Springfield Armory 1911 EMP
世界中にある1911 とそのクローンは.45口径仕様をベースにしている。しかし、現在は9mm×19が主流であり、このサイズで設計し直せば、1911は今よりコンパクトで、もっと使いやすい銃になるだろう。スプリングフィールドアーモリーのエンハンスドマイクロピストルEMPは、部品互換性を最大限保ちながらこれを実行した製品だ。
マイクロコンパクト1911
アメリカ国民にとってM1911シリーズは、米軍サイドアームとして一世紀以上の繋がりがある。幾度の紛争を乗り越え、ベレッタM9、SIG M17/M18と後継モデルに移り変わった今もなお、一部の米特殊部隊により使用され続けているからだ。
その存在は、世代を超えてアメリカ国民に深く焼付き親しみを持って迎え入れられている。それと共にストッピングパワーのある.45ACPは、ピストルカートリッジにおけるひとつの指標となってきた。
第2次世界大戦後に5インチバレルのフルサイズを、アルミフレームによる軽量化と4.25インチバレルへ小型化したコマンダーが登場する。この時1911プラットフォームの口径に初めて9mm×19が追加され、それから1911系の小型軽量と小口径化の歴史がゆっくりと始まった。
デトニクス社が1975年にコンバットマスターを発売し、1911系サブコンパクトの製品化に始めて成功した。バレル長3.5インチ、全長190mm、全高89mm、.45ACPでマガジン装弾数6発と極限まで小型化された1911は当時相当なインパクトを与えた。ただ工作精度を含め、作動面での問題もあり、同社は順調に発展していくことはできなかった。やがて限界にぶち当たり倒産、復活を繰り返すも結局消えていった。
Photos courtesy of Spring field Armory
Photos courtesy of Spring field Armory
1985年、本家のコルトが開発した3.5インチの小型1911がオフィサーズACP(Officer’s ACP)だ。翌年にはアルミ合金フレーム版を発売し軽量化をさらに進めた。小型軽量化のトレードオフとしてリコイルが大きくなり、そして各種弾頭形状に対する作動の信頼性維持の難しさがあり、問題がないわけではない。
しかしコルトは普及版の1991シリーズにもこのサイズを継続して採用し、市場からは一定の人気を得ることができた。1998年にはさらにバレルを短くした3インチバレルのディフェンダーが出現し、現在も9mm口径を含めて戦列に加えているほどのロングラン製品となっている。
余談だが、コルトはオフィサーズACPに先立って1911スタイルの.380ガバメント(.380ACP口径)を1983年にリリースしている。1911のデザインをベースとしているがほぼ新規設計の別系列だ。このシリーズは、ムスタング、ポニー、ムスタングライトなどが登場するなど、ここでも1911のスタイルには安定した人気がある事を証明している。
その後も3/3.5インチバレルのサブコンパクト1911にKimber(キンバー)、Para Ordnance(パラオードナンス)、Rock Island(ロックアイアランド)、Citadel(シタデル)なども参入し、一大トレンドとなって競争が激化していく。SIGからは中間の3.3インチ、STIからは3.2インチバレルなども紹介された。
Photos courtesy of Spring field Armory
この小型1911市場に積極に取り組んだのがアメリカ国内ブランドを代表し80年代半ばから1911クローン製品を展開してきたイリノイ州のSpringfield Armory(スプリングフィールドアーモリー:SFA)であった。
ポケットサイズの1911を望む声に応えるべく1995年に3.5インチのウルトラコンパクト、そして2002年に3インチのマイクロコンパクトを製品化した。
他社も同様だがストッピングパワーのある.45ACPを小型サイズから撃つ際の強烈なリコイルの問題や、小型化によって低下する作動の信頼性に対し、好き嫌いも分かれた。それを許容できるか否かでユーザーが絞られてしまう。
そして当然小型化されれば装弾数は減り、その分1発のノックダウンパワーが重視されるため、.45ACPは有利だが、しかし大口径であるほど弾数が減るという弱点もついて回る。9mmや.40S&Wの小口径対人用カートリッジの改良が進む中、小型サイズは重視したいが、そこまで無理して.45ACPにこだわる必要はないと考える人たちも徐々に増えていった。
Photo&Text:Gun Professionals LA支局
Special thanks:Mike Humphries (Springfield Armory media relations manager)
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年12月号に掲載されたものです
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