシュバン(閃光手榴弾)が発生させる煙やウェポンマウントライトやパトロールカーのライト等、明確な視界を妨げる環境と複雑な光が混ざった場合でも、ドットサイトは正確な照準が可能となります。
 

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

デルタポイントプロは振動を感知すると自動的にオンとなり、一定時間動きを検知しないとオフとなる機能を備えている。高い完成度のマイクロドットサイトだが、これまでに複数回にわたりドットが消える、スイッチシステムの故障による電池切れ等の問題を、複数の個体で経験している

 

 

【毛野】
 
なるほど。今ではカービンのほとんどにドットサイトやショートスコープといったオプティクスが搭載されていますから、ハンドガンに同じ流れが来てもおかしくはないですよね。
 
【SHIN】
 
まったくそのとおりです。オプティクスを使ったサイティングはアイアンサイトを使ってのサイティングに勝るのは確かです。ですが、その上でマイクロドットの弱点は耐久性にありますね。大幅な小型化と軽量化による製造上の技術的な難しさ、そして激しく動くスライドにマウントされるスライドマウントマイクロドットにはいまだ信頼性の面で問題が多いと思います。私自身、複数のトリジコン製RMR、C-MORE製RTS、リューポルド製デルタポイント等、ハイエンドなスライドマウント式のマイクロドットを使用し、そのすべてで致命的な問題を経験しています。
 

 

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

スライドマウントオプティクスにはスライドの前後動に合わせて激しい衝撃が加わる

 

【SHIN&毛野ブースカの最新GUN事情】オプティクスレディ

ドットサイトのレンズが何らかの理由で妨げられてしまった場合、銃を斜めにして視界を確保しスライドの角や、飛び出したエキストラクターの角と言った目印を使って照準を行なう

 

 

【毛野】
 
やはり激しく前後するスライドに電子機器を載せるのは不安がありますね。
 
【SHIN】
 
米軍では現在、トリジコン製RMRバージョン2と、リューポルド製デルタポイントプロの使用を視野に入れてハンドガンへのオプティクス取り付けプログラムを進めていますし、小型ドットサイトの信頼性は今後向上していくでしょう。それにあわせて値段も入手しやすいものになり、より一般的になっていくと思いますが、今はまだ発達途中のテクノロジーだと言えるでしょう。
 

 

 

TEXT:SHIN、毛野ブースカ
PHOTO:SHIN

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2019年6月号 P.140~143より抜粋・再編集したものです。

 

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