2024/10/16
ワルサーP99をベースに発展したカニックアームズのハンドガンを撃つ「CANiK TP9」【後編】
CANiK TP9
Elite Combat Executive
トルコのガンメーカーであるカニックアームズがTP9をアメリカ市場に送り出したのが2012年だ。あれから10年が経過、今やカニックのブランドイメージは大きく向上している。TP9のハイエンドモデル、エリートコンバット エクゼクティブには、TP9がワルサーP99のコピーだったとことを示す面影はもうない。
実射インプレッション
いよいよ実射だ。頭の隅にP99のコピーから始まったという事実が残っているので、実際にTP9を手にすると違和感がある。グリップがやたら大きく角張ってって感じる。P99の吸い付くようなエルゴノミックデザインのグリップに対して、TP9は長方形のフラットなグリップなのだ。そのためグリップが大きく感じてしまう。
トリガーを空撃ちしてみると、そのフィーリングは素晴らしい。見事なトリガージョブだ。これはかつてのP99を大幅に凌駕している。リアサイトにホワイトドットなどはないもののフロントサイトのファイバーが光を受けて赤く輝き、エイミングしやすい(暗闇では見えないが)。
スライドを引く。セレーションはスライドの前方にもあること、スライドの両サイドは垂直に近く、厚みがあるので扱いやすい。
しかし、射撃するとマズルライズが大きく感じる。グリップが手に合わせにくいのとチェッカリングが余り有効に働いていないため、暴れるとまでは言わないが手の中で動く感じがある。せっかくトリガーフィーリングが素晴らしいのにちょっと残念。少し撃ちこんでいけば手も馴染んでくるかとも思ったが、日本人の平均的な手の大きさではちょっと厳しいかも。
グリップ下部のファンネルのおかげでかなり助かっているということを感じたモノの、やはりグリップ自体の形状が合わない。これはあくまでも筆者の感覚で、好みもあるだろう。このグリップが握りやすいと感じる人もいるはずだ。
トリガージョブが良いので連射を試みるが、どうしてもマズルライズが大きいので集弾性に欠けてしまう。リコイルも大きく感じる。そんな不満というか、スッキリしないところで、CZ P-10 Cを射撃してみることにした。P-10 Cはチェコ共和国軍の兵士100人以上の手をスキャンし、その平均的な手に合う形状をグリップのデザインに活かしている。
実際にプロトタイプの射撃テストをさせていただいたとき、とにかくそのグリップ感についてしつこく意見を求められたのを思い出す。そして市販モデルは素晴らしいグリップ感に仕上がっていた。またトリガーフィーリングもストライカーファイアーでありながらキレのあるもので、非常に完成度の高いピストルなのだ。カスタムメイドではなく、あくまでファクトリーメイドでもここまでできている。
CZ P-10 CはカニックTP9と同様、ポリマーフレーム、ストライカーファイアピストルと言うことで比較用に選択したのだが、射撃した結果は全く別物だ。TP9の後に撃ったから更にそう感じたのかも知れないが、P-10 Cはマズルジャンプがほとんど感じず、リコイルは真っ直ぐ後ろに来る。そのリコイルも、しっかりとグリップしてコントロール下に置かれている状態では、かなり抑えられていると感じる。
TP9はスチールマガジンを採用しているので、グリップはもっと小さく、薄くできるはずなのに、なぜか大柄になってしまっている。グリップ位置とバレルの位置に高低差があるのでマズルジャンプが大きくなってしまうのだ。
進化し続けるトルコ製のピストル。スタイルは欧米の有名な製品と比べても、決して引けを取らない。その上にSAIカスタムとなってさらに魅力的になっている。そして何より、トルコ製ということで価格も抑えられている。
TP9は短い期間で大きく進化し、エリート コンバット エクゼクティブは現時点での最高峰だ。しかし、まだまだ改良の余地があると感じる。もしカニックアームズがこれまで培った経験を活かし、独自の次世代ピストルを作ってきたとしたら、素晴らしいものが作れるだろう。それは欧米の一流メーカーの製品を追い越すかもしれない。このTP9 エリート コンバット エクゼクティブを手にしていると、そんな可能性を感じるのだ。
Photo&Text:Tomonari SAKURAI
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年5月号に掲載されたものです
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